キャリア教育の現場から

アジア各国の日本語教育事情と日系企業への就職事情

マレーシア

日系企業就職者からは不満の声も

マレーシアにおける日本語教育は第二次世界大戦前から始まり、1966年にはマレーシアを代表するマラヤ大学で日本語講座が開講された。以後、各大学でも日本語教育が始まった。特に、1981年以降、当時のマハティール首相が欧米に代わって、戦後、目覚ましい経済成長を遂げた日本などに学ぼうとするルックイースト政策を打ち出したことで、日本の大学への留学や企業への技術研修生の派遣が拡大し、日本語学習者が急増した。現在、国立大学20校中、18校で日本語教育が実施されている。ただし、日本語専攻があるのは、マラヤ大学の言語学部のみ。

アニメや漫画などの日本のポップカルチャーに慣れ親しみ、日本語学習を希望する若者が増加中だが、一方で、日本語教師の人数が足りていないという。

マラヤ大学における日本語学習者の進路状況は約半数が日系企業に就職し、3割ほどが非日系企業、その他として自営業や政府・行政機関関連の仕事、あるいは進学などとなっている。

日系企業に就職した学生への聞き取り調査によると、「日本語が出来るためにかえって仕事上の負担が大きい」「昇進が遅く給料が上らない」「決まったことしか行えない」という不満があげられている。日系企業側からの課題としては、近年の労働コストの上昇があげられる。

最近は、経済成長を背景に中国や韓国の企業の進出が多くなり、中国語や韓国語の学習を希望する学生が急増している。

中国

勝 悦子教授
日本語学習者100万人超え。
日本語能力試験N1レベルも多い

日本語学習者数が100万人を超え、世界で最多となる中国。日本の大学で学位を取得した中国人の日本語教師が多く、大学生の日本語能力も高い。日本語能力試験での基準で見ると、大学に入学して日本語を学び始め、3年次には日本語能力試験で最上位のN1レベルに達する学生も珍しくない。

中等教育の現場でも、訪日経験がある多くの教師は高い日本語能力を保持しているのが特徴だ。日中間の国際交流もさかんに行われ、東京大学、早稲田大学、京都大学などと交換留学が実施されている。

卒業後は、日本の大学院修士課程への進学、銀行や証券会社、商社を中心とする大手日系企業や会計事務所、国家公務員、あるいは起業を選択する者が大半を占める。

ただし、同じ漢字文化圏だけに学生の文章読解力は高いが、話す、聴くという面においてはやや難点があるという。そのため、近年はスピーチコンテストを行うなどして、会話力を高める教育を強化している。また最近は、日本語能力だけでは就職が難しくなり、英語やコンピューターなども学ぶ学生が増加している。

日中関係が冷え込むと日本語学習を第一志望として入学する学生が急減するなど政治情勢の影響を大きく受け、例え入学しても1年後に転学するケースが多いことが課題として指摘された。最近は、他の国と同じように韓国語を学ぼうとする学生が急増している。