キャリア教育・就職支援担当者調査(下) コロナ禍での就職支援の課題は「変化への対応」

漂流する就活

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前回のキャリア教育・就職支援担当者調査(上)では、コロナ禍で就職支援に奮闘する教職員の皆さまからのアンケートを基に、22年卒の就職環境などについてご紹介しました。今回は21年卒の就職支援の現状と今後の課題などを見ていきます。

12月時点で就活中の学生 昨年比「多い」が6割

アンケートを実施した12月上旬、就活している学生が昨年と比べて多いか少ないかを聞いたところ、「非常に多い」が6.5%、「やや多い」が55.8%と、「就活中の学生が多い」との回答が6割以上となりました。

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昨年よりも就活中の学生が多い主な理由としてあがったのは「企業の採用数減」「学生の活動遅れ」です。企業の採用数減に関連して、「志望業界を切り替えることができない学生が存在した」「特定業界(航空、旅行、ホテルなど)を志望する学生への支援が課題」といった、コロナ禍での特徴ともいえる状況が見えました。

志望業界・企業に内定しなかった学生がどう方向転換を図るかは例年の課題ですが、21年卒の場合、「合同企業説明会の参加機会が減少したため、偶然的な企業との出合いが減少」という声に代表されるように、企業を知る機会もグッと減りました。就職活動に行き詰った学生の方向転換がより難しくなったことがうかがえます。

「学生の活動遅れ」については、就活スタートの合図となる合同企業説明会や学内セミナーの中止、緊急事態宣言発令による外出自粛が大きく響きました。ただ、「社会の動向に対して疎く、売り手市場のままであると勘違いをしている様子がうかがえる」「緊急事態宣言明けに、企業の動き(採用活動再開)を敏感にキャッチできた学生は良かったが、そこで動けていなかった学生に未決定者が多い」など、情報収集力による差も見られました。

21年卒は「オンライン」での就職支援が9割超

21年卒の就活生を対象にした、夏休み前と夏休み後の就活支援方法は、どちらの時期も9割以上の大学が「オンラインで実施」していました。「対面で実施」は、夏休み前の約5割から夏休み以降は8割にグッと増えました。新型コロナの感染者が減った時期でもあり、対面での手厚い支援をする必要もあったと言えるのでしょう。オンラインでできること、対面でしかできないことを使い分けながら就職支援にあたっているようです。

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オンラインのメリット、デメリットは?

就活支援の実施方法については約95%が「オンラインで実施」と回答しています。オンラインによる就活支援で明らかになったメリット、デメリットを自由回答から見てみましょう。

メリットは、新型コロナの感染リスクの低減はもちろんですが、「登校していない学生のサポートが可能」「複数の学生に、同時に伝えたい情報を配信できる」「学生が相談しやすくなった」「ガイダンスや説明会の参加者が増えた」などが挙がりました。場所を選ばずに実施できるオンラインの導入で、より多くの学生が就職支援を受けられるようになったようです。

デメリットは「学生の個性、雰囲気などノンバーバルの部分に現れる感情などが読み取りにくい」「(セミナーなど)学生の反応が把握しづらい」など。学生の様子や理解度を確認しながらコミュニケーションを取ることの難しさが課題のようです。

また、メリットとして挙がっている事柄がデメリットとなっていることも多く見られました。「(イベントなど)気軽に参加できる反面、キャンセルが多く参加率が低い」「限られた学生の対応しかできない」「説明会のみ参加するため、面談への誘導や声掛けができない」などです。

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21卒 就活支援を通して感じた課題は?

オンラインを駆使した21卒の就活支援の課題についても聞きました。最も多かったのは、学生の「2極化の拡大」で、「オンライン化により積極的に情報収集を行う学生と、なかなか動けない学生に分かれた」といった声です。学生自身の問題もありますが、動けない理由はさまざまです。「コロナ禍においても状況に応じて柔軟に活動できた学生とそうではない学生で、結果が2極化した。後者は必ずしも本人の意欲や柔軟性だけでなく、コロナ禍における経済環境、ネットワーク環境など、多様な要素も影響している」といった声がありました。

就職支援担当者側としての課題では、「学生の状況把握が困難」や「変化への対応」が挙がりました。「学生の動きが掴みづらく適切なサービスができなかった」「コロナ禍で、学生生活の環境がまったく変わってしまい、これまでの価値観のみに頼った支援では不十分」「選考開始時期の多様化に対する対応と指導」などです。

コロナ禍では、「就活以前に『心が折れて』しまい、家にこもりがちな就活生が増えた」「オンライン授業のため、周囲の友人の就活状況がわからず、少なからず学生が孤立してしまった」といった学生の対応も求められているようです。

日経HRが就職活動を終えた21年卒内定者に行ったアンケートでは、大学の就職支援で役立ったこととして、最も多かったのは「自己分析」の講座でした。急変する環境の中で、キャリア観が変化し、会社に頼らずに「自分の能力を磨く大切さを感じた」という学生も多く見られました。

就職環境は急変し、学生の生活環境もさまざまな理由で変化しています。前回の「キャリア教育・就職支援担当者調査(上) 22年卒の就職環境は悪化でも「リーマンまでは行かない」が半数超」でも書かせていただきましたが、予想できない事態に対応し、乗り越える力をどう育むかが大きなポイントといえるでしょう。