千葉県インターンシップフォーラム(上) コロナ禍でのインターン、学生たちはどう感じたのか?

インターンシップの行く先

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新型コロナウイルス禍で行われた2020年度のインターンシップについて、参加学生、受け入れ企業・団体などが一堂に会して振り返る――。千葉県内のインターンシップ拡大の一環であるイベント、第7回「千葉県 インターンシップフォーラム」が、2021年3月4日にオンラインで開催されました。参加者が共通して語ったのは「コロナ禍だからこそできることがある」ということ。活動が制限される中でのインターンは学生にどんな成長をもたらしたのかをリポートします。

「千葉県インターンシップフォーラム(下)企業と学生が感じたオンラインの良さ」はこちら

県内11大学・短大が参加。出発点は「産業界のニーズGP」

「千葉県インターンシップフォーラム」を主催するのは千葉県インターンシップ推進委員会。同委員会は2014年度文部科学省「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」【テーマB】「インターンシップ等の取組拡大」に採択されたのを機に設置されました。その後、同事業は終了しましたが、千葉県、千葉市、千葉県経営者協会などの支援団体と県内の民間企業、県内11大学・短大が参加し、活動を続けています。

産官学が一緒になって学生のキャリア教育と就職支援を推進し、14年から毎年フォーラムを開催して今年で7回目となります。フォーラム当日は緊急事態宣言下という状況。オンライン開催と同時に、YouTubeでも同時配信しました。

フォーラムは推進委員会代表校である敬愛大学の中山雄二キャリアセンター長のあいさつで始まりました。中山センター長は「従来なら多くの大学からインターンシップの事例発表をしてもらっていますが、新型コロナの影響もあって半分程度の5大学となりました」と、20年特有の事情を説明。新型コロナによってインターンシップ受け入れ企業の減少やリアルな就業体験ができないといった逆境の中、インターンシップを経験した学生たちの発表が始まりました。

「バーチャル見学会」でも感じた職場の雰囲気

発表のトップバッターとなったのは、神田外語大学・3年生の杉山理奈さんです。参加したのは、産業プレス機械の点検・修理から製造販売までを手掛ける、しのはらプレスサービスのインターンシップです。5日間の職場体験の予定が、感染リスクを避けるためにワンデーのオンライン形式に切り替わりました。杉山さんが印象に残ったと話すのは、複数のカメラを使って社内を中継した「バーチャル見学会」です。PCの画面越しでも「どのような空気感で仕事するのかを感じることができた」と言い、「就活では職場の雰囲気が企業研究のポイントになった」と報告しました。

また、「就活は何から始めたらいいのか」という不安を抱えていた杉山さん。同社の篠原正幸社長の「良い学生とは自粛期間に何ができるのかを考えて目的意識を持って生活することができる学生」という発言によってチャレンジ精神が芽生えたと言います。この言葉に触発され、杉山さんは「大学生活で何かやり切ったと思えることに挑戦しよう!」と決意。千葉県内の企業が抱える課題について解決策を提案するビジネスコンテスト「千葉限定キャリアインカレ」に参加し、見事チーム優勝を果たしました。

篠原社長は発表後の講評で「何事も取り組み方次第。自分がチャンスだと思うのか、思わないのかです。また何かに挑戦して自信をつけてほしい」と、杉山さんにエールを送りました。

オンラインへの不安ではなく、できる範囲でできることを

2番目の発表は、オークラ千葉ホテルのインターンシップに参加した敬愛大学3年生の手嶋麻尋さん。こちらも5日間の実務体験がオンラインによるワンデーのPBL型(問題解決型学習)に切替わりました。「オンラインでは職業知識も広がらないのでは」といった不安があったものの、「他の学生たちも同じ状況下で頑張っている」と思い直し、「変化への対応力をつけて諦めない気持ちを持つ」ことを決意したと言います。

ホテル業界をしっかり理解するために社員の方への質問を準備してインターンに臨みました。事前に準備したことによって、自身の課題である「どの部署で働きたいか」についても深く考えることができ、「どの部署も大変であり、その分どの職種もやりがいがある」「重要なことは働く本人の心構え」という気づきがあったと言います。

インターンで体験できなかった社会人としての立ち居振る舞いについて、「日ごろから気を配ることで身に付けていきたい」と。状況や環境にこだわらず、できることはどんどん実践していくという積極的な姿勢へと変わっていました。

