オツトメ先生の教室(下)若者が変われる3つの条件とは

やる気の引き出し方遠山 直(リクノアカデミック代表取締役)

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大学生の就職支援や企業の人材育成サービスを提供するリクノアカデミック代表取締役の遠山直さんの「オツトメ先生の教室」の3回目です。今回はこれからの社会を生き抜く若者たちはどうすれば変われるのかについてです。

想像力が育っていない若者たち

授業では失敗や可能性だけでなく、これからの社会で生きるために最低限必要な力についても話しています。現在の私のビジネスの現場に目を移すと、クライアントからよく相談される新卒者の課題は、「主体性がない」「クライアントとの関係構築ができない」「チャレンジ精神がない」といったことです。

私自身もサラリーマン時代の部下にもそういった課題を感じておりました。しかし、部下とのコミュニケーションを重ねるうちに根本的な問題はそこではないことに気づきました。彼らは言われたことは真面目にそつなくこなすのですが、言われたこと以上のことはしません。ここにこそ根本解決の答えがあります。

「彼らはしないのではなく、できないのではないか?」。そんな仮説を立ててみました。そうすると、自らがプラスαの仕事をすることでその後の仕事の進み方がどう変化するか、そこからどのような価値が生まれるのか、などの想像力が育っていないことがわかったのです。仕事ができる人の条件としてイメージが豊富であることと、それを共有・教示することができることを一例として説明しました。

時間、人、環境で変わる

多くの若者が伸ばせていないスキル、課題が浮き彫りになったのです。このようなスキルは一長一短に身につくものではありません。日々の学生生活の中で様々な人と出会い、多くの考え方に触れること、アルバイトという就業体験を複数のジャンルで体験すること、勉強会や交流会に参加して社会人との交流を増やすこと、それらの積み重ねがイマジネーションを可能にします。そして、それこそがAIにはできない能力なのです。

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「そんなこと言われても何からしていいのかわかりません」。学生からのこんな反論が何度もありました。そんな時は人が変わることができる条件を3つ教えるようにしています。「時間配分の変化」「付き合う人の変化」「環境の変化」です。この3つを変えると、人は大きく変わることができます。

寝る時間、起きる時間を変えてみる、新たな友人を作ってみる、働く場所や住む場所を変えてみる。そうすることで人の成長は加速していきます。私自身が変わった要因がまさにこの条件に合致しています。「何をしたら自分は変われるのか、目標が見つかるのか、そんな迷いや悩みがあるならば難しいことを考える必要はありません。この3つを変えてみてください。必ず突破口が見えてきます」と。

AI・ロボット時代に必要な力

もう1つ情報編集力について話すこともあります。『10年後、君に仕事はあるのか?』(ダイヤモンド社、藤原和博著)にも出てきますが、人には生きる力の三角形というものがあり、それは勉強を積み重ねることで得られる力である情報処理力、遊びや体験によってつく力の情報編集力、そして家庭教育がベースの基礎的人間力であると定義されています。

私自身もこれまでの生き方を通して感じていたことだったので、大いに共感することでした。そして、同書では、目の前に問題があった時にその解決策を考える力の7割が情報処理力で、後の3割が情報編集力であると同書にあります。そういった観点からも勉強して損はないでしょう。ただ、AIやロボットが人間の仕事をやってくれるようになるといわれるこれからの時代、情報処理力の比重は減ってくるでしょう。

では、これからの時代、どんな力が必要になるのでしょうか。結局は元に戻りますが、生きた経験(成功と失敗)になります。「色んな経験をして失敗しなさい」と口すっぱく言われた経験がある人はどれだけいるのでしょうか。世の中の変化に合わせて働き方や生き方は変わり、多様化します。そんな現代社会において、今よりも必要とされるのが、体験によって得られる情報編集力なのです。

だからこそ、若者たちの可能性を信じ失敗をさせるのです。学生が成長する環境に必要なのは「間違ってもいいんだよ」という土壌なのです。誰も最初はうまくできません。恥かきベソかき、トライアンドエラーを繰り返して成長していくものなのです。

こんな私の話でも、多くの学生が共感し、熱いリアペをくれます。それは特に、受験偏差値の低いFランクといわれるような大学に通う学生たちです。大学ネームに自信を持てない学生たちの可能性を信じ、これからも試行錯誤しながら若者たちと向き合っていくつもりです。これが私にとって生きた経験になるのです。(おわり)

プロフィール

遠山 直(リクノアカデミック代表取締役) 遠山 直(リクノアカデミック代表取締役) 中学卒業後、都内私立高校を2カ月で中退、東京少年鑑別所に収監され、建設業の職人(型枠大工)として6年間働き50人の職人をマネジメント。その後、大学へ進学。新卒でエレクトロニクス商社へ入社、2年目に万年赤字営業所の所長となり黒字営業所への転換、退社するまで黒字を維持する。現在は求職者の就職支援や企業の人材育成サービスを提供するリクノアカデミック株式会社の代表を務める。