キャリア教育の現場から

学生の社会的・職業的自立に向けて必要となる能力等を育成するキャリア教育について、教育現場からお届けします。

法政大学 ゼミ形式で学生の「就業力」を育成

大学のキャリア教育の取り組みをリポートする「キャリア教育の現場から」。今回は、2011年度後期の講座で「就業力養成ゼミ」を開講する法政大学です。ゼミは学年や学部・学科に関係なく誰でも参加できるものの、募集人数を36人に限定し、同大学が考える「就業力」をゼミ形式で育成していきます。どのような内容で行われるのか、担当する有田五郎特任講師に話を聞きました。

講座の中心はグループワーク

法政大では、平成22年度文部科学省「大学生の就業力育成支援事業(就業力GP)」に、「就業力を育てる3ステップシステム」の取り組みが採択されました。大学で独自に3つの就業力「文章作成力」「情報収集・分析・発信力」「状況判断・行動力」を定義(図表1参照)。その力を伸ばすために、高校生も対象にした高大連携プログラムの「STEP1気づき」、正課・正課外の授業・各種講座で学生を育成する「STEP2成長」、就職活動をする3、4年生や卒業生も対象にした「STEP3発展」の3つのステップで、キャリア教育の充実を図ります。高校生から卒業生まで幅広い層を対象にしているのが特徴の1つです。「就業力養成ゼミ」はSTEP2の一環で開講する講座です。

図表1 法政大が考える「3つの就業力」
文書作成力(要点メモ力、記録作成力、文意把握力、文章構成力、文章力) 情報収集・分析・発信力(情報源把握力、仮説構築力、信頼関係構築力、資料批判力、取捨選択力、対象者確定力、情報媒体選択力、情報伝達力) 状況判断・行動力(状況判断力、状況対応力、自己変革力、環境変革力、説得力、共同行動力)

※法政大のHPより作成

ゼミは9月22日から1月19日までの全15回・半期で、募集人数を36人の先着順とし、正課外講座(単位認定なし)です。有田講師は「『先着順』『非単位』に加え、1時限目ということもあり、本当にやる気のある学生が集まるのではないでしょうか」と期待を寄せています。参加募集を開始したのは7月下旬。「就業力という言葉のためでしょうか。3年生の受講希望者が多いようです」(有田講師)。

ゼミでは毎回違った課題を学生に与え、グループワーク形式で就業力を養成します。前述の3つの就業力を、「文意把握力」「情報源把握力」「仮説構築力」「状況対応力」など19の力に細分化し、「ゼミでは1回の授業で1、2の力を養成することを目指して、授業計画を組みました(図表2参照)」と有田講師は話します。

図表2 就業力養成ゼミ 授業計画
第1回(9/22) 全体説明・アセスメント
第2回(9/29) 文意把握力
第3回(10/6) 文章構成力・文章力
第4回(10/13) 文章作成力・情報把握力
第5回(10/20) 仮説・信頼関係構築力
第6回(10/27) 資料批判力・取捨選択力
第7回(11/10) 対象者確定・情報伝達力
第8回(11/17) 媒体選択力・分析発信力
第9回(11/24) 状況判断力・状況対応力
第10回(12/1) 自己変革力・環境変革力
第11回(12/8) 説得力・共同行動力
第12回(12/15)記録作成力・発表準備
第13回(12/22)プレゼン大会実施・まとめ
第14回(1/12) アセスメント実施、感想文
第15回(1/19) アセスメント分析・まとめ

グループワーク中心の講座である理由は、「他人の意見を聞いて、自分の意見を考え、伝えるといった姿勢が求められ、就業力を鍛える有効な手段」と考えたため。参加できる人数を絞った理由の1つも、数人でグループワークをしやすいようにという狙いがあったそうです。有田講師は現職に就く前、36年間総合商社で営業と人事部門に携わり、その後5年間は法政大を含めた2大学でキャリアアドバイザーとして勤務していました。特に、企業で人事を担当していたときに、「今の学生や新入社員は、大勢でコミュニケーションを取ったり、情報を考えたりする姿勢が足りないのではないかと感じていました」と振り返ります。

グループワークを進める際には、今の学生はテーマを与えて「さあ、グループワークを始めて!」と言ってもなかなか進まないため、ある程度、教員のハンドリングが必要です。ゼミではワークシートに学生の意見を書かせることから始め、自分の書いた内容をグループ内で発表させ、ほかの学生の意見を注意深く聞き、意見を述べさせるような展開を考えているそうです。また、その場の雰囲気や学生のグループワークのレベルなどによって、教員の問い掛け方は変える必要があり、「クラスを活発化するには、私にファシリテーション力が求められます。事前に"マニュアル"をつくることができないため、1回1回の講座が"勝負"になるでしょう」と意気込みを語ります。