大学レポート〜特徴のある教育事例を紹介〜

大学は社会のニーズに応えようと、学生にさまざまな教育を行っています。特徴ある取り組みを紹介します。
※日経産業新聞『大学』面から記事を転載しています。
 肩書などは当時のままです。最新記事は日経産業新聞をご覧ください。

高大接続の現場

「大学全入」時代の到来で学生の基礎学力の低下が指摘されている。そのため近年では、大学教育へスムーズに移行させるため、大学教員による高校での出前授業や入学前教育などの「高大接続」教育に力を入れる大学が増えている。全国での取り組みを紹介する。

第5回 静岡大学

学生、研究成果教えて学ぶ(2012年11月19日 日経産業新聞)

「しゃべり場」では学生が高校生に
自分の研究内容をアピール

 静岡大学では地域貢献、大学広報・優れた入学者の確保、学生教育の3点から高大連携の取り組みを実施している。指定された大学の科目を高校生が毎週履修する高大連携授業や出張授業のほか、学生教育の面で特に効果を出しているのが次の2つの取り組みだ。

 ひとつは工学部が2008年から実施している「高大連携実験実習講座」。夏季休暇中に高校生を大学に招き、触媒を用いたクリーン燃料の製造や、光で体の疲れを測る光生体計測の実験など、実験実習の講座を開いている。12年には地元の高校4校から149人の生徒が参加した。

 同講座には補助役として学生や院生も加わる。工学部全体で「教わるだけでなく人に教えること」を目指しており、通常の授業でも学生が高校に出向いて実験実習を支援することもある。こうした取り組みは学生の学習意欲の向上や学力の定着という側面でも大きな意味を持つ。

 もうひとつは11年から開始した「しゃべり場」だ。11年12月に卒業を控えた4年生12人、高校生112人が参加し開かれた。学生が自らの研究や課外活動、日常生活を高校生に語るという内容で、学生の就業力の育成、特にコミュニケーション能力の向上を主たる目的とする。相手に語ることによって、自身の学びの再確認にもつながるという。

 就職の面接の場で、自分の学んできたことを的確に語れない学生が増えている。石井潔教育担当副学長は「単に経済学を学んだというのではなく、具体的に学んだことを語れるようになってほしい」と強調する。

 同大学では学びのキャリアを語れる学生の育成が、教職員間でのキャッチフレーズにもなっている。時期の調整は難しいが、就職活動前の3年生の後期に、しゃべり場を実施することも視野に入れている。


『高大接続の現場』バックナンバー