挑戦!リモートインターン(下)新しい働き方を学ぶ機会に

インターンシップの行く先

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一般社団法人産学協働人材育成コンソーシアム(CIAC)が実施したリモートインターンシップ。運営に携わった大学教職員の方々が振り返る舞台裏の第2弾は、リモートインターンシップの可能性と課題などについてです。

参加者

松高政さん(一般社団法人産学協働人材育成コンソーシアム代表理事/京都産業大学経営学部准教授) 座間味涼子さん(デジタルハリウッド大学キャリアセンター長) 河瀬恵子さん(横浜市立大学留学生就職支援コーディネーター)


リモートインターンシップの可能性

河瀬 首都圏では新型コロナウィルスの感染拡大が猛威を振るい、講義もオンラインへ移行していたため、インターンシップもリモート化を検討せざるを得ないと考えていました。同時に、今回の企画では、全国の大学、企業が参加するという点にリモートの可能性が秘められているとも。インターンシップをリモートでやることについては賛否両論ありますが、これからの新しい時代のリモートワークを就業前に学ぶことは学生にとっても非常に価値があることでしょう。

座間味 対面インターンシップの良さを改めて感じましたが、リモートインターンシップに大きな可能性があることも分かりました。コロナ禍が収束してもリモートインターンシップは今後も一つのあり方として続いていくと思います。対面とのハイブリッド型とかやり方は色々ありますが、リモートのインターンシップの可能性を実感できたことが、今回の一番大きな収穫です。

河瀬 学生にとって、他大学の学生、全国の企業の方々と出会えたことの効果はとても大きかったですね。これはリモートで進行することの醍醐味ですが、一大学、一企業では成し得なかったでしょう。学生の個性も大学ごとに違い、学生も楽しかったのではないかと思います。

松高 河瀬さんには、事前学習でマナー講座もお願いしました。

河瀬 リモートインターンシップでのマナーとは何だろう、と深く考えさせられました。準備にあたり海外の資料も参考にしたのですが、日本とはインターンシップの目的や、受け入れ側の企業文化も異なるので、海外の手法をそのまま使うことは難しく、結局、今回は日本ならではのオーソドックな内容に落ち着きました。また、企業に対するメールの書き方、御礼の出し方については、大学によって指導内容が異なるため、いかに齟齬が生まれないようにするのかという点に気を配りました。

松高 私も海外の資料を色々と探しましたが、学生向け、企業向け、大学向け、どれもとても充実していましたね。

河瀬 今回のような短期プログラムでは、海外の先行事例をそのまま適用できないとしても、オリジナルのTipsをつくることで成果を残せたのではないかな、と反省しているところです。

「リモートワークとしての就業体験」はリモートでしかできない

松高 私が今回の企画でずっと考えていたことは、「リモートインターンシップで、結局、何がしたいのか? 何のためにするのか?」ということでした。「リモートで就業体験ができるのか?」という意見もたくさんいただきました。コロナ禍でリモートワークが増えてきて、「リモートワークとしての就業体験」って、リモートでしかできないよね、って思うようになったんです。

つまり、リモートワークの職場ってどこか? 自宅が多いじゃないですか。そしたら、リモートワークの就業体験場所って、自宅なわけです。オフィスではないですよね。「自宅での就業体験」が、「リモートワークでの就業体験」になるんです。これまでのオフィスでのインターンシップとリモートでのインターンシップは別物なんです。リモートインターンシップはこれまでの対面インターンシップの代わりではなく、リモートワークという新しい働き方に対応した、新しいインターンシップのかたちなのです。リモートインターンシップで、対面での就業体験を求める必要はないんですね。

河瀬 なぜインターンシップをリモートでやるのだろう? と私もずっと考えていました。コロナ禍が終わったらリモートを止めるということでもないですよね。リモートワークを本気でやっていこうという企業と、そこに関心をもつ学生が新しい働き方を学ぶ。そのような事例はまだ少ないかもしれませんが、そこに専門人材が絡んで新しいプログラムを考えていくことは、ワクワクすることだし、同時に大きな可能性も含んでいます。

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座間味 コロナが落ち着いてもリモートはどんどんと加速していくでしょう。コロナ以前でもDX(デジタルトランスフォーメーション)はキーワードになっていましたし、社会がどんどんと変化していく中で、インターンシップも進化していく必要があります。もちろん、対面でしか得られない経験もあるので、それぞれの良い部分をどう掛け合わせていくのか。インターンシップのトランスフォーメーションが必要になってくるはずです。

