22年卒の就活振り返りと23年卒の見通し(下) 23年卒の採用意欲は回復傾向

コロナ禍での就活

23年卒の企業の採用活動はどうなるのか?

前回は2022年卒の就活・採用活動の現状や、今後に向けた提言について紹介しました。今回は、リクルートワークス研究所が発表した23年卒者の採用見通しについてお伝えします。同研究所の調査では企業全体の採用意欲は回復傾向にあります。コロナ禍で3年目となる就職・採用活動はどうなるのでしょうか。

新型コロナの新規感染者数が減って緊急事態宣言が解除されたのもつかの間、再び新たな変異株、オミクロン株が猛威を振るっています。22年卒の就職内定率が20年卒と同水準にまで回復した勢いを、2023年卒も維持できるのか見てみましょう。

「22年卒の就活振り返りと23年卒見通し(上)オンライン化で何が変わった?」

「増える」が「減る」を+7.0%ポイント上回る

リクルートワークス研究所が21年12月22日に発表した「ワークス採用見通し調査(新卒:2023 年卒)」(調査期間:21年10月6日~11月10日)によると、23年卒の大学生・大学院生の採用は、22年卒と比べ「増える」企業は10.9%、「減る」は3.9%に留まり、「増える」から「減る」を引いたポイントは+7.0%ポイントとなりました。

2023年卒者の新卒採用は増える見通し
前年22年卒の「増える」-「減る」のポイントは-3.9%ポイントで、23年卒は前年比+10.9%ポイントとなり、大きく伸びました。リクルートワークス研究所の研究員・茂木洋之さんは「企業はコロナ禍の採用活動にもだいぶ慣れてきており、また景況感も見通しやすい状況になっている」と話します。

業種別に見ても、ほぼすべての業種で採用意欲は回復し、「増える」が「減る」を上回るという結果でした。特に「増える」が「減る」を大きく上回っている業種は、コロナ禍の影響を大きく受けた飲食店・宿泊業の+14.0%ポイントで、前年の落ち込み幅が大きかったことによるものと見られます。次いで情報通信業の+10.9%ポイント、機械器具製造業の+10.6%ポイントとなりました。成長産業の情報通信業は22年卒も落ち込み幅は少なく、23年卒でも伸びています。コロナ禍以前から人手不足の建設業は、23年卒の採用も拡大していると言います。

従業員規模に関わらず回復傾向。規模が大きくなるほど上げ幅も大きく

23年卒採用見通しを従業員規模別に見ても、5~99人規模の中小企業(+1.8%ポイント)から5000人規模の大企業(+15.1%ポイント)まで、どの従業員規模でも「増える」が「減る」を上回っています。「増える」-「減る」のポイントは、従業員規模が大きいほど大きくなっています。

「変わらない」は増加、「わからない」は減少

「変わらない」とする企業は、22年卒の45.0%から49.4%と、+4.4%ポイント増加。「わからない」という企業は、22年卒の26.1%から24.1%と-2.0%ポイント減少しましたが、例年に比べると多く、採用に慎重な企業もまだ見られるということです。「以前も今後も採用しない」については11.7%と、22年卒の9.5%から+2.2%ポイント増加しています。

初任給も引き上げの傾向

「初任給の引き上げ(大学生・大学院生)」についての調査発表もあり、引き上げ実施に「すでに取り組んでいる」という企業は全体で21.8%、「今後取り組む予定である」企業は22.7%で、合わせて44.5%に及ぶと言います。

業界別に「すでに取り組んでいる」「今後取り組む予定である」を見ると、建設業は26.2%と26.2%で計52.4%、小売業は26.3%と26.6%で計52.9%と高く、人手不足解消を目指して初任給引き上げに意欲的です。

オミクロン株の採用への影響は軽微と予測

この23年卒の採用見通しは、緊急事態宣言が解除され新型コロナが落ち着いてきた時期に実施されたことから、オミクロン株の感染拡大の影響で下振れるのでは? という声も聞かれました。

しかし、リクルートワークス研究所は、その影響は軽微なもので済むのではないかと予測。茂木さんは、21年卒では新型コロナが一気に大流行して採用プロセスは混乱しましたが、実際の企業の採用意欲は底堅く、そこまで落ちなかったと捉えています。オミクロン株の影響で、採用見通しの数字が下振れするとは考えにくく、23年卒は今回発表した数値でいく可能性が非常に高いと見ているということです。

(編集部 北原理恵)

写真素材/PIXTA