NNT(無い内定)にしない就活サポートとは?

やる気の引き出し方

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例年なら10月1日の内定式を境に、大学の就職支援も4年生から3年生へ切り替わります。ところが、新型コロナの影響で4年生の就職活動が大きく遅れ、4年生と3年生両方の支援をしている大学が多くあります。就職活動に苦戦する若者の就職支援サービスを提供するジェイックの佐藤剛志社長と田原満生新卒カレッジ事業部事業部長に、これからの21年卒向けの就職支援のポイントを聞きました。

就活に苦戦するのはどんな学生か?

――就職活動で苦戦する若者たちへの就活支援をビジネスにしていますが、どんな学生がサービスを利用しているのでしょうか。

佐藤剛志社長 弊社の大学4年生向け就職支援サービス「新卒カレッジ®」は、自己分析から企業研究、面接対策までを教える研修を実施し、学内で企業との面接会開催、個別企業の採用面接指導まで提供するサービスです。現在、全国63校(2020年1月現在)の大学にご利用いただいています。
yaruki2_1.jpg 佐藤剛志社長

「新卒カレッジ®」に参加する学生は、"要領がよくなくて内定をうまく取れなかった""途中で志望業種を変えた""部活に一生懸命だった""公務員を目指していた"など、さまざまな事情があります。2月、3月になると卒業できないと思っていたのに、卒業できることになったからあわてて就活を始める学生もいますし、卒業式が終わって3月31日に内定が決まる学生もいます。

最近では5月から支援する大学もありますが、我々が最も得意とするのは10、11月から2、3月の卒業式の間際まで。今年は新型コロナの影響もあって例年よりも多くの大学にご利用いただき、10月には12大学で「新卒カレッジ®」を開催します。今はすべてオンラインに切り替えており、来年もオンラインで進める予定です。

田原満生事業部長 支援している学生の中には就活を全くやってこなかった人や就活をリスタートしたりする人が多くいます。就活に関する情報が少なく選考の流れが分からない、業界のことをまったく知らないなど、就活を一からすべて教えています。

特に今年は2月、3月までに就活を始めなかった学生は何もできないまま外出自粛となり、4年生になっても大学に行けず、情報を得ることも友人と就活の話をする機会もありませんでした。その結果、例年以上に就活に遅れてしまった学生が増えています。

研修では客観的な事実の理解から

――就活に出遅れた学生に対して、どのような研修をしているのでしょうか。

田原事業部長 どの時期であっても研修のガイダンスで就活の現状、例えば有効求人倍率や内定率などの事実を知らせます。その上で、今までやってきたこと、うまくいったこと、うまくいかなかったことを振り返ってもらいます。客観的な事実をもとに学生本人の立ち位置をはっきりさせ、次に個人の良さを見つけるのが基本的な研修の流れになります。

また、企業の採用に対する考え方や企業が学生のどこを見ているかなどをインプットし、それに対して学生個人がどう考えるのか、何が自分の強みなのかをアウトプットしてもらう。それに対して、良い悪いといったフィードバックをする。この繰り返しは、企業の面接のようなもので、学生も面接の場数を踏めます。

――今年はオンラインに切り替えたそうですが、オンラインならではの研修内容はありますか?

田原事業部長 研修はすべてオンラインで実施していますので、オンライン環境を整えることから始めます。これはオンライン面接の対策にもなります。オンラインで面談する前に、面談を受ける場所、照明の位置、PC・スマホの置き方(角度や距離)、背景、ヘアスタイルなどの身だしなみなど、オンラインの画面で印象を良くするための写り方を指導します。
yaruki2_2.jpg 田原満生事業部長

オンライン面接の基本を身につけたら、プレイクアウトルームに入って学生同士で面接のロールプレイングをするペアワークになります。そこに講師が見に行き、個別にフィードバックします。さらに、学生は面接官役としてもロールプレイングを行うので、画面越しの企業からの視点を客観的に知ることにもつながります。学生はオンライン面接の経験値が上がり、自信をもって選考本番に臨めるようになります。

自信を失った学生が自信を取り戻すには

――秋まで就活を続けている学生の中には、自信を失っている学生も多いと思います。どのように学生のモチベーションを上げているのでしょうか。

田原事業部長 就活がうまく行かない学生は、「どうせ自分なんか」とか「こんなことを話してもいいのか?」というように、あきらめの気持ちでいたり、消極的になっていたりすることが多い。そのような学生たちはなかなか心を開いてくれませんので、小さなことでもほめることから始めています。

例えば、オンラインで最初は口数の少なかった学生が自分のことを話してくれたら「ありがとう」、笑顔が出たら「いい笑顔!」などと、ちょっとした変化でもほめるようにしています。アルバイトの話でも「たいしたことやってないです」としか話さない学生でも、詳しく聞けば「遅刻せずに行った」とか「真面目に一生懸命働いた」と話してくれます。そんなことは当たり前だと思う人もいるでしょうが、本人にとっては一生懸命頑張っていることなので、「毎日頑張ったね」「遅刻せずに偉いね」とほめると心を開いてきます。

