キャリア教育の現場から

学生の社会的・職業的自立に向けて必要となる能力等を育成するキャリア教育について、教育現場からお届けします。

東京工業大学
 「クラウドサービスを使ったアクティブラーニングで授業改善

多くの大学が教育改革の取り組みの1つとして、授業改善を行っています。今回は、東京工業大学が2014年度にクラウドサービスを使ってアクティブラーニング授業を実施し、学生の理解度や満足度などが上がった事例を紹介します。講義を担当した工学部電気電子工学科長の千葉明教授に話を伺いました。

講義開始直後の小テストで遅刻者なくす

――授業改善を実施した講義の概要を教えてください。


千葉明教授

2014年度前期の「電気機器学」(3年生対象)と後期の「制御工学」(2年生対象)の講義で、いずれも私が担当しています。東工大は全学的に授業改善を進めており、電気電子工学科ではこれら2つを含む6つの講義が改善候補になりました。

「電気機器学」は約80人が受講する準必修の科目。履修範囲が広いため学ぶ内容量が多く、難易度も高いことから、学生からは「単位危機学」とも呼ばれています。また、朝9時から開始する講義ということもあり、遅刻する学生も一定数いました。

一方、「制御工学」は必修科目で、105人の履修者がいました。昼食後の13時20分からの授業だったので遅刻者はいないのですが、寝てしまう学生がいるという悩みがありました。

――授業改善はどのように進めたのですか?

システム開発会社インフォテリアのクラウドサービス「Handbook」を活用しました。授業改善のキーワードとして学長プランには、「ICT機器の活用」「eラーニング」「アクティ ブラーニング」などが挙げられていましたが、当初は何をどうやったらいいのか、さっぱり分かりませんでした。


クイズの出題例

あるとき、「Handbook」のサービスを知り、企業の担当者に話を聞いたところ、クラウドサービスを使えば、大人数でもアクティブラーニングの授業ができるのではないかと思い、導入を決めました。

クラウドサービスを活用してまず取り組んだのは、授業の初めに各学生の端末で「クイズ」と、その類似問題の「小テスト」をすることです。学生はクイズを解いたあと、小テストに挑戦します。小テストの結果(解答、解答時刻、正解者・不正解者)は管理者画面に届くようになっており、これを授業の出欠の代わりにしました。授業開始直後に行うことで、遅刻者をなくすことも狙いでした。

ただ、講義2回目くらいまでは、学生の端末によっては問題の一部が表示されなかったり、図が見えなかったりなどのトラブルが続出しました。講義には私のほかに、助教の杉元先生、ティーチング・アシスタント(TA)の三好さん、秘書の時岡さんの4人体制で臨んでおり、インフォテリアの社員数人の方も加えて、皆で手分けをしてトラブルを1件ずつ解決していきました。学生と直接話す機会を持ったことで、教員側と学生との距離が近くなったこともあり、遅刻者も減っていきました。

宿題の解説は1番に解答した学生

――他にはどんなことに取り組んだのですか?

宿題もクラウドサービスを活用しました。講義終了後に学生に宿題を配信し、次回講義までに解答を返信してもらいます。宿題の解説は講義中に私が行っていたのですが、「これでは従来型の授業と同じで、アクティブラーニングになっていない」と感じて、学生に解説してもらうことを思いつきました。

前のほうの席に座っている優秀そうな学生2人を指名して、次回講義で宿題の解説をしてくれるように依頼しました。ところが当日、2人とも欠席。この方法では、前のほうに座っているやる気がある学生は指名されると考えて、後ろの席に座るようになってしまうと思い、1回で止めました。

次に考えたのは、宿題を1番に解答してきた学生に解説してもらう方法です。「Handbook」の管理者画面では、宿題の解答状況が把握できます。うまくいくか非常に不安だったのですが、最初に正解の解答を送ってきた学生に「あなたは1番に正解しました。ついては次回講義で解説してもらえないだろうか」と一生懸命にメールを書いて送りました。

すると学生はやる気を持って、事前にパワーポイントを用意するなどして解説してくれました。非常にうれしく、思わず学生と握手をしてしまいました。


学生は個人の端末を使って授業を受ける(左)。宿題の解説をする学生(右)

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