令和3年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」(上)大学・企業の最新事例をオンラインで発表

オンラインセミナーリポート

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授業や就職活動、採用選考がオンライン化・多様化する中で、適切なキャリア教育・就職支援ができているだろうかと、試行錯誤する教職員のかたもいるのではないでしょうか。そんな教職員の皆さまの一助となるよう行われた文部科学省、就職問題懇談会、日本学生支援機構(JASSO)主催による令和3年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」(2021年6月30日開催)をリポートします。

「令和3年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」(中)コロナ禍で考える これからの留学生への就職支援のあり方」はこちら
「令和3年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」(下)JASSOインタビュー「大学教職員の皆さんは同じような悩みを抱えている」」はこちら

オンラインセッションは産官学の交流の場

今回はオンラインセッション「キャリア教育・就職支援の取組 事例紹介」で、大学・企業が発表した就職支援や採用活動などの事例の一部を紹介します。同セッションは24の大学・短大、大学院大学、企業、団体が事例を発表し、視聴者とオンライン交流するという内容でした。

大阪夕陽丘学園短期大学 ~コーオプ教育を取り入れた産学連携教育~

学びの真ん中に産学連携による人材育成を据える、大阪夕陽丘学園短期大学のキャリア創造学科産学連携キャリア創造コース。「学生の成長・キャリア形成をサポートし将来の可能性を大きく広げる」を目標に掲げ、21年4月に第1期生が入学しました。同コースはコーオプ教育(学内の学修と企業実習の融合)を取り入れた産学連携教育が特徴です。1年後期(10月~1月)と2年前期(4月~7月)に企業実習の機会を用意して勤労観・職業観を醸成し、即戦力となる学生の育成を目指しています。

1年前期は実習先となる企業の研究や実習時の目標設定を考えるグループワークを中心にした「プロジェクト演習Ⅰ、Ⅱ」を用意。担当する神殿織江准教授は「学生たちは企業についてとても熱心に調べたり、仕事に必要な能力を周囲にインタビューしたり、グループワークにいきいきと取り組んでいます」と、現在の授業の様子を説明してくれました。

r3jassorepo_1_1.jpg 企業実習のスケジュール例
実習先企業の担当者が大学で自社について説明する機会もあります。その際には学生が主体となって授業を進め、大学の正門まで担当者を迎えに行き、説明会の司会も務めています。受け入れ企業の1社であるナカザワ建販株式会社の福園亮佑さんは「先日の説明会では、学生の皆さんがとてもしっかりとした対応をしてくれ、数カ月前まで高校生だったとは思えませんでした」と振り返りました。

1年後期の実習は週3日で1社あたり1カ月、計3、4社で実習を経験し、2年前期の実習は1社で週4日約3カ月間の就業を有給で行うプログラム。実習期間は日報・週報・月報をノートに記し、大学に戻ったら授業、振り返り、現場で遭遇した課題の解決に取り組む予定です。「企業様には社内で幅広い仕事をさせてもらい、個々の仕事が何につながっているのかが分かるようにしてほしいとお願いしています」(神殿准教授)。

4月に始まったばかりの新しい取り組みは、夏休み明けに実習が始まります。「これから学生がどのように成長していくのかを考えると、ワクワク感が止まりません。過去の本人と比べてどれだけ成長するのかを見ていきたいですし、成長できるように励ましサポートしていきたいと考えております」。神殿准教授は2年後に飛び立つ新卒社会人の姿を思い描いていました。

静岡大学 ~障害学生の選択肢の拡大、「働きがい」へ意識を向ける取り組み~

就職・キャリア支援において、「大学が主体となって"学生と雇用側のマインドを変えたい"事例」を発表したのは、静岡大学学生支援センター キャリアサポート部門の宇賀田栄次教授。"マインドを変えたい"事例は2つあり、1つ目は発達・精神障害学生(グレーゾーンを含む)の就職の選択肢を広げる試みです。

「地方での障害者求人は非正規で軽作業の募集も多いことから、一般枠(正社員 総合職)か、障害者枠(非正規 軽作業)か、という二択で考える障害学生が多い現状があります。この二択から脱却し、学生が得意なことの活用、能力開発を前提とした求人を地域内にもっと増やしていきたいのです」(宇賀田教授)。

発達・精神障害学生は、一般枠と変わらない就労を希望しますが、雇用先に自分の特性を理解してもらうのが難しいという状況です。雇用側も、個別対応するケースが多く、仕事内容が事前に示されないので応募しづらい。双方にこうした課題があり、学生と雇用側とのマッチングが困難となっていると言います。

宇賀田教授によると、静岡県内で障害者の法定雇用率を達成している企業は約50%、静岡県の機関で約30%、市町で約70%です。県内各自治体の障害者枠の公開求人は少なく、あっても軽作業の求人が多いと言います。さらに、障害者雇用の割合は、身体障害者に対して精神障害者が企業では約20%、市町の機関では約10%しかないのが現状です。

こうした発達・精神障害者の雇用状況を変えるべく、県内の雇用関係部署と協議し、県内35のすべての市町に参加を呼びかけ「静岡県内自治体障害者採用説明・相談会」を2019年度から開催しています。参加する自治体、学生はまだ少ないですが、21年度に実施したアンケートから学生の満足度も高いことがわかっています。「この取り組みを続け、自治体が障害者の雇用を増やせば、民間企業の雇用も広がると期待しています」(宇賀田教授)。

