就活 会社選びの新基準。 重視点は環境、社会、人へのやさしさ

就職活動の本格的スタートにあたり、どんな視点で企業選びをすればよいか、迷っている学生もいるかと思います。「いい会社」であること、「ブラック企業ではないこと」が学生の大きな関心事ではないでしょうか。学生はさまざまな就活支援を受ける中、いい会社を見分けるために会社の業績や企業規模、業界順位、シェアなどをチェックしよう・・・といったアドバイスを受けたかもしれません。


もうかればいい、という時代は終わり

会社の業績や企業規模などは、その会社が「もうかっているかどうか」という経済的価値を示す指標で、会社の実力を知る上で大事なものです。しかし、環境問題をはじめ、さまざまな社会課題が山積する現代では、経済的価値だけを追求する企業活動は過去のものになりつつあります。


かつて、ある世界的に有名なスポーツメーカーが海外の工場で現地の子どもを低賃金で働かせていたことが明らかになり、非難の的となりました。製造や流通の過程で不当な行為があれば、たとえどんなに品質やセンスが素晴らしくても、消費者から「ノー」を突きつけられる時代です。一方、フードサービス企業が海洋汚染への影響を考慮しプラスチック製のストローの提供を中止したことで、環境意識の高い会社として注目を集めた例もあります。


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最近では「SDGs」という言葉を耳にするようになりました。SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、人間、地球の持続可能な繁栄のために2015年に国連で採択された、2030年までに達成すべき世界共通のゴールのことです。「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」「つくる責任つかう責任」「住み続けられるまちづくりを」などのように、「貧困」「気候変動」「人権」「経済活動」などの側面から17のゴールが掲げられ、これらは国や地域、所属に関係なく、全ての人が関わるべき社会課題とされています。ここでいう全ての人には、会社も含まれます。


以前にも増して会社の社会的責任が問われる中、社会課題の解決に取り組む会社の評価は高まっています。新時代の「いい会社」の定義は、経済的価値だけはなく、環境、社会、人に配慮しているかどうかといった「非経済的価値」を示せる会社といえるでしょう。


SDGs達成に取り組むと会社にもメリットがある

SDGs達成に取り組むことは社会貢献になるだけでなく、会社側にもメリットがあります。例えば、世界的な社会課題の前には苦しんでいる人が多数存在し、そこには潜在的なビジネスチャンスがあります。また、社会課題に向き合うことから、立場の異なる人との対話が生まれイノベーションが起こります。会社の社会的評価が高まれば、グローバルなビジネスがしやすくなったり、資金が集まりやすくなったりします。


働き手からすると、ビジネスを通じて社会課題の解決に貢献できることは大きなやりがいや達成感を満たせるため、魅力的な職場に映るでしょう。人材難が続く中、人材獲得力のある会社はない会社より一歩も二歩もリードできるのです。このように、社会課題への意識や取り組みは、会社の持続的な成長を支える術になります。就職先として「将来性のある会社」を選ぶとき、会社のSDGs達成への取り組みを調べることが重要になってくるでしょう。


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上場企業には、会社の概況、事業内容、営業状況、財務諸表などをまとめた「有価証券報告書(有報)」があり、先に説明した経済的価値はこれを見れば分かります。また、環境、社会、人への配慮といった非経済的価値については、「統合報告書」という名前で発表している会社が増えています。有報も統合報告書も、会社のホームページで見ることができるので(注:統合報告書を作成している企業は2018年で400社程度)、経済的価値も非経済的価値も高い会社かどうかチェックすることができます。


ただ、会社の統合報告書を1社1社読むのは骨の折れる作業です。そこで、SDGsに関係する3つの指標を紹介し、指標別に会社をまとめてチェックする方法を紹介します。3つの指標とは、①ESG銘柄 ②ダイバーシティ経営企業 ③健康経営企業です。


ESGで学生が知らない優良BtoB企業を知る

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス、企業統治)の頭文字で、近年、新聞記事などによく登場するキーワードです。世界の投資会社は企業のESG関連の社会課題に対する取り組みや情報公開度などを調べ、上位企業を「ESG銘柄」として発表しています。ESG銘柄に選ばれた企業は、社会課題に対する意識が高く、社会との接点や対話を重視しており、ゆえにさまざまなビジネスチャンスを得て継続的な成長が期待できる、というわけです。


