「第4回 トビタテ留学成果報告会」レポート トビタッた!学生たちは何を学んだのか

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文部科学省の官民協働海外留学創出プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」は2019年2月3日、「第4回トビタテ留学成果報告会」を開催しました。文科省が民間企業と一緒に推進する留学生促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」は、留学のために必要となる奨学金を企業・団体が負担するもので、これまでに約6000人が留学しています。


この日は2018年に留学した生徒・学生の中から、予選大会で選ばれた高校生10人と大学生11人が登壇し、自身の留学体験を7分間でプレゼンテーションしました。登壇者の中から、留学中に日本ではできないような経験をし、大きく成長した生徒・学生として、高校生部門では最優秀賞に菅井雄斗さん、優秀賞に黒沼玲亜さん、松尾一輝さん、大学生部門では最優秀賞に安永麻紀さん、優秀賞に前田沙優里さん、渡邉智基さんが選ばれました。ここでは大学生11人の発表を紹介します。


受賞者3人の体験とは

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最優秀賞に輝いた中村学園大学の安永麻紀さんは、米国留学中に現地の食品企業と共同で「一汁三菜bento」の企画・開発・販売まで成し遂げました。留学よりも栄養士の国家試験を優先させたい先生の意向や販売直前に食品会社と連絡が取れなくなるなど、多くの困難を乗り越えました。日本での食品メーカーへの就職も決まり、「2025年までにはビジネスを立ち上げたい」と夢を語ってくれました。


優秀賞1人目は、「動物が大好き!」と笑顔で語った酪農学園大学の前田沙優里さん。「動物を通して人間社会に貢献したい」という思いを胸にカナダとガーナに留学しました。カナダでは世界最先端の繁殖技術を学び、衛生管理の悪いガーナでは牧場経営者を前に保険教育の重要性を説きました。この経験を生かして産業動物医師を目指しています。


もうひとりの優秀賞は名古屋大学の渡辺智基さん。冒頭で「成果はありませんでした。留学は失敗しました」と謝り、会場を笑わせました。海底熱水鉱床の開発技術を学ぶためにオーストラリアに渡ったが、海底開発技術は日本がリードしていることを現地で知ったとか。留学自体は失敗したものの、トビタテ!留学の素晴らしさを広めるために「自分がアンバサダーになる」と、恩返しを誓っていました。


ネパール、スウェーデン、メキシコ、米国へ

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受賞した3人以外にも登壇者全員が留学経験を経て成長しています。3日前までネパールにいたという関西学院大学の稲吉康汰さんは、現地の小学校で日本語や日本文化を教えてきました。小学校での教育とは別に、稲吉さんの記憶に残っているのはネパールの街中で目にした光景です。アジア最貧国であるネパールの路上、物乞いをする人々が並ぶ中に、左腕がない小学生や生まれたばかりの赤ん坊が混じっていました。小学生にお金を渡した稲吉さんは、自らが行動することの大切さを学んだといいます。


早稲田大学の高橋かのんさんは主体性を引き出す教育を学ぶためにスウェーデンに留学しました。幼稚園から小中学校、高校までを訪問し、現地の学習方法などを体験。その中で「主体的に動くことの面白さ」「教科書からの情報をインプットするだけでなく自分からアウトプットする学び方」「自分の頭でしっかり考えて一人で生きていける人間になってほしいと考える教育者」という日本の教育との違いを見つけました。


「自分に向き合う時間ができた」と振り返るのは筑波大学大学院の冨沢元輝さんです。新興国の地域スペシャリストになるためにメキシコ大学院大学に留学し、毎週数百ページに及ぶ文献を読む毎日の中、SNSでの同級生の発言をきっかけに考えが変わりました。「人々が平和な日常を守るために生きたい」と、現在は外交官を目指しています。


「痒みで苦しむ人をゼロにしたい」と話したのは東北大学の林明澄さん。自身もアトピー性皮膚炎の経験がある林さんは、アトピー研究の最先端である米国のUSCDで研究、良い常在細菌を患者の皮膚に移植する治療法を発見しました。帰国後は高校生に医療を伝えるイベントを開催するなど、患者さんに寄り添う医師を目指して活動中です。


LGBTQ、ラグビー、デザイン、貧困......

茨城大学の堀佳月さんはカナダ・トロントにあるヨーク大学に留学し、多様性を受け入れる教育について研究しました。現地では幼稚園からLGBTQの子供への支援がある現場を伝え、今後は教員の留学支援や日本版多様性教育の研究に取り組みたいと語りました。


関西大学の松浦大輔さんはニュージーランドでラグビー留学を経験、ウエリントンラグビークラブ選手権大会で2冠を達成しました。世界最強のラグビー大国で、「リーダーシップ(個性を表現する)」「コミュニケーション(他人の個性をすべて受け入れる)」「アダプタビリティ(適応し続ける)」ことを学びました。


もうひとりの優秀賞は名古屋大学の渡辺智基さん。冒頭で「成果はありませんでした。留学は失敗しました」と謝り、会場を笑わせました。海底熱水鉱床の開発技術を学ぶためにオーストラリアに渡ったが、海底開発技術は日本がリードしていることを現地で知ったとか。留学自体は失敗したものの、トビタテ!留学の素晴らしさを広めるために「自分がアンバサダーになる」と、恩返しを誓っていました。


「リカレント教育のリーダー」を目指すのは丸山亜由美さん。北里大学卒業後に外資系製薬会社に入社後、トップセールスを機に退社し、武蔵野美術大学に入学しました。ドイツのケルン国際デザイン大学に留学し、ヘルスケアにかかわるデザインを学びました。そして、今の夢は「3回目の大学進学・留学」です


ヨルダンとアラブ首長国連邦に留学したのは宇都宮大学の矢野いずみさん。ヨルダンではシリア難民の家で生活しながら大学に通い、ドバイでは「女性、ムスリム、非アラブを武器に生活した」と話します。


報告会では、高校生と大学生が留学を通して何を学び、何に気づき、どう成長したのかを語ってくれました。学校では教えてくれない、経験できないことを自ら求めて飛び立った若者たちは、新たに見つけた夢や目標に向かってトビタチました。


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