キャリア教育・就職支援担当者調査(上) 22年卒の就職環境は悪化でも「リーマンまでは行かない」が半数超 

漂流する就活

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2021年卒の就職状況は売り手市場から一転、買い手市場に。さらにはオンライン就活・オンラインインターンシップ――。急変する就活環境の中で、これまでキャリエデュでは、企業の採用状況や学生の視点などから、今後の就職支援のあり方を紹介してきました。今回はキャリエデュで就職支援やキャリア教育を担当する教職員の皆さんにアンケートを実施しました。その結果から22年卒の就職環境や就活支援について紹介します。

22年卒の就職環境は「悪くなる」が9割弱

新型コロナウイルスの収束が見えぬまま進んでいる2022年卒の就職活動。教職員の皆さんは22年卒の就職環境をどのように見ているのでしょうか。22年卒の就職環境が「21年卒に比べてどうなるか?」という質問への回答は、「やや悪くなる」が68.8%、「かなり悪くなる」が19.5%と、「悪くなる」の回答は合わせて88.3%にも上りました。

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リクルートワークス研究所が12月21日に発表した「ワークス採用見通し調査(新卒:2022年卒)」でも、前年と比較して、新卒採用数が「減る」と回答した企業は11.6%で、「増える」と回答した企業(7.7%)を上回りました。また、現時点で「わからない」という企業も前値よりも6.4ポイント多い26.1%と、今後も「減らす」企業が増える可能性はあります。

22年卒の就職環境が「悪くなる」と回答した方に、2009年のリーマンショック後の就職氷河期との比較を聞きました。「リーマンショック以上に悪化する」は10.4%で、「リーマン並み」が32.8%、「リーマンほど悪化しない」は56.7%という結果になりました。21卒よりも悪くなるものの、リーマンショック後ほどの落ち込みにはならないと見ている担当者が多いようです。

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「やや悪くなる」「かなり悪くなる」と回答した理由は、コロナによる企業の業績悪化や「オリンピック特需が終わる」「(企業や就職情報会社から)採用数を減らすと聞いている」など、企業側の要因を挙げる声が多くありました。また、学生側の要因としては「学生の活動量減少」「公務員志望者増によって落選組が増える」「ITリテラシーの低い学生はオンライン対応で不利になる」「学生が大学に来ないために周囲の状況がわからず就活に乗り遅れる学生が増える」などがありました。

3年生は「ガクチカ」のネタがない!

「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を書けない学生が増えるのではないか」と心配する声もありました。サークル・部活動では、3年生が中心になって活動することが多く、その3年の大事な時期にコロナの影響で活動できなくなりました。平時でもガクチカに苦戦する学生は多いものです。22年卒の学生にはガクチカの見つけ方のアドバイス重要になるでしょう。

ただ、ガクチカもありますが、22年卒向けの質問では「コロナで大学に行けなかった時期の過ごし方」に関する質問が増えるのではないかと思われます。コロナによって社会人の働き方を変えることを余儀なくされました。突然の変化の中でも、うまく順応して成果を上げ続けた人と、そうでない人が出ました。これからは変化が激しく予測不能なVUCA時代と言われるなか、コロナのような、まさに予想できない事態にどう対応し、乗り越えたのかは、これからビジネスパーソンには必要な素養になります。

22年卒への支援は?

22年卒の就職環境の悪化に備えて、各校ではどんな就職支援策に力を入れようとしているのでしょうか。最も多かったのは「業界・企業研究講座」(62.3%)で、「学内企業説明会」(58.4%)、「オンライン就活対策講座」(51.9%)が続きました。企業とのリアルな接点が不足することによって業界・企業理解が不足することや、一部人気業界での採用抑制による志望業界の変更を促すために、業界・企業研究講座が最も多くなっているのでしょう。また、採用減に備えて自校の学生を採用する意欲の高い企業との接点を作るため、「学内企業説明会」に力を入れるのだと思われます。オンライン就活対策も新たな採用選考対策として徹底して取り組む姿勢がうかがえます。

「企業との接点不足からミスマッチ増となり、その結果早期離職者が増える」ことへの対応も課題としてありました。自校の学生を採用する意欲の高い企業との接点を作るために、「学内企業説明会」に力を入れることを考えていると思われます。オンライン就活については、学生だけでなく教職員もオンライン慣れする必要性を課題として挙げる担当者が多かったことからも分かります。

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企業への要望 選考の「オンライン継続」と「リアル再開」で分かれる

最後に、22年卒採用選考についての企業側への要望を紹介しましょう。当然ながら「採用減や採用中止」は避けてほしいという切実な声が多く出ていました。意見が分かれたのはオンライン選考についてです。地方の大学からはオンライン選考の継続を望む声が多くありました。

理由は新型コロナの感染予防もありますが、多かったのは金銭面などの学生の負担軽減や機会の公平性の確保といった観点からです。地方の学生が就活のために時間とお金をかけていたことが、オンラインによって解消されたメリットは大きかったのでしょう。都市部の大学からは「最終面接ぐらいは対面で」「学生をじっくり見てもらえば良さが分かる」という意見もありました。どちらももっともな意見です。企業は状況に合わせて対面とオンラインの使い分けを求められています。

「3月広報解禁、6月選考解禁」には、実際のスケジュールとの乖離をなくしてほしいという声も多く見られました。こちらも「スケジュールを守ってほしい」と「本当のスケジュールをオープンにしてほしい」の2つの意見が出ました。また、スケジュールについてはインターンシップ経由の早期選考が就活の早期化に拍車をかけていることに懸念する担当者もいました。

【調査概要】対象:キャリエデュ会員及び全国の就職支援・キャリア教育担当教職員 調査期間:2020年11月24日~12月8日 回答者数:77人・76校(大学、大学院大学、短期大学、専門学校)
写真素材/PIXTA