大学レポート〜特徴のある教育事例を紹介〜

大学は社会のニーズに応えようと、学生にさまざまな教育を行っています。特徴ある取り組みを紹介します。
※日経産業新聞『大学』面から記事を転載しています。
 肩書などは当時のままです。最新記事は日経産業新聞をご覧ください。

高大接続の現場

「大学全入」時代の到来で学生の基礎学力の低下が指摘されている。そのため近年では、大学教育へスムーズに移行させるため、大学教員による高校での出前授業や入学前教育などの「高大接続」教育に力を入れる大学が増えている。全国での取り組みを紹介する。

第11回 兵庫県立大学

アルミ缶製造など体験(2013年2月4日 日経産業新聞)

みかんを使った電池づくりに取り組む生徒たち

兵庫県立大学は県教育委員会と提携した高大連携授業や付属校への授業の提供を進めている。狙いは地域貢献と大学教育の活性化。その中でも特にユニークなのが工学部の取り組みだ。

同学部は2011年度から、出前講義の広報のために教員の研究内容を冊子にまとめ、県内の中学・高校へ配布している。出前講義では生徒たちが興味を覚えるテーマをかみ砕いて解説。高校での学習内容と大学での学びが連続していることに気づき、進路を考える参考になったという生徒は多い。12年度は22回の講義を開講する。

12年度に新たに開始したのが「1日体験授業」。近隣の高校3年生を大学に招き、アルミ缶の製造体験や果物を使った電池の作製などの授業を提供した。対象は近隣校だけだが、生徒に本格的な大学教育に触れさせ学習意欲を刺激する。

地域との結びつきを強める取り組みとしては、新入生を対象にした講義「兵庫のものづくり」がある。県内15社から経営者や社員を講師として招き、学生に社会と接する場を提供する。工学部の藤原閲夫教授は「外部の人だからこそ言えることもあるし、学生も素直に受け入れる」という。講師探しは2人の専任スタッフが担当。リポート提出が毎回義務づけられるが、受講者は年々増え、同学部の新入生の半数以上が受講している。出席率も95%ほどの人気授業だ。

藤原教授によると、大学への入学という目的を達成し、新たな目標を見出せないまま学習意欲を失う学生が目立つという。同学部ではシンポジウムを開催し、高校教員らとの情報収集や意見交換も行う。教える側の意識や姿勢にも問題の一因があると考えるためだ。藤原教授は「高大教員間の意思疎通を円滑にし、高校生の学習実態を適切に把握することが重要」と話す。


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