明治大学(上)留学生の特別採用枠がなくなってしまった

外国人留学生の就職支援

topmeiji01.png


政府の「留学生30万人計画」などを背景に、海外から日本の大学などへ留学する外国人が増加しており、卒業後は日本で働きたいと希望する留学生も多数います。そんな外国人留学生は、どのように就職活動に取り組んでいるのでしょうか。識者へのインタビューや大学の就職支援の実例を紹介します。


今回は、明治大学の就職支援の取り組みについてです。お話しいただいたのは、就職キャリア支援部の高賢さんと国際連携部の菅野隆行さんです。



「明治大学(下)「生活基盤は日本、母国は出張」の考えが増加」はこちら

留学生の就職状況は上昇傾向

――外国人留学生の在籍状況は?


大学全体の留学生数は、2017年3月時点で約1900人。これは学位取得を目的とする正規生のほか交換留学生、研究生等の非正規生や1カ月未満の受入の短期プログラム参加学生も含んでいます。正規生だけでは約1200人で、そのうち学部生が約800人、大学院生が約400人です。


割合で見ると、英語で行う講義のみで学位を取得できるコースがある国際日本学部は留学生の在籍数が比較的多く、学部全体で15%程度いますが、大学院も含めた大学全体では3~5%程度です。


出身は中国や韓国、マレーシア、台湾、香港、タイ、ベトナムなどアジア地域が圧倒的に多いです。


――留学生のうち、日本で就職する学生はどのくらいいますか?


希望者ベースでいうと年によって差はありますが、約5~7割います。ただし、実際に就職した割合でみると5割強。最近は学生にとって有利な「売り手市場」ということもあり、就職率が高くなっている傾向があります。


志望業界は日本人学生と同じくさまざまで、金融やメーカー、商社など幅広いです。共通項を挙げるとしたら、「大手企業」「グローバル企業」といったところの志望者が多いです。


就活でネックになるのは日本語能力

――留学生向けにどのような就活支援を行っていますか?


日本語講座や筆記試験対策、エントリーシート(ES)対策、留学生の内定者やOB・OGによる就活体験報告会など年に数回、留学生を対象にした支援ガイダンスを行っています。


留学生が就活においてネックになるのは日本語能力。そのため11~12月頃に「ビジネス日本語講座」を実施しています。数回の講座で能力がそれほど大きく伸びるわけではありませんが、動機付けにはなると考えています。また、就活でスコアを求められることの多い「BJTビジネス日本語能力テスト」を全額大学負担で団体受験しています。


――「ビジネス日本語講座」はどのようなプログラムですか?


週に1回2時間、連続5回の講座です。日本で就職するために必要なビジネス日本語を学びます。履歴書の書き方や自己PRの伝え方、模擬面接など採用選考を突破するためのノウハウを徹底的に学んで、身に付けられる講座です。


日本語レベルでいうと、明治大学に入学してくる多くの留学生(正規生)は、日本語能力試験で最も難しい「N1」を持っていると推測できます。しかし、日本の就活は履歴書やESの書き方、面接での受け答えなどにおいて独特な部分があるので、大学としては「N1」レベルの学生であっても支援が必要だと考えています。


meiji02.png お話をうかがった就職キャリア支援部の高賢さん(右)と国際連携部の菅野隆行さん

留学生の就活意欲や働く意識に「二極化」

――企業の留学生採用について、どのように見ていますか?


留学生採用に対する企業の感覚が、年々変わってきているように感じます。2011~12年頃は留学生の特別採用枠を設けていたり、留学生向けに特別な選考方法を行ったりという企業もありました。


しかし現在は、日本の大学で学ぶ留学生に関しては、日本人学生と変わらない選考フローで進んでいます。そのような背景もあり、大学としても留学生に特化したガイダンスは、それほど多く必要ではなくなってきているのではないかと思っています。


また、企業は留学生に対して、日本人の価値観や生活習慣、文化を理解して、働いてほしいという印象を受けます。そのため学部生のように、日本で数年間の生活経験がある学生を好んでいるような気がします。


――就活をする留学生に見られる特徴はありますか?


就活意識の高い学生とそうでない学生の「二極化」が見られます。意識が高い学生は大学側が多くの支援をしなくても、しっかり内定を取ってきます。


一方で、就職へ意識があまり向いていない留学生は就活の開始時期が遅かったり、圧倒的に大手・有名企業にしか目がいかなかったりします。そんな学生は日本の企業に就職したいというぼんやりとしたイメージは持っているようですが、実際にどのような活動をすればいいのか、どのように動き出せばいいのかなどあまり実感がわいていないように見受けられます。


また、これは日本人学生にも言えることですが、自分の身の周りにあり、企業名を知っているB to C企業に目がいきがちです。大学としてはB to B企業や中堅・中小企業にも目を向けるようにアドバイスをしていますが、なかなか難しいです。それでも大手グループ企業の中堅・中小企業には多少目を向けてくれますが、全く知らない企業には、ほとんど反応しません。


他には、さすがに以前よりは減りましたが、いまだに企業の採用について「留学生の特別採用枠がある」と思っている学生もいます。筆記試験の「SPI」の問題を目にして、「これは日本人向けの問題で、留学生向けの問題は別にある」と考えている学生もいますね。


――出身国・地域によって留学生の内定率に差などはあるのでしょうか?


これは感覚に過ぎませんが、韓国人学生は内定実績が高いような気がします。考えられる理由の1つは、韓国の就職状況が厳しいため「母国に戻っても就職は難しいかもしれない」といった危機感があるためではないでしょうか。また、兵役を経ているので年齢は高くなりますが、タテ社会に慣れていたり、社会経験があったりするため企業の受けもいいようです。

※記事は『日経HR Labo』(日経HR)より転載しました。