キャリア教育の現場から

学生の社会的・職業的自立に向けて必要となる能力等を育成するキャリア教育について、教育現場からお届けします。

日経HRは2017年1月、日本で就職を目指す外国人留学生対象にした就活支援プログラム「日本の業界・企業研究講座」を開催しました。本講座は、首都圏在住の就活生を対象に就活指導を行う「日経HR Labo 就活ゼミ制度」の一環で、日本の独特な就職活動に戸惑う外国人留学生の就職活動をサポートしています。 講師は、2000人以上の留学生を就職サポートした実績を持つ、エンピ カンデルさん。ご自身も日本の大学へ留学して就活をし、新卒入社を経験しました。 講座の一部を紹介します。

「外国人留学生のための日本の業界・企業研究講座」開催報告

講座の様子

内定を獲得できない留学生の傾向は?

今まで多くの留学生を支援してきて、内定が決まらない留学生は同じような傾向があることに気づきました。その1つが「母国と日本の架け橋になれるような仕事がしたい。だから商社を志望する」と安直に考える留学生です。

業界研究をした上で商社を志望するのであれば問題はありませんが、なんとなくのイメージや知名度で商社(特に総合商社)を志望しても、内定は獲得できません。実際、文系の留学生に志望業界を聞くと、10人中8、9人が商社を挙げますが、そのうち商社から内定を得ることができるのは1、2人です。

そもそも日本で就職を希望する留学生のうち、就職できるのは3割程度です。7割の学生は帰国するか、大学院などに進学します。

また、商社は総合商社だけでなく専門商社などを含めれば多数ありますが、大手企業しか見ていないことも内定を獲得できない理由です。これは留学生に限らず、日本人学生にも言えることです。自分が社名を知っている企業、つまり大手・有名企業にばかり応募し、高い競争倍率の中では選考に落ちる確率も高くなります。

業界・企業の見つけ方

留学生の皆さんが「母国と日本の懸け橋になれるような企業で働きたい」と考えるのであれば、まずは母国に進出している企業を探しますよね。例えば、中国に進出している日本の企業は、何社くらいあると思いますか? 少し前のデータですが、2万社以上あると言われています。

進出している企業の探し方はさまざまありますが、日本貿易振興機構(ジェトロ=JETRO)で調べることも1つの手です。ジェトロには各国別の進出企業のリストがあります。

企業を見るときは大手だけでなく、中堅・中小企業にも目を向けてみましょう。従業員数が100〜200人くらいの企業であっても、高い技術力を持った”優良企業”はあります。そのような企業は大手ほど選考の倍率が高くなく、内定をもらえる確率が高くなります。

志望企業を決めるためには、自分の「企業選択の軸」を持つようにしてください。軸は1、2つではなく、10個ぐらいは考えてほしいです。そして、その中で優先順位をつけてみましょう。

講座の様子

例えば、優先順位1〜3位は「この軸がないと入社しない」というものです。4〜6位は「できればこの軸はあってほしい。複数企業から内定をもらったら、この軸で絞っていく」というもの。7〜10位は「予備として入れておき、企業選択で迷った時に参考にする」という軸です。選考が進んでいくと、軸の内容や優先順位が変わることもありますが問題ありません。

自分に合う業界かを知るには、その業界の企業に3社程度応募してみて、企業の人と話をしたり、選考を受けたりして自分の目で確認すればほぼ分かります。自分に合わないと思ったら、受けることをやめればいいのです。

業界・企業研究をする理由

ではここで、なぜ業界・企業研究が必要なのかを考えてみましょう。1つは自分や他の就活生が知らない企業を知るためです。

日頃、見聞きするような自分が知っているような企業は、たいてい他の学生も知っています。一方で、周囲の学生が知らないような企業を知っていれば、それは自分の強みになります。多くの学生は大手・有名企業に応募するので、そのような企業は競争倍率が高くなり、内定を獲得することが難しくなることはわかるでしょう。

自分の「企業選択の軸」によって、調べる内容も変わってきます。もし企業選択の軸が「日本が好きだから、日本で働き続けたい」ということであれば、日本国内で事業展開をしている企業を受けることになりますよね。そんな学生にとっては、事業展開の状況を調べることも企業研究の一環なのです。

自分が知っている企業は、それほど多くないはず。一度、知っている企業名を書き出してみると、思いのほか少ないことに気がつくでしょう。調べることをつらいと思わず、逃げないで取り組むことは、社会人になったときに役立つ能力です。前向きにとらえて、業界・企業研究を進めましょう。

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