キャリア教育の現場から

学生の社会的・職業的自立に向けて必要となる能力等を育成するキャリア教育について、教育現場からお届けします。

【大学と企業が情報交換(5)】学修成果の評価「成績の良さと仕事ができる優秀さの相関関係が見えない」

  • (2019/08/21)

2019年6月14日に開催された「大学と企業の情報交換会」(主催:日本経済新聞社『U22』 協力:サイシード)の全5回にわたる分科会レポート。5回目はテーマ「学修成果の選考での評価」について紹介します。

就活の低学年化が進む中、成績を見ることができるのか?

テーマ5「学修成果の選考での評価」では、テーマに対する大学担当者の思いなどを伝えることからスタートしました。共通の意見として挙がったのは「成績評価は各大学や先生によって付け方が異なる。企業はどのように採用選考で一律に評価するのか」ということ。また、「通年採用や就活の低学年化が進むことで、大学生活で学んだことをどこまで、どのように見るのか関心がある」といった意見もありました。

これに対して企業の担当者からは「成績や履修科目を見て、面接時に学業への取り組みを質問することもある」「成績証明書は卒業要件を満たしているかの確認に使う」といった話がありました。学生の学業成績を重視して選考の合否判定をするというよりは、選考の参考情報として使用することが多いようです。中には、「筆記試験で企業が定める最低点数に少し届いていない学生がいた場合、成績証明書を見て、良い成績の学生だったら筆記選考を通過させる」といった活用をしている企業もありました。

業務内容と学生が学んできた内容が合わない

企業が選考時に学業成績に重きを置かない理由として挙げられたのは、業務内容と学生が学んできた内容が合わないためです。「AIを含めたIT事業に取り組んでおり、仕事に必要な知識・スキルは大学の授業の中で扱われていないことが多い。成績表からは判断できない」「採用者の8〜9割は理系学生だが、大学で学んできたテーマが仕事に結びつかないことがほとんど」などの意見が挙がりました。ほかには「成績の良さと仕事ができる優秀さの相関関係が見えていない」「社風とのマッチングが採用選考の最重視項目であり、成績表では測れない」といった声もありました。

新卒一括採用の廃止の背景には、学業で身に付けた専門性を重視し、優秀な人材を採用することも狙いの1つです。ただ大学によって成績評価の基準がバラバラだったり、学生が学んできたことが業務と直接結びつかなかったりといった課題があり、成績評価は十分に活用されていないのが実情です。

学修が本分であるという思いは、大学も企業も同じ

「企業が求めるのは成績の優劣より学生がどのような意識を持って科目を選択し、成績が良かったのか、悪かったのかを自分の言葉で説明できる力」と語った企業の担当者もいました。大学の担当者からは「個人的には学修成果を採用選考で使ってほしいという思いはある。そのためにも大学は学生の質的保証や成績評価を真摯に付けることが大切」と語りました。学生にとって学修が本分であるという思いは、大学も企業も同じです。大学と企業がそれぞれの考えなどを意見交換したことで、学修成果を選考で有効活用するための課題などが見つかり、充実した分科会となりました。

日経HR「内定者調査2018」(n=234)

日経HR「内定者調査2018」(n=109)

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