大学におけるキャリア教育とは?必要性や問題点、事例を紹介

キャリアに関する授業を受ける学生

昨今、多くの大学で「キャリア教育」が行なわれるようになりました。キャリア教育は大学生が豊かな人生を送るうえで、欠かせない科目となっています。一方でキャリア教育をスムーズに実施できておらず、課題を抱える大学も少なくありません。


キャリア教育はなぜ必要となり、どのように進めれば良いのでしょうか。本記事では大学にキャリア教育が求められる理由や義務化の背景について触れたのち、キャリア教育の抱える問題点と成功している事例を解説していきます。キャリア教育についてお悩みの方は、ぜひお読みください。


そもそもキャリア教育とは?

大学で求められるキャリア教育を理解するために、そもそもキャリア教育とは何か、キャリア教育の必要性を知ることから始めましょう。


キャリア教育とはどのような教育か

キャリア教育は2011年に、中央教育審議会によって以下のように定義されています。


一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育
(中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月31日))


引用:文部科学省「高等学校キャリア教育の手引き 第1章 キャリア教育とは何か 第1節 キャリア教育の必要性と意義」(p14)

多種多様な職業があること、職業観や勤労観を育成することを始め、若者が社会のなかでどのような役割を担い、責任を果たすうえで必要な能力や態度の習得を、キャリア教育によって求められています。


キャリア教育の必要性

かつて日本では「良い大学に入って良い会社に就職し、一生懸命働いて定年を迎える」ことができれば、安心できる社会人生活と老後が約束されていました。しかし平成以降に次々と起こった以下の変化は、若者の将来や価値観の形成に大きな影響を与えています。


・終身雇用の崩壊と、雇用の多様化・流動化
・少子高齢化の進行
・産業構造の変化
・経済のグローバル化が進行
・働き方改革やテレワークの推進


そもそも多くの企業は、従業員に対して終身雇用を約束していません。今後は社会人一人ひとりが自らのキャリアについてどうすべきか、真剣に考えるべき時代です。「良い大学に入って良い会社に就職し、良い老後を迎える」といったキャリアのレールはなくなりつつあります。


一方で平均寿命は年々長くなり、いまや「人生100年時代」を迎えつつあります。自分らしく納得した人生を過ごすには、若いうちに良き社会人となる能力や態度を学び、自ら適切な道を選ぶスキルを得ることが欠かせません。


大学生がキャリア教育を受けることは、社会人として自立した人生を送るうえで大変重要です。また労働に対する考え方や社会人としての基礎的な能力を習得することも、良い人生を送るうえでは必要になります。


大学でキャリア教育が義務化に

多くの大学がキャリア教育を授業として行う

時代の変化と要請に応えるため、大学ではキャリア教育が義務化されました。これは2011年4月に施行された大学設置基準に、以下の条項が追加されたことによります。


第四十二条の二 大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。


引用:文部科学省「大学設置基準」(p133)


大学は単に学問を学ぶ場所にとどまらず、将来を生き抜く能力も身につけるべき場所として位置づけられたわけです。キャリア教育の内容は全国一律とせず、大学の事情に合わせて設定するものとしています。


それでは、大学でキャリア教育を実施すべきとされた背景や理由はどのような点にあるのでしょうか。ここからはこの点について、考えていきましょう。


義務化の背景や理由とは

文部科学省がキャリア教育を義務化した背景や理由には、以下の3点が挙げられます。


・厳しい雇用情勢や社会環境の大きな変化
・採用活動の早期化や定着率の低さ
・グローバル化の進展や女性の社会進出など、働き方や生き方が多様化


「キャリア教育の必要性」で解説したとおり、雇用情勢や社会環境は大きく変化していることは見逃せません。これからの時代を生き抜くために必要なスキルも、大きく変化しています。


一方で大学を卒業しても、誰もが社会で通用するスキルを備えているとは限りません。就職活動を学生任せにしていると進路未定者が増加するだけでなく、せっかく就職しても早期離職につながるおそれもあります。


加えて「インターンシップ」に代表される採用活動の早期化により、入学した時点から大学生に対し、キャリアに関する意識を持たせる必要が出てきました。働き方や生き方の多様化により将来の目標を選べるようになった分、自らの人生を選ぶ術を学ぶことも求められる時代となっています。


これからの時代は個人が自分の人生において将来どのようになりたいかを、自らの選択と責任で選ぶ時代です。一方で大学生にとって、キャリアについて社会に出る前に学べる機会はそう多くはありません。


納得のいく人生を送るスキルを身につけるため、大学の積極的な関与が求められるようになったことが、義務化の理由と背景に挙げられます。学生を育てるという点で、大学の果たすべき役割はますます大きくなっているといえるでしょう。


大学におけるキャリア教育の現状と問題点

ここまで解説したとおり、大学が実施するキャリア教育の重要性を理解いただけたことでしょう。一方で大学教育の現場では、さまざまな問題も挙がっています。ここからは大学におけるキャリア教育の現状と課題について確認していきましょう。


キャリア教育の現状

キャリア教育自体は、ほぼすべての4年制大学で実施されています。文部科学省の調査によると、2016年度(平成28年度)にキャリア教育を実施している4年制大学は全体の90%以上を占め、うち75%の大学で授業科目として開講されています。


例として、キャリア教育において多く開設されている科目には、以下のようなものが挙げられます。


・勤労観・職業観の育成を目的とした授業科目(87.4%)
・資格取得・就職対策等を目的とした授業科目(82.6%)
・今後の将来の設計を目的とした授業科目(80.8%)
・企業関係者、OB、OG 等の講演等の実施(79.5%)
・インターンシップを取り入れた授業科目(78.0%)

