2019年12月 「ブラック企業」って何なんだろう?

意識普通系な僕の就活日記@shimi(明治大学商学部)

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就活をするにあたって絶対にしたくない間違い。その一つが「ブラック企業」への入社である。毎日の残業時間が長くて有給休暇も取れないような「ちょっとありそうな職場」から、「キツイ・汚い・危険」の3Kが整った漫画「賭博破壊録カイジ」に出てくる「地下世界のような職場」まで、「ブラック」が意味する範囲は幅広い。

「ブラック企業」に対する明確な定義はインターネットで調べても確認できず、何の基準を満たしたら「ブラック企業」になるのかは曖昧なままだ。この記事を書くために突き詰めて考えてみたのだが、それは結局のところ、個人の主観による影響が大きいように思える。

パチンコ店のインターンに参加した友人

大学の友人に、12月になってから就活を始めた人がいる。彼とは同じ授業がきっかけで話すようになり、それからお互いの進路について意見交換するようになった。彼は企業説明会やインターンシップに参加した経験が最近まで皆無だったので、人並みに参加していた僕のことを「すごい、尊敬する!」ときれいな瞳で褒め称えてくれた。おだてられて調子に乗った僕は、インターンシップに参加すれば、自分にとっての貴重な経験になると、彼を熱く口説き、絶対にインターンシップに参加することを約束させた。あの時に見せた彼の笑顔があまりにも眩しくて、僕はそれを今でも鮮明に覚えている。

それから数日経ち、彼と授業で会った。以前に見せたようなあの明るさは微塵も感じられず、頬が少しだけ痩せこけた気がした。授業中にもかかわらず、顔を下に向けてじっとしたまま固まっている。僕は心配になり、彼に声をかけた。

僕「大丈夫? 元気ないけど」
友人「うん。実はこの前、ある企業のインターンシップに参加したんだ」
僕「え、約束通り行ったんだ! どうだった?」
友人「それが、よくわからなくなっちゃって...」
僕「あーわかる気がする。企業が多すぎて、自分に合ったものが何か悩んでいる感じかな。ところで、何系の企業?」
友人「ギャンブル...」
僕「へっ?」

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詳しく話を聞いてみると、ある日突然、僕の友人は登録していた就活サイトから電話がかかってきて、パチンコ店のインターンシップの参加を勧められたという。促されるままに承諾し、気軽に参加したらしい。貴重な経験として試しに行ってみようと。物怖じしない明るい性格のせいか、今では順調に選考が進んでいる。悩みというのは、自分の「やりたいこと」と異なる業界に着々とのめり込んでしまい、このままでは「なりたい自分」とかけ離れてしまうのではないかという、一種の葛藤にあった。

僕「やっぱり、パチンコ店ってブラックなのかな」

何の根拠もなく、ただ勝手な偏見だけで決めつけていた自分に嫌気がしたが、それでも好奇心の方が勝ってしまい、聞かずにはいられなかった。パチンコで遊んだ経験がなかったことも、僕を質問に駆り立てた原因かもしれない。

友人「そんなことはなさそうだったよ。オフィスはキレイだったし、給料も高めだった。強いて言うなら、社員さんの歯茎が黒かったくらいかな。あ、全員じゃないけどね」

パチンコ店は「ブラック企業」だという、僕が抱えていた固定観念は偏見だったようだ。誰が判断するかによると思うが、インターンシップに参加した本人が「違う」と言うのなら、彼にとって現時点では「ブラック企業」ではないのである(入社後にブラックだと思う可能性はあるが)。そして、社員の歯茎の黒さも、その企業がブラック企業になる直接的な要因にはならない。

商品・サービスが好きな人にとってはホワイト企業

友人との会話で興味深かったものがもう一つある。それは、パチンコ店のインターン参加者が、パチンコ好きな人ばかりだったということだ。普段からパチンコで遊んでいて、玉のはじき方を熟知していたり、どの台を選べば当たりが出るのか、目星を付ける方法を知っていたりと、なかなかの手練れがそろっていたらしい。

一方、僕の友人はというと、パチンコへの興味が全くなかったので、操作方法を一から丁寧に教えてもらっていた。明らかにほかの参加者と比較して、パチンコへ向き合う姿勢がなってないが、本人の興味がないのなら仕方がない。それよりも、ほかの参加者のパチンコへ注ぐ熱量が、そのまま仕事の姿勢に反映されるのだとしたら、それは、その人にとってのやりがいにつながるのではないだろうか。

ここまで考察していくと、「ブラック企業」の存在自体が不確かなモノのように思えてきた。労働基準法が定める範囲内であれば、業務内容がどれだけ過酷でも、労働者がやりがいを見出して仕事に満足感を得ていたら、それはもう「ブラック企業」ではない。バリバリ働けて、日々の成長を目的に入社した新入社員は、厳しい研修内容に弱音を吐きながらも、裏では自分の成長を実感しているかもしれない。パチンコ店も、パチンコが好きな人にとっては最高の「ホワイト企業」になり得る。誰にとっての「ブラック企業」なのかを考慮して、反対に自分にとっての「ホワイト企業」を見つけ出すことが、これからの就活には大切なのかもしれない。

プロフィール

@shimi(明治大学商学部) 趣味は海外サッカー観戦、TWICE。アルバイトは居酒屋。