一橋大学(上)大学院生の多くは「N1」を取得

外国人留学生の就職支援

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政府の「留学生30万人計画」などを背景に、海外から日本の大学などへ留学する外国人が増加しており、卒業後は日本で働きたいと希望する留学生も多数います。そんな外国人留学生は、どのように就職活動に取り組んでいるのでしょうか。識者へのインタビューや大学の就職支援の実例を紹介します。


今回は、一橋大学の就職支援の取り組みについて2回に分けて紹介します。お話しいただいたのは、キャリア支援室特任講師の三浦美樹さんです。



「一橋大学(下)留学生には理解しにくい「ポテンシャル採用」」はこちら

留学生は増加傾向、9年間で1.4倍に

――海外からの外国人留学生は何人くらいいますか?


2016年度のデータとして、学部生約4400人のうち留学生は約200人で、5%弱を占めます。大学院の修士課程と博士後期課程、専門職学位課程は約1800人のうち、留学生は約430人で約24%です(※留学生数はいずれも半年から1年程度の交換留学生などを除いた数値)。このほか外国人研究生としての留学生もいます


留学生の出身国・地域で見るとアジア圏が圧倒的に多く、全体の約85%はアジア出身者です。特に中国は全体の約40%を占めて最も多く、次いで、韓国や台湾が続きます。最近はベトナムから来日する学生も増えています。


――留学生数は全体的に増加していますか?


増えています。これは交換留学生なども含めた大学全体の留学生数ですが、2007年は537人だったのに対し、16年は734人。9年間で約1.4倍に増加しました。特に修士課程の受け入れ数が増えています。


――留学生のうち卒業後に日本での就職を希望する割合は?


修士課程の院生に限ると、約70%は日本での就職希望者です。 志望業界はコンサルタントや金融、商社が多いですね。修士課程の院生の約半数が商学研究科と経済学研究科に在籍しており、専攻と就職先とを直接結びつけて考えている留学生が多数を占めるためです。


TOPhitotsu02.png お話をうかがった三浦美樹さん

学内イベントで留学生の日本語会話力のレベルアップを促す

――増えている留学生に対して、学内の就職支援について教えてください。


年間4つほどの留学生限定イベントとキャリア相談が大きな柱です。


例えば、4月は大学院に入学したばかりの留学生を対象に就職活動のオリエンテーションを開催します。インターンシップに参加するのであればすぐに動きださなくてはならないことや就職活動の全体的なスケジュール、就職活動に向けて日本語力を鍛える必要性などを説明します。


日本語力については、特に会話力をレベルアップさせなければなりません。本学大学院に進学してくる学生の多くは、日本語能力試験「N1」を取得しています。読み・書きは十分な力を持っていますが、会話力はもっと鍛える必要があります。面接では採用担当者の質問の意図をくみ取って答えなくてはならないため、就職活動の本番までに会話力を向上させることを強調しています。


また、このオリエンテーションは「就職に関して悩んだらキャリア支援室に行こう」と思ってもらう意図もあります。イベントの中で留学生の出席率が最も高いのは、この4月のオリエンテーション。入学直後なので、「必ず参加するもの」と考えるのでしょう。ここでキャリア支援室のアドバイザーが顔を見せて説明することで、学生にとっては親近感がわき、気軽に相談しやすくなることを狙っています。


次いで10月の就職ガイダンスでは、留学生の内定者が就職活動の体験談を紹介します。2016年は中国出身の院生2人と韓国出身の学部生1人が登壇してくれました。


11月に入ると、企業の採用担当者との交流会を開催します。毎年10社以上が参加しており、昨年は16社が来てくれました。1つのテーブルに2社の担当者が座り、留学生をランダムに振り分けて、時間を区切って担当者とざっくばらんに話すというプログラムです。企業からの一方的な説明ではなく、近い距離でお菓子などを食べながらフランクな雰囲気の中で質疑応答できることが特徴です。企業によっては外国籍の社員の方が話をしてくれます。留学生からすると、やはり「留学生の先輩」に当たる方の話は興味深いようです。


ちなみに、学生は自分の志望以外の業界・企業と当たることもあります。大学としては、そこで新たな発見をしてほしいという狙いがあります。ある学生は「話を聞いた方はB to B(企業を顧客とするビジネスを行う)企業だったこともあり、社名を知らなかった。でも、モンゴル出身の担当者の方がイキイキと働いていることが分かった」と、この会社への応募を決めました。


さらに2月には、採用選考が開始される直前であることから、エントリーシート(ES)や面接、グループディスカッション(GD)の対策講座を留学生に特化した内容で実施しています。


これらのほかに日本人学生と一緒に参加するイベントや、キャリア支援室のアドバイザーが1対1で対応するキャリア相談も随時行っています。

※記事は『日経HR Labo』(日経HR)より転載しました。