2023年度決勝大会 大賞は3つの活動で成長した流通科学大学

社会人基礎力育成グランプリ

人生100年時代の社会人基礎力育成グランプリ

授業やゼミ活動を通して社会人基礎力の成長を競う「2023年度 社会人基礎力育成グランプリ 全国決勝大会」(主催:一般社団法人社会人基礎力協議会)が2024年3月15日に開催されました。大賞に輝いたのは「流通科学大学」チーム。参加大学の発表内容を紹介します。


社会人基礎力の成長エピソードを披露する大会

23年度決勝大会は、北海道地区、東北・関東地区、中部地区、近畿地区、中国・四国地区、九州・沖縄地区の6地区で24年2月中旬に開催された地区予選大会を勝ち抜いた6チームが参加しました。各チームは、教員の指導内容、学生たちの取り組んだ活動、学生自身の社会人基礎力の成長などについて発表します。


参加チームの発表に先立ち、社会人基礎力協議会グランプリ委員会の市川純章委員長(諏訪東京理科大学工学部教授)から挨拶がありました。


「この大会は社会人基礎力の成長に注目しているのが特徴です。大会では社会人基礎力が成長したという良い事例を表彰し、社会人基礎力成長の事例を全国に発信できることを願っています。学生の皆さんには、成果を出せるようになった自分たちに何が起き、できないことができるようになったのかという成長エピソードを披露していただきたいと思います」。


審査員(審査委員長はiU情報経営イノベーション専門職大学の久米信行教授、審査員は経済産業省産業人材課の石森淳美係長、ウチダ人材開発センタの金子栄司常務取締役、日経HRの渡辺茂晃コンテンツ事業本部長)の紹介が終わり、グランプリが始まりました。


名古屋産業大学:長期インターンシップで新規事業提案

トップバッターは名古屋産業大学現代ビジネス学部チーム。3年次に参加する最長4カ月の長期インターンシップでの経験を発表しました。男子学生2人が空調設備会社での新規事業の企画・提案をするインターンシップです。そこで彼らが考えたのは、同社の瞬間冷凍技術を活用し、飲食店の料理を冷凍して無人販売すること。


これを実現するために地域住民や飲食店にヒアリングを実施し、最終的には1社に対して具体的な提案まで話を進めることができました。この活動を通して綿密なヒアリング実施計画を立てたことによって考え抜く力、飲食店へのヒアリングでは断られてもあきらめずにアポを取り続けたことによって前に踏み出す力、2人で悩みを共有し強みを生かしたことによってチームで働く力が身についたと話しました。


名古屋産業大学現代ビジネス学部チーム

大阪経済大学:アイデア100本ノックから出た新ビジネス

2番目は大阪経済大学情報社会学部のチーム。2年生秋から4年生2月まで続くゼミ活動で、今回参加したのはビジネスプラン挑戦を目標にする3年3人。ゼミでは2年の春休みに1チーム100のビジネスアイデアを提案するという宿題があります。しかも、1アイデアにつき10枚程度のスライドにまとめる、つまり1000枚程度のスライド作成をしなければならないというハードなもの。


このアイデア出しから選んだのが、室内に太陽光を取り入れる装置の開発です。実験を繰り返したどり着いたのが光ファイバーを使った集光装置「ぎゃざらいと」。実験・検証することから考え抜く力を、解決策を見つけるために様々な人に協力を求めたことから前に踏み出し力を、役割分担や打ち合わせを通してチームで働く力を向上させました。


大阪経済大学情報社会学部のチーム

長崎県立大学:徹底した現地調査で波佐見町に観光客を

前半の最後は長崎県立大学地域創造学部チーム。テーマはゼミで取り組んだ長崎県波佐見町を訪れる観光客1人当たりの消費額を増やすことです。衰退する波佐見焼産業の活性化を目指し、波佐見町との比較対象として岐阜県多治見市でのアンケート調査を実施し両者の違いに気づき、新型コロナ禍の21年とコロナ後の23年の観光客の特性と消費額の差を明確にしました。


