大学レポート〜特徴のある教育事例を紹介〜

大学は社会のニーズに応えようと、学生にさまざまな教育を行っています。特徴ある取り組みを紹介します。
※日経産業新聞『大学』面から記事を転載しています。
 肩書などは当時のままです。最新記事は日経産業新聞をご覧ください。

高大接続の現場

「大学全入」時代の到来で学生の基礎学力の低下が指摘されている。そのため近年では、大学教育へスムーズに移行させるため、大学教員による高校での出前授業や入学前教育などの「高大接続」教育に力を入れる大学が増えている。全国での取り組みを紹介する。

第3回 旭川医科大学

将来働く病院とも連携(2012年10月22日 日経産業新聞)

白衣姿で蘇生の実習に取り組む生徒

 旭川医科大学の井上裕靖講師は「医師には学力だけでなく、社会の要請に応えて自身の行動を適切に修正できるバランス感覚が求められている」と話す。同大学では、そんなバランス感覚を持った入学者の増加と、地域医療に貢献できる人材育成を目的として、2008年から「高大病連携によるふるさと医療人育成の取組」を開始した。

 高校と大学の間だけではなく、将来の職場となる「病院」とも連携。入学前の教育から卒業後の初期臨床研修まで、一貫した地域医療教育を行うことによって、地域で活躍できる医療者の育成を目指すという。

 12年度は北海道内の高校12校と医療機関13施設が連携し、高校生に医療体験実習とグループワークを提供している。実習には同大学の教員1人、高校の教諭と実習施設の医師数人が参加し、病院の見学や蘇生の実習などを実施する。

 医療機関によっては顕微鏡を使った病理組織の観察や動物の手術の体験実習をさせる場合もある。実施時期は、冬季休暇中が多いが、学期内の平日の放課後にグループワークを開催するケースもあるという。

 11年度は11校から高校生176人が参加した。医療系への進学の動機づけや自身の適性を知る機会にもなったという。この取り組みを体験し旭川医科大学に入学したのは入学者の約1割。他大学の医学部や専門学校に進学した者も多い。

 同大学では高大接続事業として、講演会やワークショップからなる「高校生メディカル講座」や合宿型勉強会の「高校生メディカル・キャンプ・セミナー」にも取り組んでいる。井上講師は「入学前教育で地域への親和性を高め、将来の地域医療を支える人材育成に重点を置く。活動で出会った生徒たちが、職場で良き理解者として協働できることを期待したい」という。


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