慶應義塾大学  経済学部生がデータ分析にチャレンジ

AI時代の人材育成

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政府は2019年6月、人工知能(AI)の本格導入などに向けた「統合イノベーション戦略」を閣議決定し、2025年までにAIの基礎知識を持つ人材を年間25万人育てる目標を掲げました。25年の目標実現に向けて各大学は、各校の特色や学生のレベルに合わせたAI教育プログラムの開発を急いでいます。大学AI教育の今を紹介します。

小田原市の観光客数を予測

「私は観光客数に加え天守閣の来場数のデータを使って小田原の観光客数を予測しました」「私は観光バス受け入れ状況の月割りデータ、梅祭りと桜祭りの推定観光動員数の月割りデータを使って小田原の観光客数を予測しました」――。これは慶應義塾大学経済学部の学生たちの声です。彼らは授業でAIをビジネスにどう活用するのかを学び、実際にAIを使って神奈川県小田原市の観光客数を予測するという課題に取り組みました。

同授業は東日本旅客鉄道(JR東日本)の寄附講座「インバウンド観光ビジネス創造論」。担当の藤田康範教授は授業の目的について「AIを巡る世界の状況、求められているAI人材について学生たちに知ってほしいと思い、AIを使った観光客数の予測に挑戦してもらいました」と話します。授業ではビッグデータ時代における企業の動向や、AI人材が世界的に高い需要がある状況から、観客予測のミニコンペティションに向けたデータ分析の手法までを学びました。
 

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AIを使ったデータ分析手法などについては、AIを使ったサービスを提供するaiforce solutionsが担当。同社の西川智章CEOらがビッグデータ時代における企業の動向や、AI人材が世界的に高い需要がある状況から、ミニコンペ参加に向けたデータ分析の手法までを教えました。同社はAIに関する専門知識がなくてもAIを使ったデータ分析・解析サービスができるサービス「AMATERAS RAY」や、オンラインのAI学習サービス「AMATERAS EDU」を提供しています。

初心者でも簡単にデータ予測ができた

今回、同授業に参加した学生は400人。AIの専門知識を持たない学生たちは今回の授業を通して、新たな気付きを得たようです。

「今回、データ予測を行い、どのデータを用いて分析するかによって予測結果が大きく変わり、それを見極めるのが大変であった。その一方、より精度の高い検証結果を見つけ出すのに興味をかきたてられた」
「今回の課題を通じて、AIがどのように社会で活用されているのかが分かってとてもためになった」
「初心者でも、AMATERAS RAYを使うことによって簡単にデータ予測ができた。今まではデータサイエンティストやデータアナリストがしていた分析を、AMATERAS RAYを利用して誰でも簡単にAIを用いたデータ予測ができ、より色々な場面で今後AIが使われていくことになると思う」

AIやデータ活用を身近に感じてもらいたい

コンペの予測精度上位者は後日、aiforce solutionsでのインターンシップや交流会に参加し、ビジネスの現場でAIをどのように活用するのかなど、より深い学びを経験しました。西川CEOは大学におけるAI教育の現状、課題などについて次のように話します。

「AIを本格的に導入する企業が世界中で増加傾向にある中、日本ではAI教育の普及に遅れをとっており、結果、AI人材の育成に時間がかかっている状況です。今回の慶應義塾大学の学部生向けの講義では、学生たちにビッグデータ時代における企業の動向や、AI人材が世界的に高い需要がある状況を知ってもらいたいと思いました。ぜひ一人でも多くの人に、AIやデータ活用を身近に感じてもらい、学んでみたいと思ってもらえたら幸いです」

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