研究の結果、ターゲットを県内、隣県在住者に絞り、波佐見焼絵付け体験から焼き物販売店に誘導するといった行程を考えました。この活動を通して1人当たり450人にアンケートを実施したことによって主体性、調査データの分析によって課題発見力、メンバーとの意見交換や第三者に提案することによって発信力を身につけたといいます。


長崎県立大学地域創造学部チーム

流通科学大学:バスツアー、海外旅行企画、越境交流で成長

休憩を挟んで登場した流通科学大学人間社会学部チームは3つの活動に関する発表でした。1つ目の国際交流バスツアーは同大学の外国人留学生と日本人学生の交流を目的としたツアーです。大学から企画・運営を依頼され2回実施しました。1回目では、メンバー間の連絡ミスなどによって参加者の満足度が低迷。その経験を糧に2回目はトラブルなく、時間通りに運営することができました。

2つ目の海外旅行企画コンテストは、関西国際空港発の旅行企画を競うもの。途中でメンバー同士の意見の食い違いなどもありましたが、バスツアーで身につけたチームで働く力で乗り越え、準グランプリを獲得しました。3つ目は同じ観光を学ぶ東海大学との越境的交流。共同調理を通して即興的に交流するプログラム。この3つの活動を通して社会人基礎力が身につきました。


流通科学大学人間社会学部チーム

福山大学:企業のデジタル化推進にアプリを提案

5番目は福山大学「キャリアデザインゼミ(自主ゼミ)」チームです。前年度に優勝した先輩たちに憧れてゼミ活動を始めたといいます。DX推進に成功した中小企業を取材したことをきっかけに、自分たちで企業のデジタル化を推進する活動に取り組みました。チーム崩壊の危機などを乗り越え、なんとか協力企業を見つけることができました。


企業への最初の提案では企業側のニーズを把握することなく提案したために失敗に終わり、ニーズ調査のためにヒアリングを実施し、課題を発見し、最適なアプリの提案・導入まで至りました。アプリ導入後は作業時間が10%削減できたといいます。協力企業探しではチームで働く力や前に踏み出す力を培い、提案では考え抜く力が身につきました。


福山大学チーム

神戸国際大学:社員のやる気を引き出す提案

ラストは、企業のエンゲージメント(個人と組織が双方の成長に貢献し合う関係)の向上に取り組んだ神戸国際大学経済学部のチーム。勤続年数が浅い社員比率が高まったことによるエンゲージメントの低下に課題感を持つ企業での実習活動です。社員、競合他社、コンサルティング会社などにヒアリング、街頭での社会人へのアンケートを実施した結果、企業の課題と解決策を発見することができました。社内の不満を解消するための新規プロジェクト発表会を提案、採用されました。


エンゲージメントという見えない感情をどう数値化するのかを考えることによって考え抜く力が身についたといいます。反省点としては、留学生メンバーの役割が作業中心になったことによって留学生のエンゲージメントが下がってしまったことだと反省しました。


神戸国際大学経済学部チーム

審査結果:大賞1校、準大賞2校、審査員特別賞も

6チームの発表が終わり、審査結果の発表です。準大賞には大阪経済大学、神戸国際大学、大賞には流通科学大学、審査員特別賞には長崎県立大学が選ばれました。久米信行審査委員長からは社会人基礎力の3能力を伸ばすためのアドバイスがありました。


「前に踏み出す力については、生成AIや環境問題、地政学リスクなどさまざまな時代変革の大波に備え、大波を避けるのではなく、サーフィンのように自ら大波に乗って行ってほしい。考え抜く力では、これまで大学で習ったことや教科書に載っていることは通用しない時代の中、試行錯誤して失敗しながら得られたものがノウハウになる。ググったりしないで自分の頭で考えてほしい。チームで働く力は年齢、性別、国籍、職業、趣味の異なる人と交流してチームワークを持てるかが重要になる。自分とは違う達人と一緒に活躍すると大きな成果が得られる。今日の成果を生かし、これからの社会活動を頑張ってください」