来年度に向けての改善点や大事なこと

河瀬 今回は、就業先の企業を事務局で振り分けましたが、学部3年生については興味のある業界を深く知りたいという志向があるかもしれません。逆に支援する側の大学教職員としては、自身の志向とは異なる業界へ学生が目を向けるきっかけにしてほしいという想いも持っているでしょう。そこは今後きちんと議論していく必要があります。思い切って、学部1、2年生をターゲットに絞り、働くとはなんだろうと省察する機会にしたほうが有効なのかもしれません。

多様な現場の第一線で汗をかく人々の働き方やキャリア意識をインタビューすることで、自分なりの働くことについての定義を深く考えていくというコンセプトもありだと思いました。リモートのデメリットの一つに、職場の雰囲気といった「会社のリアル」を体感することが難しい、という点が挙げられます。だからこそ、異なる職場で働く複数の社会人から、仕事や生き方に対する想いに直接触れさせる仕掛けが必要だと感じました。

座間味 1年生、2年生ならいいかもしれませんが、3年生も多かったので、興味・関心のある業界に行かせてもいいかなあと思いました。今回の「生き方・働き方」をテーマにする内容と業界について考える内容と2つのタイプのプログラムがあってもいいのかもしれませんね。学生からしてみると、大学で学んだことが仕事でどう活かせるのかを考えるきっかけになります。企業から与えられたテーマもそれに関連していると思うので、学生の成長にもつながるようなテーマ設定、企業への割り振りもあっていいのではないでしょうか。

remotointernship3_1.jpg 昨年開催された「インターンシップ専門人材研修会」

安心安全な場であることをどう醸し出すか

松高 中途半端な内容だと、結局、学生、企業ともに何を目指しているのかよく分からなくなりますね。まだまだ工夫、改善する余地はたくさんあります。だからこそリモートインターンシップには可能性も大きいのだと思います。

河瀬 もし今後も実施するのであれば、事前準備が非常に大切ですね。オンライン運営に伴うトラブル想定も同様。企業、学生、教職員、それぞれ立場が違うので、その場が安心安全な場であることをどう醸し出すかは大事になります。実際、今回のプログラムも、もし自分が学生の立場で、一方通行なオンライン講義を受けていたら、どれほど退屈になるだろうかということを意識して場を創っていきました。

松高 その通りですね。誤解を恐れずに言えば、対面インターンシップであれば、「職場」という学生にとって目新しい場所で、「社員」という異質な人と接するだけで、何らかの気づきなり、経験をして、それだけで満足度も高いでしょう。しかし、リモートでは、そう簡単にはいかない。"画面越し"の活動や行為それぞれに目的、意図を持たせなければ、「就業体験」ならではの学びにつながらないですからね。

座間味 就業実習中は、企業によってやり方が違っていましたが、朝と夕方だけ全員揃うという企業もあれば、朝から夕方までずっと繋いでいる企業もありました。それぞれに良い点も改善する点もあったと思うんです。今回は初めてだったので、やってみないと分からない点がありましたが、どのようなやり方がいいのか学生の意見も聞きながら進めていく必要があると思います。それと、今回は教職員がかなり関わっており、そのために企業の満足度も高かったと思いますが、どこまで関与していくべきか、そして今回は企業数も少なかったですが、これが増えていったらどこまで関われるか、その点は悩みどころだと思います。

松高 やってみて分かったことがたくさんありましたらから、それを蓄積していき、企業側にフィードバックしていく必要がありますね。

座間味 今回は初めてということで、参加大学も皆さん熱心で協力的でしたが、今後、参加大学、企業が増えてくると、どうやって参加意識や目的意識を維持していくのかという課題が出てくると思います。

松高 できれば横展開し、参加大学も企業も増やしていきたいですが、そのような課題が発生することも十分考えられます。そのバランス、ジレンマをどう乗り越えていくのか、大事な点ですね。

河瀬 この企画は、インターンシップ専門人材が関与する大学教育としてのインターンシップだということを明確に打ち出すことが必要かもしれません。その趣旨に賛同いただける企業に参加いただくことが重要ではないかと思います。

松高 やはりインターンシップ専門人材の存在、役割が重要になってきますね。本日はお忙しいところありがとうございました。

写真素材/PIXTA

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未来を拓くインターンシップ

松高 政 (著) 一般社団法人産学協働人材育成コンソーシアム (監修)

インターンシップを大学教育として位置付けていていくためには、現場で実践を担う専門人材と、学長のトップマネジメントによる全学的、組織的な取組が不可欠である。本書は「インターンシップ専門人材」による実践レポートと、「大学改革としてのインターンシップ」に取り組む先駆的な大学の学長へのインタビューから構成。大学教育に携わる者、受入企業の担当者は必読。
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