キャリア教育の現場から

学生の社会的・職業的自立に向けて必要となる能力等を育成するキャリア教育について、教育現場からお届けします。

上智大学 「産学連携PBLで学生の主体性を引き出す」

上智大学は、キャリア教育の一つとして産学連携のPBL(課題解決型学習)授業「キャリアディベロップメント―産学協同 就業力養成講座−」を開講しています。今回は授業の様子や、2013年度から開始した高学年向け教養教育プログラム「グローバル・コンピテンシー・プログラム(GCP)」の取り組みなどについて紹介します。

企業の担当者の前で最終プレゼンを行う学生たち

半期で2社の課題に取り組む

7月中旬、「キャリアディベロップメント」の授業をのぞくと、企業の担当者の前でプレゼンテーションを行った学生グループが、厳しい指摘を受けていました。

「販売拠点をインドに絞ったことは評価できる。ただ、インドの購入者層の研究が足りない。どういう暮らしをしているか調べましたか?」「学生アンケートを取り、消費者の声を集めた点はいい。しかし、もっと突っ込んだ分析をしないと、ビジネスでは使えません」――。

キャリアディベロップメントは、1年生(原則)を対象にした半期15回の授業。時期をずらして2社から与えられた課題に対して、学生は6、7人でチームを組み、グループワークや中間・最終発表に取り組みます。

2014年度春学期は、資生堂と東芝が課題を出題しました。訪問した日は、「東芝のPC事業をどう再生すればいいか」といった課題に対する最終プレゼンテーションの最中でした。


正解がないものに対して“正解”を見つける

荒木勉教授

授業を担当する経済学部の荒木勉教授は、「授業の最大の狙いは、学生の主体性を引き出すこと」と解説します。チーム全員がコミュニケーションを十分とれるように、1チームは原則7人とし、プレゼンは必ず全員に発表させます。また全学共通科目の一つであるため、さまざまな学部・学科の学生が履修しており、そんな点を生かしてチームは異なる所属の学生で編成されることが多いです。

荒木教授は、産学共同で学生の育成を議論する組織「一般社団法人Future Skills Project 研究会(FSP研究会)」(理事長/安西祐一郎日本学術振興会理事長)の理事も務めており、キャリアディベロップメントの授業は研究の実践の場でもあります。

授業は2011年度から開始し、今年度で4年目。これまでオラクルやサントリーなどに協力を得ました。荒木教授は「学生は企業から怒られるとシュンと落ち込む。しかし、そこで『なにくそ』と思って、取り組むような強い気持ちを持たないとダメ。課題解決を通じて精神的な強さと、ビジネスでは正解がないものに対しても“正解”を見つける必要があるということを理解してほしい」と話します。

授業は、1、2回目は話し合いの仕方、情報の集め方、統計処理の仕方などスキルの解説に時間を割き、企業の課題に取り組み始めるのは3回目からです。1社の課題を5回の授業で最終発表(プレゼン)まで行います。

また、毎回の授業において目標を立てて、自己反省・評価をさせます。冷静に自分を見る目を鍛えるためです。荒木教授は、「主体性は教えられて身につくものではなく、誰もが持っている資質。引き出すことに学年や年齢は関係ありませんが、1年生のうちに主体性が出てくれば、学生は大学時代に大きく成長します。授業の性質上、50人までしか受け入れられませんが、できるだけ多くの学生を鍛えていきたい」と語ってくれました。

授業を履修した学生の感想は?

◎宗像健人さん(経済学部 経営学科 1年生)

企業からテーマを与えられて取り組む授業なので、社会人の方が納得するように毎回ちゃんとやらないとダメだと考え、精神的に大変でした。最終プレゼンに向けて、グループのメンバーで1週間に3、4回は集まっていましたね。

プレゼンに対する企業の方の指摘の中で、「実際に自分で動いてみることが大事」ということに気づかされました。資生堂の最終発表の場に、前田新造会長(現相談役)がいらしたことに非常に驚き、印象に残っています。


西岡勇樹さん(外国語学部 ポルトガル語学科 1年生)

授業を履修したきっかけは、先輩から「将来の役に立つから」と勧められたためです。プレゼンでは自分たちでじっくり考えて、いい発表内容ができたと思っていても、実際に企業の方の前で発表すると、自分たちが気づかなかった視点などを指摘されました。

授業を受けてみて、人に考えを伝えるにはどういうことが求められているのか、少し分かった気がします。分かりやすく伝えるには、論理的に話さないとダメですね。これは今後の大学生活に役立ちそうです。