また、弊社の「新卒カレッジ®」は研修終了後、企業との面接会に進みます。その後に学生と企業両方にアンケートを実施し、両者の希望が一致したら個別選考に進めます。研修でいろいろ学び、学んだことを面接会でアウトプットする、そして評価が良ければ面接に進める。実際に面接会で企業の方に会って評価されると学生の自信につながります。

佐藤社長 セミナーなどで参加者が講師に質問した際、講師が「いい質問ですね!」とよく言いますよね。そうすると、質問した人も気分が良くなる。それと一緒です。「最初に質問するなんて偉いね、勇気がいるよね」みたいに。結局、自信を持たせることが一番です。私たちは元々、フリーターの若者たちへの支援からスタートしているので、どちらかというと自己肯定感が落ちている「自信がない」が口癖のような若者たちと関わってきたので、そういう若者への寄り添い方を心得ています。決して最初から否定するとか、「だからダメなんだ」などとは言いません。

――就活を続けている学生は、他にどんなことに困っていますか?

田原事業部長 今年の就活生は大学に行っていないために友達から得られる情報が少なく、周りの就活状況が見えづらくなっています。例年だったら学内やオフィス街を歩けばリクルートスーツを着ている学生もいて何となく状況を把握できますが、オンラインで就活が進むと周囲の就活生が見えません。周囲の学生はどれだけ進んでいるのか分からないことが不安を大きくしています。

研修で同じ時期に就活をする学生に出会え、ワークを通してお互いの就活状況も分かる。同じ境遇の就活仲間ができてとても安心しているようです。大学でも就活生が孤立しないような対策が必要でしょう。

オンライン面談での注意点

――これまでの対面での支援と、オンラインでの支援で何か違いはありますか? 気を使っている点などあれば。

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田原事業部長 学生がどこでオンライン面談をしているのか、面談環境に気を使っています。例えば、自分の部屋なのかそうでないのか。自分の部屋がなく、周囲に家族がいたら本音を言いづらくなります。保護者の方々もお子様の就活を心配していますし、学生もできるだけ心配をかけたくないと考えて本当のことを話せなくなってしまいます。できるだけ、学生が話しやすい環境での面談を心がけています。

一方、オンラインならではの良い面もあります。数百人が集まるような学内セミナーでは、めったに質問の手が挙がることはありませんが、オンラインだと次々に質問をしてきます。自分の顔が出ないし、チャットで文字を入力するだけなので質問しやすいのでしょうね。

――秋になっても4年生の支援が続いていると、大学では3年生の就職支援スケジュールにも影響が出そうです。

田原事業部長 従来なら秋シーズンは4年生の支援はほぼ終わり、低学年の支援にシフトする時期なのですが、大学の内定率が昨年に比べて10ポイントから15ポイント落ちているので、目の前で苦労している4年生を支援せざるを得ないというのが実情です。大学によっては3年生支援のWeb化に対応しきれず、弊社にご依頼をいただくケースもあります。

佐藤社長 一方で、今の3年生の動きはかなり早まっています。今の4年生の中で2月までに就活を進めていた学生は自粛前に内定を得ている人が多く、(就活解禁の)3月1日から就活を始めようとしていた先輩たちはコロナの影響で何もできなかった。このことが4年生から3年生に伝わり、"遅れたらヤバイ"という意識が強まり3年生の動き出しが早くなっているのでしょう。

――低学年への就職支援でのアドバイスなどはありますか?

佐藤社長 大学生活のどのタイミングで就活する目的を設定できるかが大切になります。自分がどういうキャリアを歩みたいのか、どういう会社に入りたいのか、それなら大学でどんな勉強をすればいいのか、何を経験すればいいのか、というように逆算して考えられるといいですよね。だから、心理学を学ぼうとか、会計の知識を身につけようとか勉強に意味を持たせることです。単位を取るために勉強するとかナンセンスじゃないですか。できるだけ早くキャリアのことを考えることができれば、学生の学生生活の過ごし方も自ずと変わると思います。

田原事業部長 今、実際に就活して自己肯定感が低かったり、自信がなかったりする学生が多い。学生生活の中で小さな成功体験を多く持つことが必要です。特に就活で苦労する学生が多い大学ほど、早めに自分のキャリアを考え、自己肯定感を高めるような経験を積んでもらうことです。

――ありがとうございます。新型コロナの流行で就活がオンラインに変わり、新しい就活サポートが必要になりました。オンライン対応など一部では就活支援の仕方も変わらなければなりませんが、本質的な部分、学生に自信を持たせるという点は不変ですね。