引用:文部科学省「平成28年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)」(p9)


キャリア教育の具体的な科目名やカリキュラムは、大学ごとに異なることが実情です。また選択科目としている大学が多い一方で、必修科目として位置づける大学もあります。


大学におけるキャリア教育の問題点

キャリア形成を支援する制度自体は整えている大学が多いものの、キャリア教育への問題を抱える大学は少なくありません。特にこれから挙げる2つのポイントは、いずれも重要な課題に挙げられます。

1つ目の問題点はキャリア教育に関する意識が共有されず、教職員の間で温度差があることです。以下の問題に直面した方も、多いのではないでしょうか。


・「キャリア教育は特定の教職員がやる仕事」と認識している
・教職員は多少なりとも学生のキャリア形成に影響を与えている認識がない
・教職員の協力体制や大学側の理解が不十分
・カリキュラムとキャリアセンターとの連携がうまくいっていない


就職を目指す学生はもちろん、研究者の道を選ぶ学生にとってもキャリア教育は欠かせません。また上記で示した状況が起きていると、学生のキャリア形成に悪影響を与えます。このためキャリア教育の実施にあたっては、教職員が連携して推進しなければなりません。


もう1つの問題点は、学生の側にあります。大学で働くキャリアセンター職員のなかには、多くの学生が社会人として活躍するうえで必要な力、例えば「社会人基礎力」を十分に備えていないと考える方も少なくありません。


個々の学生に適したキャリア教育をするためには、まず現在のスキルを把握することが求められます。そのため早い段階で「社会人基礎力診断」を学生に受けてもらい、結果をもとに個々の状況に応じてアドバイスすることがおすすめです。


「社会人基礎力診断」は、以下に挙げる「キャリエデュ」のページから申し込めます。より良いキャリア教育を行なうためにも、ぜひ活用をご検討ください。

社会人基礎力診断はこちら


各大学のキャリア教育への取り組み事例を紹介

キャリア教育の内容は大学ごとに特徴がある

キャリア教育に対し、積極的に取り組む大学は多くあります。ここからは特色ある取り組みを実施している3つの大学を取り上げ、それぞれの事例と特筆すべきポイントを解説していきましょう。


◇京都産業大学
京都産業大学でのキャリア教育は、学内で行なわれるものと、インターンシップなど学外で行なわれるものがあり、合計で17科目が開講されています。大学での学びと社会での実践を段階的に積み重ねることで自主性を養うとともに、自ら考えて行動できる人材を育成します。この教育プログラムは日本型「コーオプ教育」として、高い評価を受けていることも見逃せません。

授業においてはグループワークや、進路適性検査「Career Approach」を取り入れています。また一部の科目は担当する教員をローテーションすることで全学的な取り組みとする試みを行なっていることも、注目すべきポイントといえるでしょう。


◇創価大学

創価大学では以下に挙げる、さまざまなキャリア教育を展開しています。

・1年次から4年次まで、複数のキャリア科目を開講
・キャリアセンターや卒業生による、キャリアや就職に関するイベント
・キャリアセンターでの進路相談

これらは、創価大学キャリアセンターが実施するキャリア形成プログラム「F3プログラム」によるものです。学生生活のすべてがキャリアデザインという考えのもと、学生自身の未来を自らの力で切りひらく力をつけ、自らの基盤を築くことを目的としています。

また創価大学では2004年から、進路が決定した学部4年生や大学院2年生がサポーターとして後輩を支える「ピアサポート」を導入していることも特徴です。ピアサポートは、以下の2種類に分かれています。

・CSS(キャリアサポートスタッフ、1・2年生のキャリアサポートを担当。約40名)
・RSS(リクルートサポートスタッフ、3年生の就職活動をサポート。約60~80名)

気軽に相談できる先輩の存在により、円滑なキャリア形成と就職活動の成功に結びつけていることも、学生に役立つポイントといえるでしょう。


◇昭和女子大学

昭和女子大学では3つの取り組みを通して、キャリア教育を実施しています。

・授業を通したキャリア教育
・キャリア支援プログラム
・社会人メンター制度

全学共通の「キャリアコア科目」と、各学科の専門性に基づく「キャリア科目」があり、授業を通して学年ごとにクリアすべき目標を立て、専門性を生かした教育をしています。さまざまな科目のなかでも「キャリアデザイン入門」は必修科目です。また選択必修科目の「女性の生き方と社会」「女性とキャリア形成」をはじめ、女性のキャリア形成に必要な授業も開講されています。


さらに、「社会人メンター制度」と呼ばれる制度では、30代から50代を中心とする社会人女性を公募してメンターとして登録し、個別面談や座談会など、将来の働き方を相談できるさまざまな機会を提供しています。そのほか、就職活動に活かせる個別面談や応募書類の書き方、インターンシップなど、個々の学生に合わせた支援を実施しています。


まとめ

キャリア教育は、大学生が卒業後社会で活躍するうえで必要な知識などを習得する、貴重な機会となります。積極的なキャリア教育への参入が、大学の価値向上に役立つ点も見逃せません。このため教職員一人ひとりが学生の将来に影響する立場という意識を持ち、キャリア教育に対して積極的に関わることが必要です。


成功を収めている大学は学内の教育や教職員だけにとどまらず、卒業生や外部の力を上手に活用していることも特徴に挙げられます。キャリア教育を体系化し、学生を育てる手段として活用することが、選ばれる大学となるコツです。

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