キャリア教育の現場から

アジア各国の日本語教育事情と日系企業への就職事情

日本経済新聞社と日経HRは2013年8月27日〜29日、アジア各国の大学生と日本企業の合同面接会「NIKKEI ASIAN RECRUITING FORUM in 東京」を開催した。その中で「教育セッション」として各国の日本語学科教員を招き、各国の日本語教育と日系企業への就職事情について報告してもらった。概要は以下の通り。

インドネシア

勝 悦子教授
日本語学習者の95%が高校生

インドネシアの日本語学習者は中国に続いて世界第2位、87万人ほど。教師のほとんどはインドネシア人で、日本語学習者の約95%を高校生が占めている。しかも、ジャカルタやスラバヤといった大都市圏に限らず、地方でも日本語を学習する若者が多いのが特徴だ。

高校で日本語学習者が急増した背景として、2006年からカリキュラムが変更され、第2外国語として中国語やフランス語などとともに日本語も選択可能になったことがあげられる。

順調に経済成長を遂げて日本との友好協力関係が緊密化するとともに、アニメやマンガなどの日本のポップカルチャーが流入して日本への関心が高まり、以前にも増して日本が身近な存在として感じられるようなった。また1000社を超す日本企業がインドネシアに進出していることもあり、就職先の選択肢を広げるためにも日本語を選択する学生が増えているという。

しかし、卒業時に日本語学習者の多くが日系企業への就職を希望するかといえば、そうともいえない。インドネシア人から見ると、日系企業の勤務時間が長いと感じられ、イスラム教徒が大半を占めることから宗教やそれにともなう生活習慣の違い、仕事に対する日本人との考え方の相違から、日本と関わりのある現地企業へ流れる傾向がある。

フィリピン

ポップカルチャーから日本語人気に

タイやマレーシアなど東南アジア諸国と比べると、フィリピンではタガログ語と英語の2つが公用語とされているだけに、日本語よりも英語学習者の人数が圧倒的に多い。しかし、2012年に日本語学習者が初めて世界第10位に入ったように、近年はポップカルチャーを通して日本への関心が高まり、日本語学習者が急増、スペイン語やフランス語の学習者を上回るようになった。

ところが、フィリピンでは、高等教育機関で選択外国語科目として日本語を学ぶのがほとんどで、しかも、日常生活で日本語を使用する機会が少ないため、初級程度の日本語学習で終えてしまう学生が大半だ。

英語を中心とした外国語ができないと就職しても高いポジションにつけない、給与が上がらないという現実的問題がある。日本語でキャリアアップを目指す学生たちは、仕事に直結するビジネス用語や専門用語など実務的な日本語教育を求める傾向が強い。とりわけ人気が高いのは、メーカーでの技術職、金融やコンサルタント業、あるいは観光業や介護関連の職種だ。

フィリピン人教師のほとんどが日本企業で働いた経験がないうえ、教育機関と日系企業との連携がまだ少ないことから、日系企業の実情が十分に把握されていない。そのため、日本の大学との連携強化でフィリピン人日本語教師の日本語力のアップと、日系企業とのつながりを強めることが今後の大きな課題とされている。