コロナ禍のストレスマネジメント術(2) 就活ストレス、6つの対処法

コロナ禍のストレスマネジメント術宮道 力

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厳しさを増すコロナ禍の就職活動

2020年2月以降、大手就職情報会社が主催する合同会社説明会は軒並みに中止され、各企業独自に開催する会社説明会も次々と中止されました。オンラインによる説明会、選考などが一気に導入され、企業の採用担当者も就活生も手探り状態での活動となり、お互いに十分に納得できるものではなかったかもしれません。

22年卒の就活生もコロナ禍での就職活動となりますが、前年以上にこの影響を受けことが考えられます。採用見通し調査(リクルートワークス研究所、20年12月)によると、大学・大学院卒の新卒採用は、前年と比較して「増える」と回答した企業が7.7%、「減る」は11.6%、「わからない」が21年卒の19.7%から26.1%と6.4ポイントの増加でした。建設業や医療・福祉関連などの人手不足が深刻な一部の業種を除いて低水準となり、10年間続いた採用数増加傾向は一段落する結果となりました。

就活生側も1学年上の先輩と比較して就職戦線は厳しくなるという見通しを持っているようです。20年11月後半時点での就職意識調査(キャリタスリサーチ、20年12月)によると、「非常に厳しくなる」という回答が前年の9.1%から38.5%へと約4倍に増加、「やや厳しくなる」(55.2%)を合わせると9割以上の学生が厳しくなると予測しています。「非常に厳しくなる」と「やや厳しくなる」で9割を超えたのは、リーマンショック後の11年卒者(09年11月調査)以来とのことだそうです。東京オリンピック・パラリンピックの開催・不開催に関わらず、現状ではこれから数年間、学生の就職活動は次第に厳しさが増していくのではないでしょうか。

コロナで変わった採用活動

コロナ禍における企業の選考方法や採用スケジュールなどで変化が見られます。企業と就活生がリアルな接点を持って理解し合う場はほとんどなくなりました。インターンシップも形態が変化しているように聞きます。リアルに出合った企業側スタッフの人柄、そこから感じた社風を企業選択の基準にする学生が多くいます。ところが、今やその場もほとんどなくなっています。OB・OGとの接点も限られ、非公式に入手していた企業の内情も獲得しづらくなっています。

採用活動のオンライン化が進むなか、PCスキルの対応に苦慮している学生もいることでしょう。企業側は21年卒の採用活動の経験からオンライン面接である程度は選考が可能と認識しているものの、内定者にリアルの場で会ったときの印象と、オンライン選考過程での印象に違いを感じることがかなり多いようです。複数の採用担当者から聞いた話では、最終だけはなんとかリアルに面接したが、例年に比べて採用を見送った学生が多かったといった話も聞きました。

コロナ禍でのストレスを低減する

就活生たちは就職環境、選考方法、採用スケジュールなど、これまでとは全く異なる就職活動を通して多くのストレスを感じているでしょう。そんな就活生にとって重要なことは、自らの力で解決できないことを考えても仕方がなく、状況を変えることのできることに焦点をあてて前進するしかないということです。コロナ禍の影響を受けて変化した新卒採用市場の現状を嘆いていても仕方ありません。企業選考を突破していくために、今の自分に何が求められ、何ができるのかに集中すべきです。

就活生にとって、これまでにはなかった良い面もいくつか出てきています。例えば、移動に必要な資金、時間調整の悩みや煩わしさは、かなり削減されたのではないでしょうか。一定の企業情報については、都合のよい時にオンラインで入手できるという自由度を得ました。特に地方学生は、就職活動のための遠距離移動をしなくても良くなり、このために費やしていた時間、労力、資金を他のことに振り分けることが可能になりました。