インターンを担当したオークラ千葉ホテルの営業部セールス課課長代理の阿保優子さんは、発表内容に共感しながら「発想の転換によって『できること』がたくさんあります」とアドバイスをくれました。

社員の方からのアドバイスで短所を改善

3人目は聖徳大学3年生の鮫川柚季子さん。バス・タクシーを運行するビィー・トランセホールディングスの5日間のインターンシップに参加しました。プログラムは「交通空白地帯に住んでいる人のニーズを探り、最適なサービスを実現する」企画を考え、プレゼンするというものです。

参加した仲間たちと机上調査、そして暑い夏の日に道路を歩いて対象地域を調べました。ところが、市場調査に時間をかけ過ぎた結果、プレゼンテーションのための資料作りに割く時間が少なくなってしまいました。焦った鮫川さんは、何でもかんでも自分一人でやろうとしてしまったそうです。その時、社員の方から「それぞれ得意分野に合わせて役割を決め、自分の仕事に集中するといいよ」とアドバイスをもらい、「自分の短所を改善することができた」と振り返ります。最終日の発表会ではプレゼンに対しての熱い講評、そして一人ひとりに修了証書が手渡された瞬間、「今まで感じたことのない達成感があった」と話しました。

ビィー・トランセホールディングス総務部の柏原陽部長は、「去年の夏のプレゼンテーションよりも、今回さらにステップアップしていますね。素敵な発表でした」と、鮫川さんのさらなる成長を感じているようでした。

徹底したコロナ対策で高齢者施設に営業同行

続いても対面でのインターンシップ。病院、高齢者・障害者施設向け備品の販売会社、シルバーとっぷで2日間のインターンに参加した千葉経済大学2年の吉谷梓さんの発表です。業界研究のほか、社会人基礎力の向上などを目的に参加。コロナ禍で細心の注意が必要な高齢者施設への営業に同行しました。「マスク、手袋の着用や消毒スプレーの使用、内履き、外履きを分けるなど対策を徹底し、お客様に十分配慮することが信頼を生みます。その大切さを感じました」と、吉谷さん。

グループワークでは「周りを巻き込む力などチームで働くための力が不足している」と振り返り、その力を養うべく日々の活動に取り組んでいることを報告。インターンをきっかけに就職活動への意欲が向上し、資格取得にも挑戦していると言います。

シルバーとっぷ事務管理部の田久保悟志主任は、「吉谷さんの強みである、明るさ、協調性は福祉の業界ではとても重要です。その強みを伸ばしながら、さまざまな会社を見て就職先を探してください」と、まだ2年生である吉谷さんに大いに期待しているようでした。

課外活動の抑制の中、学生が学内でプロジェクトを発足

最後は学生自らがインターン先を開拓した例になります。和洋女子大学の有志7人がチーム「ぱく活」を結成し、利用者の減少している学食を盛り上げるPBL活動です。「自分たちの力で大学を、そして学食を良くしていきたい」という強い思いを持ち、学食運営を盛り上げるプランを作成しました。

学食の利用者が減っている要因を、「新型コロナの影響で学食が開いているかが分からないため、学生が昼食を持参している」と見て、SNSで学食の情報発信を提案。さらに学食への興味を引くお得なポイントカードの作成、郷土料理などを提供するフェアの開催など、学生側、運営側の両方の視点で集客案を作り上げました。

和洋女子大学の進路支援センターの野澤和世室長は「『大学に恩返しをしたい』という学生の思いに、学長、事務局長も胸が熱くなり、「ぱく活」プロジェクトを学校側も全面支援することになりました。学生の課外活動が制限される中でも、何かを成し遂げることができるのだと、学生からあらためて考えさせられた」と、熱く話していました。

学生たちが参加したインターンを振り返る報告には、新型コロナによる受け入れ企業減少、オンラインでの実施など、これまでとは異なる形のインターンシップがありました。学生たちは将来の進路を考えるためや、自分の力を客観的に測るためなど、さまざまな目的を持って参加し、自分たちでは変えられない環境の中でも工夫をしながら活動し、それぞれが何かを得て成長し続けているようです。オンライン越しに参加者全員の熱を感じる時間でした。

次回は「コロナ禍におけるインターンシップ」をテーマにしたパネルディスカッションです。

写真素材/PIXTA