就職支援、ここが問題!(下)採用直結インターンがあってもいい

interview 留学生支援

np2m.jpg エンピ・カンデルさんへのインタービューの後半です。前回は留学生の就職率が上がらない原因について、企業、大学、留学生の面から話してもらいました。今回は留学生就職支援のポイントについて聞いています。

「就職支援、ここが問題!(上)人もいない、お金もない。どうすればいい?」はこちら

――選考試験で苦労する留学生が多い。選考試験対策で気をつけることは

就職活動の仕組みを分かっていない留学生が多い。説明会に参加してエントリーシート、筆記試験、面接という流れを経て内定となりますが、これを知らずに早く内定がほしいと始めてしまいます。外国人留学生にありがちなことなんですが、日本人と違ってあまり準備をしないんです。準備をしてから取り掛かるということは将来仕事をする際にも大事になりますから、就職活動を通してPDCAサイクルを教えたほうがいいでしょう。日本人は当たり前のことですが、外国人から見ると準備してから取り掛かるのは当たり前ではない。日本人が見落としてしまう部分かもしれません。

留学生の活動の幅が狭いことも知ってほしいです。選考試験ではサークルや部活のことをよく聞かれます。日本人学生の多くはサークル・部活に入っていますが留学生はほとんど入らない。彼ら生活を見ると、大半が学業とアルバイトです。だからエピソードも学業かアルバイト、あとは母国での話になってしまいます。私は毎年、立命館大学の1年生向けにキャリアの授業で話をしています。その資料として、地域でのボランティア活動のリストを大学に作ってもらっています。それを学生に配って「こういう経験は将来、就職活動や仕事で役立つんだよ。みんなのために大学がリストを作ってくれたんだから、2、3やってごらん」と言っています。それを実行すると、地域の人との接点が増え、地域のことや日本社会のことが分かるようになります。これが分かると就職活動でも苦労しなくなります。

3年生以上は企業でアルバイトを

――アルバイトでも取り組み方によっては就活のネタになると思うのですが、ネタにするコツは?

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留学生にはアルバイトをする際には2つのことを伝えています。1つ目は「自分の責任以上のことをやる」です。例えば、アルバイトのシフトを作るとか、売上を上げる方法を考えなさいと。こうした事ができれば、会社はこの人に仕事を任せれば、任せた以上のことをやってくれると思うじゃないですか。2つ目は3年生以上はコンビニや飲食店ではなく、より成長できる企業内でのアルバイトを探すことです。中小企業では留学生アルバイトを使っている企業がけっこうあります。大学は就職やインターンで企業とつながっているのですから、アルバイトも紹介すればいい。企業で働くことは実は収入の面でもいいんです。飲食店やコンビニではどんなに頑張っても時給が数十円上がる程度ですが、一般企業のアルバイトで結果を出せば時給は結構上がります。1500円、2000円なんてこともある。アルバイト時間を減らして学業の時間を増やすことも可能なんです。

――企業に関する知識はどうですか?

業界研究・企業研究は苦手です。そもそも企業に関する情報の調べ方が分かっていません。企業のホームページの中でどこを調べればいいのか知らない人が多い。例えば、決算書を見て業績が伸びている事業と落ちている事業はあるのかなど。これが分かれば業績が落ちている事業での採用は少ないことがわかります。でも、それを知らなければ、採用しないかも知れない事業をやりたいと目指してしまいます。だったら初めから業績の良い事業を目指したほうが効率は良いですよね。ホームページのどこにどんな情報があり、その情報からどんなことが分かるのかを教えてほしい。

「質問の意図が分かっていない」留学生

――日本語力を問われる面接では留学生が不利になることも多いのでは?

日本語能力が足りないこともありますが、企業の採用担当者からは「質問の意図を理解していない」という声を多く聞きます。例えば、面接担当者が「なぜ日本に来たのですか?」という質問をしたとします。面接担当者は「留学の目的」や「日本でどんなことしたいのか」「思い」などを聞きたいから質問していると思いますが、「日本のアニメが好きだから」と答えてしまう。こういう質問の意図を事前にわかっていれば、相手が求める回答をできます。日本人はそういうトレーニングをしているから問題ないのですが、留学生はガイダンスなどに行かないので分からないことが多い。

あとは「グローバル人材として活躍したい」「語学力を活かしたい」「架け橋になりたい」という志望理由がほとんど。ほとんどの留学生がこのどれかを志望理由にします。他の学生との違いを出せず、落とされてしまう学生も多い。企業側からすれば留学生みんなが同じような志望理由を話すから、うんざりしてしまいますよね。この3つ以外にも自分の特徴や能力、仕事に対する思いなどを話せるようになるといいでしょう。

――インターンシップ経由の採用が増えているが、留学生にとっては不利になるのではないか?

留学生、特に私費留学の学生はアルバイトをして生活費を稼いでいるからインターンシップに行けない学生が多い。私はもう少しインターンシップをうまく使えばいいと思っています。大学主導の単位の付くインターンシップは採用とは全く関係ありませんが、留学生に限っては採用直結のインターンシップがあっていいと思います。アルバイトの代わりにインターンシップで生活費を得られ、お互いに気に入れば就職の可能性もある。

――他に留学生の就職率を上げる方法はありますか?

1年生から4年生までキャリア科目を必修にすることです。1年生からインターンシップに行かせれば、最低でも4社を知ることができます。アルバイトとは違う日本の企業で働くということを経験すれば、例え日本で就職せずに母国に帰っても日本企業で働いた経験は役に立つはずです。再び日本に戻って就職することもできるでしょう。

あとは留学生が就職した後にどんなことに困っているのかを調べることも必要です。日本企業や日本人の仕事に対する考え方、ビジネスマナーなどが分からず、仕事がうまくいっていない人もいます。就職後の留学生たちの状況を知っていれば、より充実したキャリア支援ができるのではないでしょうか。