就職支援、ここが問題!(上)人もいない、お金もない。どうすればいい?

interview 留学生支援

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日本での就職を希望する留学生のうち、国内で就職できるのは半数程度と言われています。人手不足と言われる日本において、なぜ日本で働きたい若者が就職できないのでしょうか。年間500人以上、累計5000人以上の留学生の就職活動を支援し、企業750社以上の採用・定着支援をしてきたエンピ・カンデルさん(UNIBIRD株式会社代表取締役)に話を聞きました。

「就職支援、ここが問題!(下)採用直結インターンがあってもいい」はこちら

企業、大学、留学生の3者にそれぞれ問題がある

――2019年春に卒業した大学生の就職内定率は97%を超えていますが、外国人留学生の内定率はなかなか上昇しません。どこに問題があるのでしょうか?

日本では人手不足が深刻だと言われている中で、日本での就職を希望する人の半分しか就職できないというのは、企業、大学、留学生それぞれに問題があると思っています。この3者が抱えている課題を解決しないと、留学生の就職率は上がらないでしょう。

――企業側の問題点とは。

企業は新卒一括採用にこだわらず通年採用を始めてほしい。それに加えて、企業の情報発信の問題もあります。本当に留学生を採用したいなら、留学生をいつ、何人採用したのか、国籍はどこか、外国人が活躍するポジションはどこかなど、留学生が企業を受けるかどうかを判断できる材料を積極的に提供してほしい。こうした情報がなければ、本当に留学生を採用してくれるのかどうか分からない。

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留学生の気持ちはコロコロ変わる

――留学生の問題点とは?

留学生は基本的には日本での就職活動のことを何も知りません。日本人学生なら夏にインターンシップに行って、秋になったらエントリーシートや筆記試験の準備を始め、3月から選考を受け、5月ぐらいには終わってしまいます。日本人学生と同じように動く留学生は2割ほどで、残りの8割は日本人よりも動き出しが遅い。留学生の就活は3月から始まります。4月に業界を絞って選考を受け、ミスマッチで落ちて1度就活をやめてしまう。内定をもらっている周りの学生を見てもう1度就活を始め、ようやく8月に本番スタートとなります。でも、8月では採用活動を終えている企業が多い。これが現状です。

留学生の気持ちがコロコロ変わるという問題もあります。例えば、9月までは就職活動をしていて10月になったら国に帰りたいと言い、1月になったら「やっぱり日本で就職したい」と言い出したりする。留学生は最初から「日本で就職する!」と決めている人は少なく、周りを見ながら、両親に相談しながら就活を進めています。「周りが就活をやっているから自分も」と始めてみたものの辛いからやめてしまう。でも、周囲が内定を取って自分だけ就職先がない。「じゃあ、やっぱりもう一度始めるか」となるんです。留学生特有の問題です。

――大学では留学生向けにガイダンスを実施している所も多いです。

どこの大学でも留学生向けにセミナー・ガイダンスはやっていますが、参加率が低い。多くて1割程度で、ほとんどは1割以下ではないでしょうか。キャリアセンターの方からは「エンピさんを呼べば、学生は来ますか?」なんて言われますが、来るわけがありません。そもそもキャリアセンターが出す情報を学生たちは見ていません。掲示板に掲示しても留学生は見ませんし、メールも使わずSNSを使っています。就活生になってメールを使い始めても、就活サイトから1日100通以上のメールが送られてきます。全部は見られない。結局、情報が一方通行になってしまっているんです。

留学生がなぜ来ないのかを分析している大学も少ないです。多くの学生はアルバイトをしています。一方、就職ガイダンスは課外活動の場合が多いので、単位の出ないガイダンスに出るか、アルバイトでお金を稼ぐかを天秤にかけたらアルバイトを取ってしまう。一番有効なのは、ゼミの先生から出席するように言ってもらうのがいいと思います。「出席しないと単位を出さない」と。

留学生担当1人が当たり前

――少ない職員数で回している大学がほとんどです。

キャリアセンターに留学生担当が1人しかいないというのも問題ですが、専門ではないにしてももう少し留学生のことを分かっているべきです。キャリア・就職支援をするなら、どんな国籍の学生がいて、さらには国民性や文化まで知っておいてほしい。例えば、留学生担当者Aさんが留学生対応をしていたとしましょう。その時、別の留学生が来たら他の職員が担当しなければなりません。留学生のことを何も知らない職員が適切な対応をできなければ、留学生はもう2度とキャリアセンターには来なくなるでしょう。

我々のような業者を使っている大学は増えています。でも、私はあまりお勧めしません。理由は人材が育たないからです。私は先生を含めた各部署の連携を支援するコーディネーターのような人を雇ったほうが、より良い支援ができるのではないかと思っています。また、補助金の問題もあります。グローバル30のような補助金事業があるうちは外部から人を入れていますが、事業が終わったら人もいなくなるということがよくあります。

――人もいない、お金もない。何か良い方法ありますか?

先生に協力してもらうのがいいでしょう。キャリアセンターの担当者一人で留学生全員を相手にすることはできません。でも、ゼミの先生の協力を得られれば、先生一人が相手にするのは多くても十数人の留学生で済みます。私が手伝っている日本語学校では、先生に面談表を渡して特徴や能力などを調べてもらっています。先生は学生のことをよく知っているから、良い面も悪い面も知っています。先生が集めた情報をキャリアセンターが受け取り、先生からキャリアセンターに行くように勧めて、学生は自分に合う企業を紹介してもらうということをやっています。

こうした取り組みは日本語学校や専門学校では始まっていますが、大学では聞いたことがありません。理系の大学では先生が就職先を紹介するということはありますが、キャリアセンターと連携しているところはないですね。ぜひ先生とキャリアセンターが協力して情報を共有してほしいです。