バカヤロウ。
学生の分際で順風満帆なライフスタイルを送りやがって。就活を終えて働いていたら、いつの間にか結婚していて奥さんが手料理を作ってくれる......。そんな大学生いるか? まったく学生A、羨ましすぎるぞ。というか学生Aって誰だ。
不安から周囲と比べる自分
考えれば考えるほど、周りと比べてしまう自分がいる。就活強者の方々はきっと、僕が手も出せないような企業を受け、悠々と内定をいただいているのだろう。その中には学生A みたいな天才もいるわけで、一般の人よりも遥に人生を充実させているはずだ。しかし、こんな架空の人物の妄想ではなく、現実世界の友人が一歩先へと進んでしまったらどうだろう。気の合う友人に置き去りにされたような感覚。同じことをしていてもどこか違う気がして、何をやっても空回りしてしまう。だめだ、もうこれ以上考えるのはやめにしよう。緊急事態宣言の延長を受け、大学の授業がオンラインへと移行した。これによって、PCを使えば自宅から好きなスタイルで授業が受けられるようになった。わざわざ早起きして満員電車にタックルを仕掛ける必要性はもうない。大学に行く手間が省け、時間に余裕のある生活が生まれたはずだが、就活生の僕の心に余裕はなかった。
朝、洗面所で歯を磨きながら鏡の前で自分の顔を見つめる。改めて成長したな、と思う。幼少期は丸々としていた僕の輪郭は、今では面長でゴツゴツした頬骨まで突起している。顎には硬い髭を蓄え、触るたびにジョリッという効果音が鳴る。そして冷静に考える。俺、これからどうなるんだろう。
家で何気なくテレビを点ける。画面の中のお笑い芸人たちは、巧みなトーク力で会場にいる観客を笑わせている。特別ゲストで登場した美男美女の俳優たちが煌びやかな私生活をオープンに曝け出すのは、見ている側としても清々しい。それでも、彼らをどこか自分と比べている。なぜだろう。あまり上手く笑えない。
考えないように意識しても、また頭の片隅で考えている。頭に過ることは千差万別で、業界、職種、給料、福利厚生、将来の夢、結婚など、手当たり次第に別のことを考えている。自分は何にもなれないのではないか、これ以上前へ進めないのではないか、といった不安が度々自分を襲う。
もう1度夢の実現に向けて就活を
そしてある時、僕はこの不安には二つの原因があることに気がついた。他人と比べることと、自分の自信のなさである。他人の目を気にして、自分のやりたい仕事を蹴ってまで見栄を張って生きたいだろうか。逆もまた然り。他人の状況と現在の自分を照らし合わせ、人よりも良い位置にたどり着くために、毎日エネルギーを消耗させたいだろうか。そして、本当はこれがやりたいんだ、と叫んでいる内なる声に耳を傾け、全力で向き合う自信を持てているだろうか。そうだった。いつだって僕は自分の内なる声から耳を塞いできた。なぜなら、夢を追いかけることは、他人からの目線や失敗する可能性に押しつぶされそうになるほど怖いものだからだ。決められたレールの上を進むことはどんなに楽だろう。しかし、後になってあの時の夢を追っていれば、なんて後悔したくない。
できる。僕ならできるんだ。強く信じれば、それだけ希望は自信と力になる。前を向き、夢を追いかけよう。夢の実現のために努力している時の僕は、恐れはあってもストレスや不安はなかった。
ところで僕の夢は何か。それは学生Aのような生活だった。学生Aは僕の夢から現れた幻の存在であり、願望を具現化した先に見える一筋の光だった。そして彼の妻は僕が求める運命の人である。ああ、早く就活を終わらせて彼女のポトフが食べたい。その前に彼女はどこにいるのだろう。
皆さん、苦しい時期ですが、夢の実現のため就活を頑張りましょう。希望だけは失わないように。たまには夢を見ても良いと思います。
プロフィール
@shimi(明治大学商学部) 趣味は海外サッカー観戦、TWICE。アルバイトは居酒屋。