キャリア教育の現場から

アジアとの人材交流が日本の未来につながる
〜ビジョンや夢を持ったアジアの若者に活躍の場を提供したい〜

シンポジウム「グローバル人材と企業のアジア展開」

就職を目指し日本語を学ぶアジア人大学生が増加

独立行政法人国際交流基金 上級審議役の吉尾 啓介氏
独立行政法人国際交流基金 上級審議役 吉尾 啓介氏

優秀な外国人、とりわけアジア人を本社に迎え入れたいと思っている日本企業は多い。そこで問題となるのが、ビジネスレベル以上の日本語力を持っているかだ。

この点を踏まえ、アジアにおける日本語教育の現状と課題について特別講演をしたのは、独立行政法人国際交流基金上級審議役の吉尾啓介氏だ。日本の文化外交を担う国際交流基金では、相互理解の促進を目的に海外での日本語普及事業に力を入れている。現在世界136カ国・地域で約400万人もの日本語教育学習者がいるが、その80%以上はアジアの学習者だ。

アジアにおける日本語教育の特徴は、中等教育段階での学習者が多いことだ。なかには、国家的に取り組んでいる例もある。また、「高等教育段階では最近、将来の就職を意識して日本語を学ぶ人が増えている。特にベトナムでは顕著だ」と吉尾氏は指摘する。ただ、そうした学習者からは、「日本企業がどれほどのレベルの日本語力を期待しているのか」「本当に日本語を学ぶメリットはあるのか」という不安の声も寄せられているという。「企業の協力を得ながら教育インフラの整備や情報発信を図り、日本語学習者の出口戦略を構築していけるようオールジャパンで取り組みたい」と吉尾氏は語った。

躍進するアジアのパワーを日本に取り込みたい

パネルディスカッション
パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、企業サイドからはアジアの若者たちへの期待や現状の体制について、人材を輩出する立場にある内外の大学サイドからは日本企業で働く魅力や要望、大学の役割・使命について発表があった。

藤本治己氏
藤本治己氏

各パネリストの印象的なコメントを列挙してみたい。企業サイドを代表して発言したのは、帝人人財開発・総務部長の藤本治己氏。藤本氏は、「まずは日本本社がグローバル化しなければいけない。そのためにもいろいろな国の方に来てほしい。当社は新卒者の10%以上が外国籍だ。配属先を限定せず、多様な活躍の場を提供していきたい」と語った。

ユパワン・ソーピットヴィッティウォン博士
ユパワン・
ソーピットヴィッティウォン博士

また、タイのチュラーロンコーン大学文学部のユパワン・ソーピットヴィッティウォン博士は、「タイでは日本企業に対する信頼度は非常に高い。ただ、経営にスピード感がない、キャリアパスが見えにくいことを理由に転職してしまうケースが目立つのも事実。人材定着への努力を期待したい」と話した。

ゲン ティ ホアン ジエム博士
ゲン ティ ホアン ジエム博士

ベトナム国家大学ホーチミン市人文社会科学大学のゲン ティ ホアン ジエム博士は、「高い技術力、優れた知性が日本企業の魅力。ベトナム人学生も大いに関心を寄せている。彼らが長く働けるよう人事評価、教育研修にも力を注いでもらいたい」と企業側に要望した。

さらに、前述の明治大学副学長の勝悦子教授は、「お互いをもっと知り合えば、よりよい対応ができるはず。ビジョンや夢を持ったアジアの若者にも活躍の場を提供できるよう、日本語の教育・普及を産官学で進めていきたい」とアピールした。