大学間、企業との交流の機会を提供―独立行政法人 日本学生支援機構

学生の就活支援についてリクルートなどがレクチャー
採用活動のオンライン化が進む中で、大学教職員にとって学生の就活の実態が見えづらくなっている昨今。大学間での情報共有の機会も少ないなか、日本学生支援機構(JASSO)は様々なイベントなどを通じ、学生のキャリア教育・就職に関わる大学教職員を支援しています。産学官と連携して「就職に多様な視点を――」と、支援に取り組むJASSOの学生生活部 学生支援企画課キャリア教育室の澤出綾子室長、山根野亜子係長、砂金里奈さんにインタビューしました。

企業、大学が交流できるワークショップを開催

採用に直結したインターンシップの広がり、学生がエージェント(人材紹介会社)を利用する就職活動、採用活動のオンライン化など、学生の就職活動は大きく変わっています。「学生の就職へのアプローチ方法はどうなっているのか」「他大学の学生、教職員はどう動いているのだろうか」「今の支援は適切なのか」――。そんな悩みを抱える教職員の方々と、JASSOは「同じ視点に立って支援をしていかなければ」という思いを持ち、様々なイベントを開催しています。

「教職員の皆さまは、就活支援をオンラインも活用して対応していますが、今の支援においてこれが効果的という解を見い出せていないと言います。JASSOはそうした課題解決の一助となる機会の提供ができればと考えています」と、澤出室長は話します。

JASSOでは2022年12月15日(木)・16日(金)に、キャリア教育・就職支援について企業と大学教職員が情報、意見交換ができる機会として、令和4年度「キャリア教育・就職支援ワークショップ」を開催する予定です。

新たな気づきを得られる機会

同ワークショップは、2022年6月に開催された令和4年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」との連動企画。ガイダンスでは文部科学省、経済産業省、厚生労働省などからの行政の取り組みの説明、大学と学生、企業によるパネルディスカッション、大学の「キャリア教育・就職支援の取り組み」事例紹介など、さまざまなプログラムがありました。

「企業、教職員の方々に、新しい時代、新しい価値観、新しいものの見方の糧になるような情報提供を試みました。行政説明では、農林水産省の方から第一次産業への就労についてのお話もあり、視聴者の方から『大学では企業に就職することがほとんどなので、新鮮な話でした。第一次産業への就労が合いそうな学生もいるので、参考になります』といった感想が寄せられました」(砂金さん)

文部科学省による学生の就職支援 「学生支援を巡る状況について(就職指導)」をテーマとした文部科学省の行政説明。

文部科学省からは、大学生の就職状況や、ジョブ型インターンシップなどインターンシップの近年の動向について説明がありました。経済産業省の「未来を支える人材の育成に向けて」では、「未来人材会議」からインターンシップを考えるといった話もありました。「普段なかなか聞くことのできない話を聞けて良かった」といった感想が聞かれました。

学生の変化を感じるディスカッションも

大学のキャリア支援担当者と企業の採用担当者、学生2人をパネリストに、「今後の大学等におけるキャリア支援は、何をすべきか」をテーマにしたディスカッションも。学生の率直な発言なども見られました。

「パネルディスカッションでは、コロナ禍での就活を経験した大学4年生と、コロナ禍以降に入学した2年生が参加しました。4年生は、成果主義や転職が一般的になっていることを感じて将来は何かのスペシャリストになりたい、2年生は公務員のような安定した仕事に就きたい、家族の都合などに合わせられる柔軟な就業形態で働きたいと話していたのが印象的でした。『転職』と『安定』というそれぞれの言葉に、今の学生の変化や傾向を感じました」(砂金さん)

その一方、「2022年度就職・採用活動概況とコロナ禍で見えてきた課題」をテーマにした、株式会社リクルートの渉外室 HR渉外部 部長(前 就職みらい研究所 所長)の増本全さんと早稲田大学・常任理事の佐々木ひとみ先生によるショートレクチャーでは、次のような興味深い話もあったと言います。

「佐々木先生が『今の学生は転職前提で就活しているのではないか』と話したことに対し、増本さんが『学生はすでに転職を見据えていると口では言うが、基本的に長く安心して働きたいと考えているのではないか。現実としてそれができない環境の変化を捉えたうえで、そう発言せざるを得ないのでは』と話していました」(砂金さん)

「環境の変化」というキーワードには、「環境の変化に目を向け、キャリア・就職支援も過去のやり方を改めることが必要だ」という意見を持つ教職員もいたと言います。

バーチャル空間での交流会で意見交換も

オンライン形式で開催された同ガイダンスでは、企業や大学教職員などがバーチャルオフィスツールを使って参加する「テーマ別交流会」を実施。大いに盛り上がったと言います。砂金さんが参加者の声を紹介してくれました。

「教職員の方たちと企業の方たちがざっくばらんに話し、非常に盛り上がっていました。企業の方からは、『多種多様な会社、組織の話があり、今までになかった視点から採用を考えるきっかけになりました』、教職員の方からは『他大学の話が参考になりました』という意見をいただきました」。

コロナ禍以前から、企業、大学教職員が一堂に会して自由に話す機会のニーズは高く、学生のキャリア教育・就職支援の課題に対して新たな気づきを得るきっかけにもなっています。

学生のキャリア教育・就職支援をより良いものに

「当ガイダンスは様々な立場の人が参加、視聴していますが、学生対応だけでなく大学内の組織・体制づくりが課題であると感じている方もいるようです。イベントが学生支援のヒントになること、また大学間、企業等とのつながりの場となれば、こんなにうれしいことはありません。ぜひ、多くの方に参加してほしいです」。JASSOの山根係長はイベントへの参加を呼び掛けています。

令和4年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」については、JASSOのウェブサイトから動画や資料などを見ることができます。

★令和4年度「キャリア教育・就職支援ワークショップ」(12月15日、16日オンライン開催)のお知らせ サイトはこちら
★令和4年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」(6月22日、23日)
サイトはこちらから 動画はこちらから