社会人基礎力の成長を競う、「社会人基礎力育成グランプリ」
授業やゼミ活動を通して社会人基礎力の成長を競う「2021年度 人生100年時代の社会人基礎力育成グランプリ」(主催:一般社団法人社会人基礎力協議会)が2022年3月10日、オンラインで開催されました。社会人基礎力が最も成長したと認められた社会人基礎力大賞には、昨年に続いて創価女子短期大学が選ばれました。同短大は2020年度、2018年度と3回目の受賞となります。
社会人基礎力育成グランプリとは
社会人基礎力育成グランプリとは、大学等での授業やゼミ・研究などの活動を通して社会人基礎力などの能力、学びの姿勢を身につけ、伸ばすことができた成長した学生チームを表彰する大会です。学生を表彰するだけでなく、社会人基礎力の育成に効果的な取り組み事例を広く社会に周知することも目的の1つです。
コロナ禍での開催2年目となった今年は、全32チームが北海道地区、東北・関東地区、中部地区、近畿地区、中国・四国地区、九州・沖縄地区の6つの地区予選大会に参加。各予選大会を勝ち抜いた6チームが決勝大会に出場しました。
2021年度の地区予選大会は、各地区の参加大学数にバラツキが生じたため、公平性の観点から所在地とは異なる地区大会に参加した大学もありました。コロナによってリアルではなくオンラインでの開催に変わったことの利点を生かした工夫と言えるでしょう。
障がい者、生理の貧困、子ども食堂
各チームは教員カの発表(4分)と学生の発表(14分)の計18分に加え、審査員との質疑応答(7分)になります。学生たち(発表は3人以内)は取り組んだ活動について、始めたきっかけ、目標、具体的な活動、トラブル・失敗、成果、自身の成長などについて説明します。
最初に登場したのは近畿地区代表の摂南大学チーム。テーマは「人工知能を用いた障がい者の就労可能性の向上に資する、DX協働基盤の開発と社会実装のための実践研究」です。障がい者がAIの機械学習に関する業務を担えるプラットフォームと、ジョイスティックなど入力器具の開発に取り組みました。障がい者の自立のための施設である社会福祉法人太陽の家や企業と一緒に開発し、障がい者の就労の可能性を広げました。活動を通して「与えられた課題をこなす受け身の姿勢から、自分たちからやるべきことややりたいことも織り交ぜた提案ができるようになった」と言います。
創価女子短期大学はSDGs(持続可能な開発目標)を学ぶ中で若者の5人に1人が生理用品を買うことに苦労しているという「生理の貧困」を知ったことがきっかけです。誰でも利用できる生理用ナプキンのディスペンサー設置の実現に向けた活動を開始。東京都の事業提案「都民による事業提案制度」では採択されなかったものの、同短大内での設置に目標を変更し、大学との交渉の末、設置することに成功しました。八王子市や東京富士美術館などとも話を進めるとともに、同大のYouTube公式チャンネルでも『生理の貧困をなくそう』を公開しています。
広島県福山市にある子ども食堂のPR動画を作成したのは福山大学チーム。1~3年次のキャリア教育科目「キャリアデザインⅠ,Ⅱ,Ⅲ」を受講した学生たちが自主的に集まった「自主ゼミ」チームです。「子ども食堂は生活困窮者が行くところ」というネガティブなイメージを払拭するために、明るく楽しいイメージのPR動画を完成させました。子ども食堂への初訪問時には訪問することが目的となってしまい、十分なヒアリングができませんでした。2回目以降は目的設定を習慣化し、子ども食堂のニーズを聞き取ることができました。
防災教育、同窓会、パッケージデザイン
昨年の阿南高専に続いて高専の決勝進出チームとなったのは苫小牧工業高等専門学校。テーマは「外国人を対象とした防災教育プログラムの開発と実践」です。苫小牧市内に住むべトナム人向けに防災教室開催や防災冊子作成に取り組みました。英語が通じない、母国で地震が発生しないために災害をイメージできないといった課題に対し、試行錯誤を繰り返しながら挑みました。情報専攻のメンバーと土木専攻のメンバーがそれぞれの専門知識やスキルを生かし、「互いを尊重して協働できる柔軟性や協調性を育んだ」と発表しました。
74人の参加者を集めたオンライン同窓会を開催したのは熊本県立大学の津曲ゼミチーム。200人以上の卒業生とのつながりのある研究室の同窓会を盛り上げるために、事前に卒業生に動画を撮影して送ってもらったり、同年代の卒業を集めたブレイクアウトセッションを設置したりと、在学生・卒業生ともに楽しめる工夫が随所に。大学で学んだプロジェクトマネジメントの手法も取り入れ、進捗管理にも生かしました。企画から実施まで数カ月に渡って卒業生と在学生が関わることによって、「社会人の考え方や意識を学ぶことができた」と振り返りました。
栄養士を目指す愛知学泉短期大学の学生が取り組んだのは、地元ではおなじみの角麩のパッケージデザインです。例年、角麩を使ったレシピ提案などで繋がりのあった角麩店からの依頼でした。畑違いのデザインにも果敢に取り組み、手書きしたイラストのデジタル化やプレゼンなど新たなスキルを身につけました。パッケージデザインでは栄養や効能を表示する際には食品表示法を守ることにも配慮し、学内コンペを勝ち抜いたデザイン数点を提案。現在、角麩店が検討中。新パッケージが店頭に並ぶ日も近いかも?
準大賞2校に審査員特別賞も
6チームの発表内容は「どれも素晴らしく、審査も僅差で、非常に難しかった」(深澤審査員長)というほどでした。社会人基礎力大賞には創価女子短期大学、準大賞には摂南大学、苫小牧工業高等専門学校、審査員特別賞には熊本県立大学が選ばれました。
※社会人基礎力とは
社会人基礎力とは「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事する上で必要な基礎的な能力」として、経済産業省が2006年に提言した能力。「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」の3能力と、「主体性」「働きかけ力」「実行力」(以上、前に踏み出す力)、「課題発見力」「計画力」「創造力」(以上、考え抜く力)、「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」(以上、チームで働く力)の12能力要素で構成されています。