これからの就活ルール(4)タスクフォースでは何が決まるのか?

漂流する就活渡辺茂晃

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今後は何が決まり、何が決まらないのか?

提言には「今後の具体的アクション」として、採用とインターンシップについては【採用形態の変化への対策検討のTF(タスクフォース)】【キャリア教育/インターンシップ・プログラム開発TF】で議論されることになります。それぞれの目標を見ながら、どのような方向で進むのか考えてみます。

「これからの就活ルール(1)新卒一括採用から通年採用へ?」はこちら
「これからの就活ルール(2)本当に採用するのか? 留学生と文系院生」はこちら
「これからの就活ルール(3)インターンシップ=就業体験はどこへ?」はこちら

【採用形態の変化への対策検討のTF(タスクフォース)】
■目標
今後の採用形態の変化に、学生、企業、大学が混乱なく移行するために必要な方策の検討
(「中間とりまとめと共同提言-概要-」より)

目標にある「今後の採用形態の変化」は、おそらく通年採用を念頭に置いていると思われますが、「通年」が何を指すのか、マスコミの報道でも混乱が見られます。この点については経団連が6月25日に開催した「Society 5.0時代の大学教育と採用のあり方に関するシンポジウム」で、今後の採用とインターンシップのあり方に関する分科会長の土屋恵一郎明治大学学長が「企業が新卒一括採用をやめることはありえない。ある種の誤報。通年採用は卒業後の採用活動。このことは企業も大学も合意している」と強調しました。

おそらくこの案を中心とし、現状でも実施されている夏・秋採用が追加されるといった内容ではないでしょうか。ただし、大企業の多くが夏・秋に採用を続けて内定を出せば、春の大企業の採用終了後に内定を出す中堅・中小企業の内定者を奪う可能性があります。企業側は経団連であり、中堅・中小企業が加盟する日本商工会議所は協議会には入っていません。この点をどう配慮するのかがポイントになるでしょう。

【キャリア教育/インターンシップ・プログラム開発TF】
■目標
・大学1、2年生を対象とした「キャリア教育プログラム」の共同開発・実施
・高学年対象の仕事選びに直結する「インターンシップ・プログラム」の共同開発・実施と、当該インターンシップ・プログラムを通じて得た学生情報の取扱いの検討

大学1、2年生を対象とした「キャリア教育プログラム」は、先に説明したように「キャリア教育=インターンシップ」としているので、低学年向けのインターンシッププログラム開発になります。低学年向けインターンシップについては、経済同友会の小林喜光代表幹事が3月下旬に「就職に直結するのではなく社会について知ってもらうための大学1~2年生向けのインターンシップを定着させる団体を作る」と発表しています。同友会のプログラムとの違いをどのように出すのかがポイントでしょうか。

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低学年向けとしては、文部科学省の平成26年度「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業【テーマB】インターンシップ等の取組拡大」が参考になります。地域の大学グループが地域の企業・自治体・団体等と連携してインターンシッププログラムを開発するというもので、全国11グループのインターンシッププログラムが開発されています。同事業は平成27年度で補助事業は終了しましたが、この枠組みは参考になるでしょう。

高学年対象のインターンシップについては、大学側に配慮し従来通り期間5日以上をインターンシップとし、プログラムは就業体験中心のものになるでしょう。ポイントは企業の採用活動に参加した学生の情報を使えるようにするための条件です。従来、4年生の8月以降のインターンシップについては、文科省、厚労省、経産省の三省合意によって、企業は参加学生の情報を採用活動に使うことが許されていました。この時期を8月よりも前にするのか、それともインターンシップの実施期間、例えば1カ月以上なら可とするのか、職場での就業体験の場合とするのかなどになります。「インターンシップは教育」という大学側と、「インターンシップを採用活動に」という企業側との綱引きになるでしょう。

以上が今後のタスクフォースでの議論のポイントです。「中間とりまとめと共同提言」が4月22日に発表されてから5カ月、議論がどれほど進んでいるのでしょうか。残念ながら最も重要と思われる「採用形態の変化への対策検討のTF」が開催されたのは8月末でした。年度内に最終提言をまとめる予定ですから、残された時間は多くはありません。十分な議論がなされ、これからの時代にあった採用やインターンシップ、キャリア教育が示されるのでしょうか。

大事なことは、採用だけ、インターンシップだけを変えれば問題が解決するわけではなく、年功序列や終身雇用は廃止するのか、定年延長はどうなるのか、ジョブ型雇用を導入したら企業は従業員を解雇しやすくなるのか、若者の失業率は上がらないのかなど、あらゆることとの関連を考慮しなければなりません。単なる就活ルールの変更やインターンシップの採用選考化といった話ではないのです。今後の日本人の働き方、生き方にも影響を与える可能性があります。最終提言では、できるだけ混乱や誤解のないよう慎重に、そして分かりやすい提言がされることを期待します。

(『学校法人』6月号掲載記事を基に再構成)

プロフィール

渡辺茂晃 渡辺茂晃(株式会社日経HR) 1991年日経事業出版社入社、高齢者向け雑誌編集を経て、96年日本経済新聞社産業部、98年就職雑誌編集、2001年日経就職ガイド編集長、05年日経就職ナビ編集長、09年大学評価・学位授与機構「大学の「学習成果」を軸とした教育・評価・エビデンスの発信を可能とする体制についての研究」研究員、10年経済産業省「社会人基礎力育成グランプリ」運営、12年10月文部科学省「産業界のニーズに対応した教育改善」事業支援、14年桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科非常勤(~19年4月)、日本経済新聞人材教育事業局「日経カレッジカフェ」副編集長、15年中小企業庁「地域人材コーディネーター養成事業」主任研究員、16年経済産業省「健康経営優良法人認定制度」広報担当、内閣府「女性リーダー育成プログラム」主任研究員、18年4月から現職。著書『実況中継 これまでの面接VSこれからのコンピテンシー面接』『マンガで完全再現! 面接対策』『人気企業内定者に聞いた 面接の質問「でた順」50』など。