大学レポート〜特徴のある教育事例を紹介〜

大学は社会のニーズに応えようと、学生にさまざまな教育を行っています。特徴ある取り組みを紹介します。
※日経産業新聞『大学』面から記事を転載しています。
 肩書などは当時のままです。最新記事は日経産業新聞をご覧ください。

世界大学ランキングに挑む

 政府の成長戦略の一環として、日本の大学は今後10年で世界の大学ランキングの100位以内に10校が入る目標を掲げ、国際競争力の強化に乗り出した。アジアの有力大学は研究開発力などを伸ばして存在感を強めている。巻き返しに動く日本の大学の姿を紹介する。

第1回

アジアの理工系躍進――日本勢、巻き返し図る(2014年5月19日 日経産業新聞)

アジアの有力大学を集めたワークショップの参加者たち(東京都目黒区)

文部科学省は4月に30校の「スーパーグローバル大学」を公募して重点支援する方針を発表した。年間予算は77億円。世界100位以内を目指すトップ型の10校に最大で年間5億円を支援。グローバルけん引型の20校に3億円を上限に最長10年間の支援をする。支援対象は9月までに決める。

文科省は「現行制度にとらわれない、変わろうとする大学を支援したい」(高等教育企画課の有賀理国際企画室長)と大学の変革に期待する。大学側の関心は極めて高い。例えば、東京工業大学は「世界のトップ大学との交流協定の戦略的な締結を促進し、学生や教員の相互交流を推進する」目的を掲げて、支援の申請準備を進めている。

世界大学ランキングは英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)と英クアクアレリ・シモンズ(QS)が有名。いずれも論文引用件数、留学生や外国人教員の比率などを判定して順位を発表している。2013年のランキングを見ると、THEは東京大学、京都大学の2校が100位以内。QSは東工大や東北大学、名古屋大学、大阪大学を加えた計6校がランク入りしている。

東工大は三島良直学長が「世界の理工大学トップリーグを構築し、2030年までにベスト10に入ることを目指す」と宣言する。ランキングの低迷に危機感も強い。

2月に大岡山キャンパス(東京・目黒)で開かれたグローバル・ワークショップ「アジアの飛躍、豊かな未来に向けて」は東工大の関係者にアジアの有力大学の強さを実感させた。集まった大学はシンガポールの南洋理工大学(NTU)、香港科技大学(HKUST)、韓国科学技術院(KAIST)といった世界100位以内の実力派だ。

11〜13年を見ると、香港科技大は62位から57位に、韓国科学技術院は94位から56位に上昇。南洋理工大は11年に169位だったが、経営陣と教員を入れ替え、76位に浮上した。

ワークショップに参加した香港科技大のジョセフ・リー副学長らが各校の戦略を明らかにした。

その内容は(1)理工系のキャンパスイメージにふさわしい国際的な建物を造り、ブランドを高める(2)国際的な学術賞の取得を促進し、情報発信する(3)欧米の大学で博士号を取得した国際的な学会とつながる研究者を招く(4)世界の有力大学とジョイント・ディグリーなどで積極的に提携する(5)厳正な教員評価で優秀者を発表して競争を促す――といった具体策が並ぶ。

香港科技大は創設から20年程度だが、QSでは34位。32位の東大に迫り、京大の35位を上回る。リー副学長は「博士号取得者の8割は欧米の有名大学出身。米国のトップ大学をベンチマークに置き、世界水準のアカデミックな研究機関を目指す」と意欲的だ。

アジアの雄に刺激を受けながら、東工大などの国内有力大学も動き出す。海外への留学促進、教授法の改革などを実践して国際競争に挑む。

(日経HR編集部 鈴木和夫編集委員)
※日経産業新聞『大学』面から記事に一部加筆して転載しています。


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