VUCA時代の会社研究(下)SDGs経営が分かる3つの指標

漂流する就活

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前回は就活の進み具合によって学生の企業選びの重視点が変わることや、志望企業選びの際にはインターンシップが重視されること、予測不能なVUCA時代になったこと、企業の評価ポイントが変わり始めたこと、SDGs経営に取り組む企業が「いい会社」になるといった話を書きました。今回はSDGs経営に取り組む企業の探し方についてです。

ヒントは3つの指標

SDGsに取り組んでいるかどうかは、なかなか数字化しづらいものですが、日経HRムック「日経キャリアマガジン特別編集 就活NEXT 未来を変える会社2021年度版」では、各調査や社員の活性化への取り組みを測った指標などを基に、未来に目を向けている会社を紹介しています。

企業のSDGsへの取り組み状況を見る指標として、次の3指標を紹介します。
指標① ESGインデックス
指標② 健康経営
指標③ ダイバーシティ経営

ESG投資

指標の1つめは「ESGインデックス」です。ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字で、インデックスとは証券や投資信託の世界で使われている「指標」のことです。ここ数年、投資会社などがESGに取り組む企業の成長を見込み、独自にESGインデックスを作成しています。

「未来を変える会社2021年度版」では、英国の投資会社FTSE Russellが発表した日本企業のESGインデックス(FTSE Blossom Japan Index)をスコア順に掲載しています(スコア2.9まで)。企業の情報発信の透明性などが評価の対象です。これを使って同じ業界の企業を比較すると、ひと味違う企業分析ができます。

例えば、総合商社を売上規模で見ると、トップ5は三菱商事(16.1兆円)、伊藤忠商事(11.6兆円)、丸紅(7.4兆円)、三井物産(6.9兆円)、住友商事(5.3兆円)ですが、ESGスコア順では、双日(4.2)、丸紅(4.1)、三菱商事(4.1)、住友商事(3.6)、三井物産(3.4)という順番になります。企業の取り組みの違いが、ここから感じられるのではないでしょうか。

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健康経営

指標の2つめは「健康経営」です。健康経営とは社員の心身の健康を保ち、高いパフォーマンスを発揮してもらおう、という経営の考え方です。近年、長時間労働や組織内のハラスメントなどが引き起こす健康被害、過労死が問題視されています。学生にとっても、ブラック企業問題への関心は高まっています。特に、新型コロナでリモートワークが普及すると、「リモート対応」が企業選びの際の重視点になりました。

仕事でよい仕事をするには、心も体も健康であることが必要です。そのため企業は社員の健康促進のため、定期的な健康診断の実施、心身の不調やハラスメントの相談窓口の設置などに取り組んでいます。また、業務を見直しし、残業時間の削減に努める企業も増えています。このように、社員の健康に注意を払っている企業は、SDGsの目標である「健康」「働きがい」などに対する意識が高い企業といえるでしょう。

特に優れた健康経営を実施している企業を、経済産業省は2016年から「健康経営優良法人」として認定しています。「未来を変える会社2021年度版」では、大企業法人部門、通称「ホワイト500」を都道府県・業種を整理し、掲載しました。大学のあるエリアや学生の地元でどんな企業が掲載されているか、チェックしてみてください。

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ダイバーシティ経営

指標の3つめは、「ダイバーシティ経営」です。ダイバーシティとは多様性のこと。組織の中に、年齢、性別、国・地域、文化などが異なるさまざまな人たちが存在し、お互いに影響を与えながら、イノベーションを生み成果を上げることをねらう経営の考え方です。グローバル化、業界のボーダーレス化などを背景に、多様な人材が能力を発揮し、企業の価値向上を図ることは、企業競争力を高める有効な手段である、という考えが根底にあります。2020年2月、米国の大手金融ゴールドマン・サックスが「女性取締役がいない企業の上場は引き受けない」としたのも同じ理由です。

多様な人材の中には、育児や介護、病気の療養といった個人のライフステージも含みます。ライフステージによっては、従来の正社員が求められた「決まった時間に決まった職場に行き、フルタイム勤務する」という働き方が難しいため、企業には柔軟な働き方ができる環境づくりが求められます。そんな環境は働きやすさにつながり、人材をつなぎとめる力となるのです。SDGsの目標である「ジェンダー平等」「公平」「働きがい」などに対する意識が高い企業といえるでしょう。

経済産業省は、多様な人材の能力を生かし価値創造につなげている企業を「新・ダイバーシティ経営企業100選」として表彰しています。また、「100選プライム」は過去の表彰企業の中から、全社的かつ継続的にダイバーシティ経営に取り組んでいる企業で、2019年度は情報・通信のSCSK、小売の丸井グループが選出されました。日本企業の中でダイバーシティ経営においてトップクラスといえます。こちらも「未来を変える会社2021年度版」に掲載されています。

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SDGsゴールに取り組む企業は、企業の価値を高めて長期的に成長していく企業であり、また、社員にとっても働きやすい環境であるといえるでしょう。新型コロナの世界的な感染拡大によって、まさにVUCA時代であることを日々感じる状況にあります。企業の経営環境が激変する時代にこそ、世界共通の課題解決に向けて活動する企業こそが、未来を担う学生たちに勧めたい企業と言えるのではないでしょうか。就活・インターンシップの新しい会社選びのモノサシとして、ぜひ活用してください。
(高石薫子)
写真素材/PIXTA

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