ESGは欧州、米国で進んでいますが、日本版のESG銘柄もあります。例えば、FTES Blossom Japan インデックス(指標)は、年金積立金管理運用独立法人(GPIF)の運用対象にも採用されています。このインデックスのESGスコア上位リストを見ると、ESGに熱心な日本の上場企業がズラリ。例えば、光ファイバーやスマホ基盤を作っているフジクラはBtoB企業なので知らない学生もいるかもしれませんが、東証一部上場上場企業です。ESGスコアでは花王やKDDI、三菱商事と並んでいます。


FTES Blossom Japan インデックス

ESG_s.png 出典『日経キャリアマガジン特別編集 就活NEXT 未来を変える会社2020年度版』より

ダイバーシティ経営から業界内の企業の違いを知る

ダイバーシティ経営企業とは、人材や働き方のダイバーシティ(多様性)推進に力を入れ、経営戦略の中にダイバーシティをとりいれている企業のことです。経済産業省が2012年度から選定しています。


昔の日本企業では多くの場合「日本人、男性、正社員総合職」の人がフルタイム勤務することを基準に働き方や人事評価が考えられてきました。しかし、労働人口の減少によりさまざまな人材を活用する必要があること、労働時間の長さではなく成果を評価する方向に変化しつつあること、また均一的な組織ではイノベーションは起こらないこと、などを背景に、組織の多様化を進める必要が出てきました。


日本の上場企業の女性役員比率は3.8%ときわめて低く、上場企業の6割が女性役員ゼロです。画一的な組織、働き方に対する反省を踏まえ、企業として、女性活躍、外国人採用、高齢者雇用などに力を入れたり、「正社員総合職」以外の働き方を備えたり、さまざまな背景を持つ人たちが力を発揮できるよう、制度を整える会社も現れています。


経産省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」のリストを業界別に見ると、男性社会といわれる建設業界でも選ばれている会社があることが分かります。例えば、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店などです。このリストにある会社は、建設業界の中でも組織変革にいち早く取り組んでいる会社といえます。


新・ダイバーシティ経営企業100選

diversitys.png 出典『日経キャリアマガジン特別編集 就活NEXT 未来を変える会社2020年度版』より

健康経営から「notブラック企業」を知る

健康経営とは、働き手が身体的にも精神的にも良い環境でいてこそ、仕事に十分に力を発揮することができ成果を生み出すことができる、という経営思想のことです。こちらも経済産業省が「健康経営企業」を選定しています。


就活中の学生は、「ブラック企業」が気になるかもしれません。ブラック企業の定義はさまざまですが、例えば「離職率が高い」「心の病気で休職している人が多い」などが該当するでしょう。離職や休職の原因には、長時間労働、社内の人間関係のストレスなどがあるようです。


健康経営に力を入れる会社では、業務を効率化しITを活用するなどして、残業時間の削減を進めています。また、社内のハラスメント対策としては社内教育を進めたり、被害にあったときに相談できる担当者を設けたりと隠ぺいされない仕組みに力を入れる企業が評価されています。健康経営に選ばれている会社であれば100%ホワイト企業であるとはいえませんが、少なくとも従業員の心身の健康に関心を持ち、働き続ける上での課題を共有できる会社であるといえます。


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kenkoukeieis.png/> 出典『日経キャリアマガジン特別編集 就活NEXT 未来を変える会社2020年度版』より

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日経HR編集部 定価:1,009円(税込)

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企業や働く人々を取り巻く環境が大きく変わる中、新しい企業選びの「モノサシ」が注目されています。 企業の「SDGs」の取り組みが分かるデータとして、「ESG」「ダイバーシティ経営」「健康経営」などの指標を取り上げ、該当企業をリストにして掲載しました。 また、働く企業を選ぶ際、なぜこれらの指標が重要か解説します。 業界・企業研究に欠かせない1冊です。
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