大学レポート〜特徴のある教育事例を紹介〜

大学は社会のニーズに応えようと、学生にさまざまな教育を行っています。特徴ある取り組みを紹介します。
※日経産業新聞『大学』面から記事を転載しています。
 肩書などは当時のままです。最新記事は日経産業新聞をご覧ください。

世界大学ランキングに挑む

 政府の成長戦略の一環として、日本の大学は今後10年で世界の大学ランキングの100位以内に10校が入る目標を掲げ、国際競争力の強化に乗り出した。アジアの有力大学は研究開発力などを伸ばして存在感を強めている。巻き返しに動く日本の大学の姿を紹介する。

第4回

早慶も名乗り――資金支援、意識改革を(2014年6月16日 日経産業新聞)

放送大学理事長 白井克彦氏

世界大学ランキングの上位を目指して文部科学省が重点支援する「スーパーグローバル大学」。9月の選定に先立ち、文科省はトップ型(10校)の候補として16校の申請を受け付けたと発表した。東京大学などの旧帝大が多いなか、私学では早稲田大学と慶応義塾大学が名乗りを上げた。

私立大学は国内の大学の8割近くを占めるが、世界の評価は低い。英クアクアレリ・シモンズ(QS)のランキングは最高位の慶大が193位。早大は220位にとどまる。「今やシンガポールや中国などの高等教育は国策。財政基盤が盤石な米国の大学とも単純に比較できない」(慶大)との声も漏れるが、早慶の2校は世界との戦いに挑む構えを鮮明にした。

私大も含めて日本の大学は「世界標準」に向けカジを切った。英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)のフィル・バティ編集担当は「世界ランキングに取り組む政府主導のドライブはかなり有効」と分析する。財務基盤が脆弱な私学も政府の後押しで存在感を増す可能性がある。

大学経営に詳しい放送大学の白井克彦理事長(元早大総長)は「論文引用などに重きを置く世界ランキングは日本の私大には相当不利。学生への教育と研究指導に忙しい私大教員の負担は大きく、研究に専念できない」と指摘する。私大と国立大学法人を比較すると、私大の教員1人当たりの学生数は国立の約2倍だ。

それでも私大は多彩な人材を輩出してきた。THEが発表している世界500社の経営者出身大学ランキングでは100位以内に慶大や早大のほか、中央大学、法政大学も食いこむ。「ランキングは様々な視点があって良い」(文科省)との見方もあり、多くの経営者を輩出している校風は世界にアピールできそうだ。

スーパーグローバル大学の申請をした16校のうち、国公立は14校。「世界10位以内を目指す」と宣言した東京工業大学のほか、各校は「2020年までのトップ10入りに挑戦する」(京都大学)、「創立100周年にあたる31年までに10位以内を目指す」(大阪大学)と高い目標を掲げる。

ただ、目標とは裏腹にランキングは苦戦中。英QSの最近3年間の推移を見ると、東大や京大など有力9校は順位を下げた。100位以内に10校が入る政府の目標は達成が難しいのか。

白井氏は「やり方次第では達成できる」と言い切る。「ランキング上位の旧帝大などに国の資金を多めに配分する」発想が重要だという。地方切り捨てという反対論に巻き込まれるリスクがあっても従来の発想を捨てなければ、世界では戦えない。

中国、韓国、シンガポールなどの大学は欧米のトップ大学や研究機関に人材を送り、技術や知識を仕込み帰国後、教育や研究に生かす。海外でキャリアを築いた成功事例を見て学生も海外へ積極的に羽ばたく。一方、日本の若者は内向き志向が目立つ。大学には資金の支援策だけでなく、一丸となって世界に挑む意識改革が欠かせない。

(日経HR編集部 鈴木和夫編集委員)
※日経産業新聞『大学』面から記事に一部加筆して転載しています。

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