大学レポート〜特徴のある教育事例を紹介〜

大学は社会のニーズに応えようと、学生にさまざまな教育を行っています。特徴ある取り組みを紹介します。
※日経産業新聞『大学』面から記事を転載しています。
 肩書などは当時のままです。最新記事は日経産業新聞をご覧ください。

高大接続の現場

「大学全入」時代の到来で学生の基礎学力の低下が指摘されている。そのため近年では、大学教育へスムーズに移行させるため、大学教員による高校での出前授業や入学前教育などの「高大接続」教育に力を入れる大学が増えている。全国での取り組みを紹介する。

第7回 秋田大学

独自テキストで授業(2012年12月3日 日経産業新聞)

物理のテキストを使った試行授業

 秋田大学は「高大接続教育の実践的プロジェクト」を進めている。文部科学省にも優れた取り組みとして採択された。高大接続教育に注力する理由の一つに、大学教育に馴染めない初年次生の増加があるという。

 同大学の高大接続教育の専門組織、「カリキュラム・トランジッション・センター」事務局の鍋島太郎特任准教授は「高校の教育内容を十分に消化しておらず、未修得科目のある学生が一定の割合でいる」と指摘する。その上で「自主性が重んじられる大学では、高校までのように丁寧に教えてもらえない。授業について来られず意欲がわかないケースもある」と話した。  取り組みの中心となるのが「高大接続テキストの作成」だ。高校の学習内容を大学の授業にスムーズに接続させるためのテキストを作る内容で、教科ごとに編集委員会を設けて編集作業が進められている。

 2012年3月には、物理、化学、生物、英語の4科目で試行版を作成した。テキストを使った試行授業も実施した。参加した学生からは「中学の頃から苦手意識があり敬遠していたが、物理が好きになった」など、好意的な意見が多くあがったという。数学、情報を加えた6科目のテキストが完成したら、学生の自習用や授業のサブテキストとして使う予定だ。

 同大学ではこのほか、高校教育を復習するeラーニング、複数の教員が学生の質問に答える「共同オフィスアワー」、高大の教員相互の授業参観、意見交換会なども行っている。

 鍋島氏は「初年次生が大学の授業になじみ、意欲を持って取り組むには、高大の学習内容の接続性を実感できることが大事だ」とする。そのためにも、高大の教員が学習状況について情報を共有し、より良いテキストを作り上げていく重要性を強調していた。


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