2020年6月 合格でも不合格でもない「保留」の連絡

意識普通系な僕の就活日記@shimi(明治大学商学部)

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緊急事態宣言が解除され、少しずつですが今までの日常を取り戻しているように感じます。就活も自粛の緩和を受けて、今まで見合わせていた企業が採用活動を再開するなど、前向きな動き出しが見られ始めました。僕の場合は、最終面接はウェブ上での対応ではなく、オフィスや社員の雰囲気がわかる対面で行いたい、という企業側の思いから、数社の選考は今月には受けられる予定です。前例にないウェブ面接やスケジュールのズレに戸惑うこともまだありますが、一歩ずつ着実に前進しています。

就活は恋愛に例えられるが......

就活はよく恋愛に喩えられる。企業を好きな人に見立て、就活生の僕は熱い思いを伝えに行く。例えば、「あなたの志望理由は何ですか?」という質問は、企業への愛の深さを試されている、といっても過言ではないだろう。この場合は、「御社に入れば自分のやりたいことができて、社会貢献ができて、やっぱり本気で御社のことが大好きだから」という想いの丈を伝えられれば確実に通るはずだ。企業側に「あれ、そこまで言ってくれるなんて、もしかしてウチのことが第一シ・ボ・ウ?」と思わせられれば、しめたものである。それでも、僕は愛を伝えるのが苦手なのであった。

その理由は2つある。一つは、第1志望の企業は複数存在してはいけない、という謎の美意識があるからだ。どんなに多くの企業の選考に進んだとしても、最も志望している企業は相対的に見て一つしか存在しないはずで、どの企業にも「御社が第1志望です」と伝えていては嘘をついていることになる。

これが恋愛だったら大変だ。連絡先を知っている色々な女性に告白を迫り、返事がもらえればその中から一番条件の良い人を選ぶことになる。そんなことをしている人間は間違いなく「浮気者」のレッテルを貼られ、女性から煙たがれる。やはり心から好きになる女性は一人しかいないはず、というのが理想的な考え方で、同時に複数の女性を愛してはいけないのだ。そうか、これだから僕は就活に違和感があったのか。自分に正直になって本気で好きな企業を一つに絞り、当たって砕けに行こう。僕はただ純粋に想いを伝えたいだけなのだ、と。危険すぎるわ。

口ベタ過ぎて「愛」が伝わらない

もう一つは、口ベタ過ぎて企業への愛が伝わらないからだ。誰が聞いてもこれは致命的な欠点だと思う。これも恋愛に喩えよう。恥ずかしながら僕の恋愛経験において、異性に自信を持って告白というものをできた試しがない。大学2年生の時に想いを寄せている女の子と二人で遊園地に行ったことがある。

久々の遊園地に舞い上がった僕は、手当たり次第に目についたアトラクションに乗り込み、力の限りはしゃいだ。ジェットコースターや観覧車、それからメリーゴーランドなど、遊園地の定番なアトラクションは全制覇したと思う。一番楽しめたのはジェットコースターで、何度も乗り込んでは同じコースをグルグル回った。

遊んだ後はさすがに疲れて、近くのベンチで休むことにした。静かに二人で腰掛けているこのタイミングこそが、想いを告げられる絶好の機会だった。後にも先にも、告白できるチャンスは今しかない。僕は覚悟を決めた。本気だと相手に伝わるように、彼女の目を真っ直ぐに見つめる。気持ちに反応して心臓の鼓動が早くなった。そして息を吸って一言。

「アンタのことが好きだワ」

オネエ口調になっていた。想定していたよりも女々しい声が響いたと思う。本来なら、ここは男らしく「好きです。付き合って下さい」と格好良く決めたいところだった。それにしてもアンタって誰だ。名前で呼べ。自分に対する自信のなさから、恥ずかしさを誤魔化すために咄嗟に口から出てきた単語がアンタだったのだ。嗚呼、穴があったら埋まりたい。

「保留」って、なんだ?

僕の口ベタは、就活でも発揮される。特に困るのは、最終選考に進む意志があるかどうかを聞かれたときの思いの伝え方だった。企業側は就活生の内定辞退を防ぎたいので、内定を出したら受諾してくれるか、と詰めてくる。他の企業の選考状況も聞いてくるため、意志がブレると、「まだ考え中です」などと口を滑らせかねない。ここでは「御社を志望しているので、最終選考に進みたいです」と自信を持って言いたいところだ。僕は企業の選考を受けていて、この意思表示ができたと思っていた。面接から1週間ほど経ち、企業から届いたメールを開封すると、そこには「保留」の2文字があった。

理由を尋ねると、例のウイルスによる経済不安の影響で採用枠が減ってしまい、最終選考に進める人数を制限しているとのことだった。内定辞退者や最終選考を通過できなかった人が出た場合のみ、僕は召喚されるらしい。「お祈りメールを送り、不採用の通知を出すにはもったいない人材だと判断したため、このような立場とさせていただきました」と言われても、全然すっきりしない。

決め手を尋ねると、志望度の弱さだと告げられた。意識していなかったが、ここでも女々しい自分が出ていたのかもしれない。自分の気持ちを正直に伝えられる能力は、絶対に磨いた方が良いと実感した瞬間だった。

プロフィール

@shimi(明治大学商学部) 趣味は海外サッカー観戦、TWICE。アルバイトは居酒屋。