キャリア支援担当者が令和のキャリア支援について考えた(下)8つのテーマで課題を共有・解決

国立大学キャリア支援担当者情報交換会

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第二部 分科会は「キャリア教育(授業)」「インターンシップ」「進路・就職相談(相談)」「就職ガイダンス(セミナー)」「博士課程大学院生の支援」「留学生の支援」「障がい学生の支援」「予算獲得(自己収入)」の8つに分かれて、事例紹介や意見交換がありました。

各分科会報告・全体共有での各分科会代表者から発表内容は以下の通りです。

1.キャリア教育(授業)
キャリア教育は大事だが担当の先生が見つからない、体制的にも整わないという意見がありました。実際に科目を設置しても必修であれば学生は受講するが、選択科目にすると学生が履修せず、特に1年生は受講のモチベーションが低いという課題も出ました。キャリア教育の効果の検証・見える化も話題になり、ある大学から効果があったという話もありましたが、効果の検証についてはこれからといった状態のようです。

2.インターンシップ
文部科学省の「大学等におけるインターンシップの届出制度」で全国最優秀賞に選ばれた山形大学に事例紹介をしてもらいました。教育的効果をどう測ればいいのか、公務員のインターンシップは書類提出などで手間がかかるといった意見がありました。正課外インターンシップに参加する学生が増え、正課内インターンシップに参加する学生が減っていることも分かりました。

3.進路・就職相談(相談)
相談内容よりも相談体制の問題に話が集中しました。外部委託や非常勤、5年の有期雇用など、相談員の継続的、安定的な体制づくりができていないことが挙げられました。その理由はお金の問題です。また、職員がキャリアコンサルタントの資格を取得しても数年で異動してしまうことや、マネジメントの仕事があるために学生の相談に乗れないなどの課題が浮かび上がりました。

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4.就職ガイダンス(セミナー)
ガイダンスに学生が集まらないといった共通の悩みが出ました。その解決策として、就職担当の先生にガイダンスへの参加を依頼するなど学部との連携を密にすること、授業の6時以降に開催することなどが挙げられました。低学年を含めたガイダンスの開催は学生が集まらないといった話もありました。最後に話題になったのは担当職員が1~3人と少なく、悩みの解決もできないということです。これに対して東海地区では国公立の大学が毎月1回集まって課題の共有・解決をしているそうです。

5.博士課程大学院生の支援
各大学で博士課程向けの支援企画をしっかりやっていることが分かりました。例えば、企業や同窓会と連携して合同説明会を開催するなど。課題としては博士課程のキャリア支援は研究科が担当しているところが多く、キャリアセンターとどう連携するかといったことがありました。研究で忙しい博士課程の学生にどうキャリアの情報を提供するかも共通の課題でした。

6.留学生の支援
参加者全員が留学生を担当していますが、所属している部局・規模がさまざまでした。共通しているのは担当者が1人だけということ。課題としては日本語が得意でない学生への就職支援です。企業側が高い日本語能力を求めていること、留学生にも仕事をする上では日本語能力も必要だということを理解してもらうこと、忙しい留学生に効果的な日本語教育をするにはどうすればいいのか、といったことが話題になりました。日本の独特な就職活動を留学生に知ってもらうために、入学後最初のガイダンスで日本の就活について説明している大学もありました。

7.障がい学生の支援
発達障害の学生が増えているなかで、学生たちのキャリア支援には特段の難しさがあるとの指摘がなされました。障害者手帳を取得して支援を求める学生ばかりではなく、なんらかの困難さは抱えながらも診断を受けることなく就職活動に乗り出し、結果的にうまくいかない学生たち。このような学生の支援をどうにすべきかに議論が集中しました。本人の困難さに寄り添い丁寧に話を聞くなかで自覚を促したり、理解のある企業と連携したインターンシップを開発したり。学生たちの成長を促す取り組みを紹介しあいました。学生自身が困っている感覚を持っていない場合もあり、そうした学生の支援の難しさに頭を抱える現場の声が数多く出されました。

8.予算獲得(自己収入)
海外を含めた事例として合同企業説明会で企業から参加費を徴収する、寄付を集める、企業名をつけた建物や部屋の設置というネーミングライツが紹介されました。職員の方から出たのは学内合同説明会の有料化の方法に関する悩みです。大学のキャリア支援を外部に丸投げするのではなく、大学側がコントロールする必要があるといった指摘もありました。

分科会を通して分かったことは大学が違っても抱えている問題や悩みには共通点が多いことです。情報交換会全体で共有した問題や課題解決策は現場に戻って学生たちのキャリ支援に生かされることでしょう。