2つ目の事例は「働きがい」について目を向けてもらう試みです。宇賀田教授は「昨今の大学生のニーズは、『給与が良い』『福利厚生の充実』など、働きやすさに偏重しています。それは最初の動機付けにはいいのですが、達成感や責任感など『働きがい』を感じることが大事です」と指摘します。

r3jassorepo_1_2.jpg 開催ごとに参加者が増えている「お仕事研究ナイト」
働きがいに目を向けるきっかけ作りを目的に、「お仕事研究ナイト」と題して、Zoomを使って学生と社会人が語り合うというオンラインイベントを実施しています。19時からのオンライン開催にすることにより、「自治体で働く人編」「民間企業で働く人編」「金融機関で働く人編」など、さまざまな職種の社会人の参加を可能にしています。登壇する社会人には、仕事を通して得られる働きがいや生きがいについて語ってもらっていると言います。

同イベントに参加した学生にアンケートを取ったところ、イベント参加前と参加後では、仕事や職場に求めるものとして「働きがい」を選ぶ割合が高まったと言います。参加者はどんどん増えており、学生が主体的に司会進行をするなど、開催ごとに進化している取り組みです。

富士通 ~オンラインインターンシップへの取り組み~

富士通はコロナ禍で実施したオンラインインターンシップについて話してくれました。人材採用センターの太刀川明さんは、京都からオンラインでの参加でした。太刀川さんが所属する部署は神奈川県川崎市にありますが、遠隔勤務制度を利用して21年5月から京都に拠点を移したと言います。

同社はオフィスへの出勤を前提とした制度を見直し、「時間」や「場所」にとらわれない、ライフスタイルに合った働き方を実現しているそうです。具体的には在宅勤務を基本として、通勤定期券も廃止。同社はホームページで毎月の出勤率を公表しており、21年6月の出勤率は17.4%になっています。

新しい働き方に積極的に取り組んでいる同社では、当然ながらインターンシップもオンライン開催です。20年度のインターンシップは、文系学生を対象にしたビジネス体感型『Field Learningコース』(5日間)と理系学生を対象にしたスキル実践型『Skill Challengeコース』(2週間)を用意し、全体で約330名の参加がありました。

従来の19年度までのリアルなインターンシップに比べて応募数も約2倍に増加。太刀川さんは「これまで研究や学業を理由に参加できない人がいましたが、オンラインになったことで参加を断念する人が減ったのではないか」と応募者が増えた原因を分析します。

学生の集中力を持続させるため、インターンシップを担当するメンターには参加学生に対して細やかなフォローやフィードバックをお願いしていると言います。さらに、学生と社員の親睦を深めるとともに社員の雰囲気を感じてもらうために、オンライン昼食会やZoom懇親会をプログラムに組み込んでいます。

発表終了後には、視聴者からインターンシップや在宅勤務に関する質問の手が次々にあがり、富士通の新しい働き方に感心する声も聞かれました。

ガイアックス ~起業したい学生向けの就職支援~

ガイアックスは、起業を志す学生に向けた、アントレプレナー志向学生向けサービス「Command″N(コマンドエヌ)」について紹介してくれました。就活ありきではなく、キャリアの選択肢や視野が広がるように、「事業作り」や「キャリア設計」のサポートやコンテンツを提供しています。

同社の管大輔さんはオランダで生活しながら、ガイアックスの事業本部長と新規事業責任者を務める傍ら、自分の会社も経営するなど、新しい働き方を体現しています。

r3jassorepo_1_3.jpg ガイアックスでは、学生の働き方の選択肢を広げ、かつ学生自らが意思決定できる支援サービスを提供
「Command″N」のサービスは、報酬付きのインターンシップ起業家育成プログラム「起業ゼミ」、実際に起業している学生の話を聞く「♯ShiftME~学生起業家」などがあります。

同社が大事にしているのは「学生の視野を広げること」「軸を決めること」。「雇用されずに自由に働きたいと思っている学生さんもいますが、実際にどんな選択肢があるか知らないことも多い。起業すること、フリーランスで働くこと、海外で働くこと、副業で働くこと、そうしたチャレンジや選択肢があることをイベントで伝えています。多くの選択肢の中から、自分の軸を持ってキャリアを選択してほしい」(管事業本部長)。

学生が視野を広げるためのサポートとして、オンラインキャリアセミナーを実施しています。これまで170人以上の社会人が登壇し、生き方や働き方について話しています。大学のニーズに合わせてセミナーを実施することもあり、例えばサイバー大学では毎月1回社会人ゲストが登壇したり、成蹊大学のグローバルキャリアセミナーでは、海外で働く選択について管事業本部長が登壇したりしたと言います。

このように、令和3年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」では、さまざまなオンライン化が進む中で、そのメリットを生かしてキャリア教育・就職支援をする事例を見ることができました。次回はコロナ禍で大きな課題となっている留学生の就職支援に関するセッションを紹介します。
(編集部 北原理恵、渡辺茂晃)

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■企業・団体 一般社団法人 産学協働人材育成コンソーシアム、株式会社会i-plug、株式会社エンカレッジ 株式会社ガイアックス、株式会社カイタックホールディングス、株式会社豊国、ケーブルテレビ株式会社、西尾レントオール株式会社、フォーシーズ株式会社、富士通株式会社、森興産株式会社