キャリア教育の現場から

学生の社会的・職業的自立に向けて必要となる能力等を育成するキャリア教育について、教育現場からお届けします。

【大学と企業が情報交換(2)】地元就職率UPの矛盾 「キャリア意識が高まるほど東京へ」

  • (2019/07/18)

日本経済新聞社『U22』( https://style.nikkei.com/college )は6月14日、大学の就職支援・キャリア教育担当者と企業の採用担当者を対象に「大学と企業の情報交換会」(協力:サイシード)を開催しました。

イベントは株式会社サイシード叶 平川氏による「AI(チャットボット)を活用した就職相談の仕組み」をテーマにした講演のほか、大学ブースを企業が回って情報交換、大学と企業が5つの分科会に分かれ、各テーマについて議論が交わされました。 今回は分科会の各テーマの概要を5回に分けて紹介する、2回目です。

「キャリア意識が高まるほど東京へ」

テーマ2「地方への企業誘致と産学連携」では大学側から現状の課題についての説明がありました。参加大学の多くが近隣の大都市・首都圏への人材流出が激しく、県内就職する学生が減っていることは共通しています。その一方で、地方大学は文部科学省の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に取り組んでおり、県内就職率の向上を課せられているのです。

各大学とも県内企業へのインターンシップマッチングセミナーの開催や誘導、食堂でのデジタルサイネージによる県内企業のPRなどの手は打っているものの、学生の目は首都圏の大企業に向かってしまうそうです。さらに、「地元企業とのPBLでインターンシップを経験すると、キャリア意識が高まり、もっと成長したいという理由で最終的には東京に出て行ってしまう」とも言います。

低学年から県内企業をPR

そうした中、学生の目を地元企業に振り向かせる成功例も出ています。3年次から県内企業のインターンシップを紹介するには遅すぎると判断し、「1、2年の低学年から県内企業のPRを始めた結果、インターン希望者が40名から80名に回復した」という例がありました。ただ、強引に地元企業への就職を促すだけでは学生の気持ちが変わらないことは明らかで、「地方で働いてもきちんとした(一定レベル以上の)生活ができるんだという状況にしないと、学生は地元に残ってくれない」「官民一体でCOC+事業の推進、地方創生、地元企業の魅力アップを連携して進めなければならない」という指摘も出ました。

一方、企業側の「採用難」については、異なる課題が見えてきました。地方に本社のある企業は東京では採用できても、地元ではUターン就職希望者の減少や、地元大学からの就職希望者の減少によって本社勤務の採用人数の確保に苦労していると言います。反対に東京に拠点を置く企業は採用人数の7割以上が首都圏の大学出身者となり、「考え方や志向などに偏りが出てしまう懸念がある」と打ち明けました。

理系人材を求めて地方大学へ

理系人材の確保に苦労する企業は、事業所別採用を始めています。「事業所別採用の強みは配属地域が決まっていること。学生に1回でも足を運んでもらえれば『意外といいね』となる場合もある」と話しますが、人数確保には苦戦しているようです。他にも学生の負担を減らすために東京、大阪、九州で最終面接まで実施したり、研究室への教授訪問に力を入れたりと、首都圏以外での人材確保に知恵を絞っています。

地元企業への就職率アップを求められる地方大学と、首都圏企業に学生を奪われる地元企業、地方の学生を採用したい首都圏の企業など、それぞれの置かれている状況が明らかになった分科会でした。

COC+とは、2015年度から始まった文科省の補助金事業で、東京への一極集中と若者の地方からの流出を背景に、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」として始まる。事業目的は「地方の大学群と、地域の自治体・企業やNPO、民間団体等が協働し、地域産業を自ら生み出す人材など地域を担う人材育成を推進」。成果指標として「連携自治体にある企業等への就職率・雇用創出数」「取組に対する連携自治体及び中小企業等の評価」。今年度で終了予定。


(採用と大学教育の未来に関する産学協議会「中間とりまとめと共同提言−概要−」)

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