21年卒内定者調査 インターンシップ編(上) 参加プログラムの8割が5日未満

漂流する就活

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新型コロナウイルスの感染拡大によって就職活動は大きく変わりました。リアルな活動からオンラインでの活動に変わるなど、企業と学生共にコロナに翻弄された1年でした。コロナ禍での就活はどのように進んだのか、就活を終えた内定者へのアンケート結果※から見てみましょう。今回はインターンシップ編の(上)として、インターンシッププログラムなどについてです。

96%がインターンシップに参加

今や採用選考の一部となったインターンシップ。感染が拡大する2月前に実施されていたために、96.2%(前年95.3%)の学生が参加しています。また、一人当たりの参加企業数は20年卒よりも多く、10社以上に参加した学生は4割(前年27.5%)に達しました。

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ほとんどの就活生が参加するインターンシップですが、本来の意味である就業体験とはかけ離れた内容になっています。まずは学生が参加したインターンシップの日数を見てみましょう。最も多いのは「半日・1日」(47.5%)で、「2~4日」(33.3%)を加えると8割が5日未満となりました。

20年3月に全国求人情報協会や採用と大学教育の未来に関する産学協議会が、22卒から「1day(ワンデー)インターンシップ」の呼称を廃止することを関係各所に要請しました。理由は「就業体験を伴わず、企業等の業務説明の場となっているものが存在する」(全国求人情報協会のホームページより)ためです。大手就活サイトでは22年卒向けサイトで「1day(ワンデー)インターンシップ」の呼称を廃止し、「1day仕事研究」「1日仕事研究」などに変更しました。しかし、21年卒の状況を見る限り1dayのプログラムは増えており、大学等が要望する「5日以上」のインターンシップは減っています。

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プログラム内容も見てみましょう。全求協のホームページに、「インターンシップの定義」として、『「実務体験」または「実際の仕事に近い体験」ができる就業体験プログラムであること』とあります。ところが、アンケート結果を見ると「仕事疑似体験」(37.1%)、「職場での就業体験」(14.5%)は少なく、グループワークが主流です。しかも、就業体験プログラムの多くは理工系学生向けで、文系学生向けはグループワークがほとんどでした。この点でも理想と現実は大きく異なっていることが分かります。

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高評価のインターンシップはデンソーとJR東日本

内定者には、インターンシップに参加して「良かった企業」と「悪かった企業」を聞いており、参加した265人中255人が「良かった企業」をあげてくれました。4人の学生が「良かった」と評価したのはデンソーとJR東日本の2社です。2社のプログラム内容と評価理由を紹介します。

■デンソー 【2日間】(文系)
初日は自動車業界・デンソーに関する講義を受けた後、未来の自動車に関するグループワークに取り組んだ。夜は2時間の懇談会。2日目は営業体験ワーク。顧客の要望(納期や予算)を聞きながら適切な部品を選択し提案する。グループごとに担当者がつき、フィードバックをもらった。
【10日間】(理工系)
初日は業界やデンソーの沿革や事業に関する講義と取り組むテーマの説明があった。2日目以降は事前に選択した事業の部署に配属されて実務を体験。合間に工場や職場見学、懇親会がある。最終日はインターンシップの成果報告をプレゼンし、フィードバックをもらう。その後に他部署の社員の方との座談会、懇親会があった。
【評価した理由】
「参加者の絞り込みがあったことによりハイレベルな学生に囲まれ、グループワークの基本から見直す良い機会となった」
「社員の方から世界屈指の自動車部品メーカーという自負が感じられた」
「職場で実務を経験することで、仕事の内容を具体的に把握でき、職場の雰囲気を肌で感じることができた。この仕事が自分のやりたいことだと実感することができ、この会社で働くために就活を頑張ろうと思えるようになった」
「職場での実習によって、実際に社員の方が働いている様子や職場の雰囲気を見ることができた。実習をこなしながら関連する知識についてレクチャーを受けたため業界・事業に関する理解を深められた」

