キャリア教育の現場から

学生の社会的・職業的自立に向けて必要となる能力等を育成するキャリア教育について、教育現場からお届けします。

九大の就職担当が企業訪問を続ける理由
大学と企業との「絆」が卒業生の「働く幸せ」につながる
九州大学キャリア・奨学支援課進路・就職コーディネーター 水野雅美

  • (2019/03/14)

経団連が「採用選考に関する指針」から手を引き、様々な情報が交錯する中で、2020卒の就職活動がスタートしました。明らかに昨シーズンよりも「早期化・多様化」が加速し、20卒の採用活動、就職活動はどうなるのでしょうか? これまで大学の就職支援の現場での経験を振り返り、これからの就職活動、採用活動、入社後の定着を見据え、人材の“橋渡し”として大学職員は何ができるのかを考えてみたいと思います。

年間150社の企業を訪問


水野雅美さん

過去最高の就職内定率が記録される今、未来永劫「売り手市場」が続くのでしょうか。今回、根拠も見通しもありませんが、いつか新卒採用の厳しい時代が到来することを想定し、進路・就職コーディネーターとして何ができるのかをまとめました。

九州大学東京オフィスで働き始めてから約3年、「大学と企業との信頼関係の構築」に注目し、企業との情報交換を重ね、企業の採用担当と大学のチャンネル作りに取り組んで来ました。2018年1年間(1月〜12月)で訪問した企業数は156社、3年間での延べ訪問社数は407社になります。

企業の採用担当者や他大学の就職支援担当者から「企業訪問? 情報交換? 九大ならそんなことをしなくても内定は獲れるでしょう」と言われたこともありますが、私は企業訪問を続けています。その目的は2つあります。



企業との情報交換が必要な2つの理由

1つは、その企業が求める人材、入社後のキャリア形成、大学との採用・内定実績などをリサーチすることによって、ミスマッチや早期離職を防ぐというメリットがあると思っているからです。また学生1人あたりが受ける企業数が減少してきた今、学生が知らなかった業界や優良企業にも目を向けてもらうヒントになることも多く、満足度の高い内定先を獲得することにもつながります。

もう1つは、再び到来すると思われる「人材採用難、就職難」の時でも、学生の良質な就職活動の備えだと考えています。多くの大学が就職支援で力を借りている就職情報会社のプロモーションや企画事業には限界があり、就職氷河期が訪れた時には企業と大学(学部や研究室など)との「ネットワーク」や「定着性(親和性)」「絆」が重要になると確信しています。18歳人口の激減によって若者の労働人口激減は避けて通れません。多くの企業の採用担当から「これからは新卒採用だけを“点”で見る時代から、入社後の人材育成、定着までを“面”で見ていく時代」という意見を聞きます。

企業との情報交換を意識してアプローチすることによって、大学の喫緊の課題となっている「就職支援プログラム」や「キャリア教育」の仕掛けづくりにもつながると感じています。その仕掛けのベースづくりとして、取り組んでいるのが次の3つの役割と業務です。
東京・首都圏で就職活動をする学生のサポート
企業訪問等による首都圏企業とのネットワークづくりと他大学との情報共有
就職情報社等が企画するイベントでの情報交換
近年の雇用環境の変化により、東京・首都圏で就職活動をする学生は少しずつ増えてきていますが、地方の学生が、東京・首都圏の企業の「生の情報」を直接得る機会は限られ、就職活動の事前対策として、企業情報は欠かせません。また、他大学の就労支援やキャリア形成の取り組みやアイデアも大切な情報となっています。

そして、学生たちには、就職情報サイトなどが発信しているネットの情報よりも、自分が実際に聞いた、得た情報を受け止め、考えながら「自分なりの就職活動」を組み立て、「自分に一番フィットした1社を射止める」ことを勧めています。


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