明治大学(下)「生活基盤は日本、母国は出張」の考えが増加

外国人留学生の就職支援

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政府の「留学生30万人計画」などを背景に、海外から日本の大学などへ留学する外国人が増加しており、卒業後は日本で働きたいと希望する留学生も多数います。そんな外国人留学生は、どのように就職活動に取り組んでいるのでしょうか。識者へのインタビューや大学の就職支援の実例を紹介します。


今回は、明治大学の就職支援の取り組みについて2回に分けて紹介する第2回です。お話しいただいたのは、就職キャリア支援部の高賢さんと国際連携部の菅野隆行さんです。



明治大学(上)留学生の特別採用枠がなくなってしまった」はこちら

総合職の意味の理解が難しい

――採用選考や日本で働くことに対して、留学生はどのような不安などを持っていますか?


総合職の意味を理解するのが難しいようです。どこの部署にも配属される可能性があることや、どの地域で働くのか分からないことに不安を持っています。


また「自分の何をアピールしたらいいのか分からない」という相談もあります。「○○のスキルがあるので、入社して△△の仕事をしていきたい」というアピールが、はたして採用選考で評価につながるのかということです。


特に大学院生はキャリア志向が強く、自分が大学院で学んだ知識を使って働きたい、職種でスキルアップ・能力アップしていきたいという意識が強いです。例えば「大学院でマーケティングを学んだ。どこの企業に入社すれば、マーケティング業務に携わることができるのか?」といった質問は受けますね。ただし、日系企業の新卒採用の場合、専門職採用はほとんどなく、職種選びの部分で戸惑いなどを感じているという気がします。


「生活基盤は日本、母国は出張ベースで」の希望者が増加?

――留学生は働き方に関してどのように考えていますか


12月に留学生の内定者やOB・OGによる就活体験報告会を行っています。そこでは、「何時から働いて、何時に帰れるのか?」「ノルマがあると聞いたが、それはどのくらい大変なのか?」「企業は留学生を対象に研修をしてくれるのか?」「新人研修の後は、いきなり日本人と一緒に働くのか?」など働き方に関する質問も寄せられますね。


留学生が日本で就職を希望する理由の1つとして、日本の雇用環境が魅力的ということがあるようです。終身雇用を前提としており、日本は暮らしやすいためです。「数年間日本で働いたら、その後は母国で働きたい」と考える留学生は昔からいますが、最近は生活基盤を日本に置き、自国で働くのは出張ベースや数年間の赴任で、と希望する留学生も増えてきています。


――日系企業の労働時間や残業に対して、留学生はどのようにとらえていますか?


OB・OGに質問したりしていますが、学生のうちは実感として見えていないようです。実際に働き始めて、長時間労働や一定の残業をしなければならない現実を目の当たりにして、初めて気がつくのだと思います。


就職率の全体的な底上げを目指す

――留学生支援について、今後予定していることは?


就職キャリア支援部としては、就職意識や日本語能力において二極化する留学生の就職支援に対して、意識が高い留学生は日本人学生と同等の支援でもいいのではないかということを考えています。ぼんやりとした学生、自分で情報収集のやり方が分からない学生などを留学生支援の主な対象者として注力していくことで、就職率の全体的な底上げにつながるのではないかと思っています。


一方、国際連携部は就職への橋渡しに力を入れていきたいです。就職に関する理解のギャップを埋めていかないと、就活もうまくいきません。国際連携部に来る学生には「就職を意識したら、まずはキャリアセンター(就職キャリア支援センター)を活用しなさい」と伝えています。しかし、行かない、使わないという学生も多いです。就活はテクニカルな部分もあり、勉強して慣れればできるようになるはずなのに、それをやらないで就活につまずくという学生もたくさんいます。


4年生の後半になると、就職先の決まらない学生が在留資格(ビザ)の延長の相談のために、国際連携部に来ます。留学生たちは「就活をやっていた」と言いますが、詳しく聞くと、キャリアセンターに行ったり、支援プログラムを受けたりしていないのが実態。就活ノウハウをきちんと理解しないで、取り組んでいる可能性が高いと思われます。


あとは実務経験ができるようなプログラム、例えば日本人学生とは別枠で留学生対象のインターンシップなどができればと思っています。中堅・中小企業でも自分のやりたい仕事ができるということをインターンシップなどで動機づけさせたいですね。

※記事は『日経HR Labo』(日経HR)より転載しました。