■JR東日本 【1日間】
鉄道業界に関する講義の後に駅構内や駅ビルなどを見学し、駅周辺の再開発に関するグループワーク、先輩社員との座談会があった。
【3日間】
初日は部門の仕事内容に関する講義と建設現場の見学。2日目は台風被害にあった現場の見学と、現場社員との懇親会。最終日はグループワークと発表を行い、社員との座談会と懇親会で終了。グループワークの内容は、「会社の使命を果たすには今持っている知識をどのように生かすべきか」と「会社に入ったらどんな仕事をしたいか」。
【評価した理由】
「開発途中の駅を見せてもらえた」
「職場を見学させてもらった上に、本部長クラスの方の話を聞けたので、いろいろ学べた」
「実際の現場の見学や社員と交流する機会が充実していたから」
「やりたいことと実際の仕事とを改めて考える機会になった」


このほか、本田技研工業(ホンダ)、ファーストリテイリング、JR東海、日立製作所、三井住友海上火災保険が、3人の学生から「参加して良かった企業」として名前が挙がりました。

学生受けの良いインターンシップの共通点は?

学生から評価の高かったインターンシップと、評価の低かったインターンシップの違いを調べてみましょう。アンケートでは良くなかったインターンシップについても詳細を聞いています。以下のグラフを見ると、評価の高いインターンシップはプログラム内容が豊富なのに比べて、評価の低いインターンシップはプログラムが「講義」と「グループワーク」に集中しています。

「職場での就業体験」「仕事の疑似体験」「職場・工場見学」といった仕事内容を理解できたり、社内の雰囲気を感じられたりする、いわゆる本来の意味でのインターンシッププログラムがあること。「座談会」や「懇親会・食事会」など、社員と直接的な接点があることが評価されています。さらに、グループワークの内容も「社員からのフィードバック」や「テーマのレベル」によって評価に差がありました。

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複数の学生から「良くなかった」として名前の挙がった企業のインターンシップの感想を以下に紹介します。

(印刷) 「企業理解や社員との交流を期待していたが、会社説明感をかなり強く感じた」
「事前に公開されていたインターンシップの内容が不明瞭であり、技術職志望だったが実際参加してみると文系職向けであった。フィードバックをもらえるのはありがたいが、その時間が非常に長く、他の内容に回すべきだと思った」
(ITサービス) 「企業の社風のせいもあってか、参加学生の雰囲気や発表諸々の雰囲気がゆるく、得るものが少なかった。フィードバックもゆるかった。ゆるい感じの雰囲気、良い社風、ということは分かったが、それが入社後もそうなのかと言われるとイメージがわきづらかった」
「インターンを回している人が人事1人できつそう。 社員のイメージが全く分からなかった」
(調査・コンサル) 「未経験歓迎だったが、パソコン操作をかなり要求され、非情報系の学生は途中から見ているだけになった。専門用語なども多く出てきた。また、社員の雰囲気が暗く、メンターの役割もあまり果たしていないようだった」
「社員の方のやる気があまり感じられなかった。選考がなかったためか、周りの学生のレベルも低めだったので、刺激を受けることが少なかった」
(住宅) 「インターンシップという名目の会社説明会+グループワーク。何もわからない就活生を騙すようなやり方に思えた」
「単純に会社説明のやり方や雑な進行が嫌だった。稼げるということをやたらアピールする雰囲気がよくなかった」


良くなかったインターンシップの感想を見ると、プログラム内容や社内の雰囲気、社員の印象などが主な理由で、他の会社でも同様の声があがっていました。

21年卒の学生たちが経験したインターンシッププログラムは以上になりますが、ほとんどが新型コロナの感染が広がる前に実施された、リアルなインターンシップです。22卒はリモートインターンシップが一気に広まり(リモートインターンシップについては「挑戦!リモートインターン(上)17大学61人学生がZoomで参加」を参照ください)、非接触型のリモートインターンシップが生まれました。次回はインターンシップ参加のための選考情報を紹介します。

※【調査概要】
・調査対象 「キャリタス就活2021会員」(2021年卒の大学4年生、修士2年生) ・調査時期 2020年9月14~23日 ・回答者数 265人 ・企業情報数 677社
写真素材/PIXTA