「物理・身体的ストレス」は、特に地方学生においてはかなり低減されたはずです。「企業関連ストレス」は就活生同士の情報交換の場が限定されるなか、他の就活生の進捗や企業の選考状況などが把握しづらく、孤立感や不安感を例年以上に高める原因になっていることが考えられます。なんとなく落ち着かず、就職活動のことが頭から離れなくなっている就活生もいることでしょう。「適性・興味関連ストレス」は、各大学でのキャリア教育や就職支援プログラムの充実、キャリアカウンセラー(アドバイザー)の拡充などにより低減に向けての努力がなされてきました。ただ、リアルな接点の場から得られる企業の内情、人とのつながり、そこから得られる安心感のようなものは獲得しづらいでしょう。これらのことを就活生自身が見つけ、一つひとつ解決策を練って対処していく必要があります。

簡単にできるストレス対処法

ここでは、就活生が共通して経験すると考えられるストレスについて、簡単に取り組むことのできるいくつかの対処法をご紹介します。

●信頼のできる友人・家族と、オンライン上で定期的に顔を見て会話する機会をつくる
コロナ禍ではオンラインを活用し、テキストベースのコミュニケーションのみではなく、お互いの顔を見ながらのコミュニケーションを定期的に取ることをお勧めします。信頼できる親しい友人などとコミュニケーションを取ることで、不安やイライラした気持ちなどが少しは整理されることでしょう。

●自分の好きなこと、楽しいことを考えてみる
週末に、音楽を聴く、スポーツを観る、走る、模型を作るなど、自分の好きなこと、興味のあることに取り組む時間を、少しでもいいので確保しましょう。

●専門家や教員に報告・相談する
就職支援・学生支援部門のスタッフ、学部やゼミ教員が学生さんの周りには存在します。困ったとき、悩みが生まれそうなとき、気軽に相談できるルートを複数確保しておきましょう。今からでも決して遅くはありません。そして、定期的に報告・相談することをお勧めします。

●周囲の援助を得て、問題に焦点をあてた解決法を考える
気晴らしをたり、親しい友人と話すことで一時的に気持ちが楽になるでしょう。しかし、自分のストレッサーとなっている問題を見つめ、その問題自体を解決しない限り、ストレスは解消されません。一人で問題を抱え込む必要はないのです。周囲のサポートを得ることは恥ずかしいことでもありません。困ったときには周囲に援助を求め、問題解決のための時間を確保して解決法を考えるようにしましょう。直面している問題を違った角度から眺めてみると、気づかなかった解決法が見つかる、自分の偏った思い込みが原因であったと気づくこともよくあることです。

●規則正しい生活リズムの維持に努める
学業、サークル活動、アルバイトなどに就職活動が加わると、夜遅くまで起きていたり、起床が遅くなったり食事がとれなかったりと生活リズムが乱れがちです。できる限りの睡眠時間を確保すること、暴飲暴食を控えて3食をしっかり確保することを心がけ、規則正しい生活リズムの維持に努めましょう。定期的に運動することも取り入れ、睡眠から生活リズムを見直していくことをお勧めします。就寝前のアルコールやカフェインの摂取、PCやスマートフォンの使用には注意しましょう。

●リラクセーションを覚える
コロナ禍の就職活動では、リアルな人との接点が限られるために孤立感や不安感が高まり、面接に臨んだり、面接で良い結果が得られなかったりといったストレスフルな状況が出てくるでしょう。そのような場合に対処するために、日頃からリラクセーションの実践をお勧めします。

次回は、具体的なリラクセーションの方法として漸進的筋弛緩法を紹介し、学生を支える側から私なりに考えてきたことをお伝えできればと思います。

写真素材/PIXTA

プロフィール

宮道 力 宮道 力(岡山大学保健管理センター准教授) 日本カウンセリング学会理事、浦安市教育委員会教育長職務代理者、筑波大学働く人への心理支援開発研究センター客員研究員、公認心理師、キャリア・コンサルタント。地方放送局、人材サービス会社、就職情報会社を経た後、大学でキャリア支援に携わる。正課外活動(岡山大ハンドボール部)を基盤とした学生のキャリア発達・チームマネジメント支援を行ってきた経験を持ち、現在は教職員のメンタルヘルス維持・向上施策の企画・実施・分析に携わる。岡山大法学部卒・筑波大人間総合科学研究科生涯発達専攻(博士前期課程)修了。岡山大医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野(博士課程)在籍中。