日本人も外国人も ケース学習で学ぼう ビジネスコミュニケーション
グローバル化に伴い、日本で仕事をする外国人も珍しくなくなりました。日本国内の職場環境も多様性が増してきています。ところが、異なる文化を持つ者同士が職場で日々関わりながら業務を遂行することは、それほど容易なことではありません。こうした環境では、日本で仕事をする外国人だけではなく、外国人と働く日本人、海外で働く日本人にとっても異文化に気づき、それを理解しようとすることは大切なことです。
本書は、ケース学習を通してビジネスコミュニケーションを学ぶための教材です。ケース学習は、実際に職場で生じたトラブルや摩擦(コンフリクト)をもとにしたケース教材を使って、問題の発見と解決方法について他者と討論し、できるだけ多くの解決策を見出す学習方法です。
本書には、12のケース教材と多様なタスクが含まれています。12のケース教材は、テーマ1「業務中のコンフリクト」と、テーマ2「社内で戸惑うルールや文化の違い」に分けて構成されています。中には、リモートワークによる職場内のコミュニケーションや働き方についてのケース教材も含まれています。
テーマ1 業務中のコンフリクト | テーマ2 社内で戸惑うルールや文化の違い |
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ケース1 せっかく日本語を勉強したのに ケース2 それって指示ですか ケース3 表情が見えない会議なんて ケース4 業務の効率化につながっていますか ケース5 ビジネスメールには必要ないのですか ケース6 理屈って何を書けばいいんですか ケース7 どうして仕事が進まないの |
ケース8 家賃は教えてくれないのですか ケース9 私のことを不幸だなんて ケース10 飲みニケーションに行きたいのに ケース11 個人評価を見せ合いますか ケース12 わたしが信用されないのは |
本書は、すでに出版されているケース学習の教材(注)に続くものですが、これまでの教材にはなかったタスクも加えました。各ケース教材には、ケース学習に入る前のタスクや、ケース学習の後にも多様なタスクが設けられています。読者がケースについて状況理解を深め、他者の立場に立って考えたり、自分の現実に結び付けたりしやすいような設問になっています。また、グループで学ぶ人にとっても、一人で学ぶ人にとっても、できるだけ複数の人の考えを理解し、受け入れる態度が身につくよう工夫しています。
本書は、社内研修だけでなく、外国人留学生や日本人学生のキャリア教育でもお使いいただける内容です。日本人社員と外国人社員が双方の視点を生かし合いながら、気持ちよく働くためのヒントを探るといった協働の学びや、日本人学生や留学生がともに学ぶ共修の場に役立てていただきたいと思います。
著者プロフィール
金 孝卿(麗澤大学国際学部教授)
専門は日本語教育学、協働学習、ピア内省活動。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。
国際交流基金、大阪大学、早稲田大学を経て現職。大学で学ぶ外国人留学生のためのビジネスコミュニケーション教育やキャリア教育、日本で働く外国人材のための研修や教材開発を行っている。
近藤 彩(昭和女子大学大学院・人間文化学部教授。ビジネス日本語研究会副代表幹事)
専門は日本語教育学・ビジネスコミュニケーション・協働学習・外国人労働者に関わる環境整備。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。
東京海上火災保険株式会社、政策研究大学院大学、麗澤大学などを経て現職。近年は、NHK WORLD "Easy Japanese for Work"「しごとのにほんご」番組監修及びコンテンツ開発も行っている。
池田 玲子(鳥取大学国際交流センター教授。協働実践研究会代表)
専門は日本語教育学、協働学習(ピア・ラーニング)、ピア・レスポンス、アカデミックライティング、サイエンスコミュニケーション。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。
お茶の水女子大学、東京海洋大学教授などを経て現職。「協働的コミュニケーション」を研究テーマに、教材開発や教師研修(国内、海外)を行っている。