【調査概要】
・調査対象 「キャリタス就活2023会員」(2023年卒の大学4年生、修士2年生) ・調査時期 2022年8月22~9月4日 ・回答者数 215人 ・企業情報数 509社
繰り返される「採用・就活ルールの形骸化」
現在の3月採用広報開始というスケジュールに変わったのは、2016年卒業予定者の就職活動からです。13年卒から15年卒までは、「3年12月 採用広報解禁、4年4月選考開始」で、12年卒までは「3年10月 採用広報解禁、4年4月選考開始」でした。「学業の妨げになる」を理由に、これまで何度も就活時期の後ろ倒しをしては、水面下では就活の早期が進み、「採用・就活ルールの形骸化」が指摘されてきました。
採用・就活時期の変遷
●~2012年卒業予定者
10月採用広報開始、4月選考活動開始
●2013年卒業予定者~2015年卒業予定者
12月採用広報開始、4月選考活動開始
●2016年卒業予定者
3月採用広報開始、8月選考活動開始
●2017年卒業予定者~
3月採用広報開始、6月選考活動開始
外資系、IT系は8月から開始も
現行スケジュールに変わってから7年。現在の就活スケジュールを見てみましょう。グラフはエントリーシート(ES)、筆記試験・WEBテスト、面接、内定の各選考段階の実施日を集計し、折れ線グラフで表したものです。左端は12月以前に実施された選考割合ですが、エントリーシート13.0%、筆記・WEBテスト10.0%、1次面接10.3%、2次面接6.7%、3次・最終面接6.2%、内定6.0%となっています。選考を受けた人数で見ると、215人中40人、18.6%が12月以前に何らかの採用選考を受けていることが分かりました。早いところは9月から一部のIT系企業や外資系コンサルが一部の大学を中心に選考を始め、10月には対象となる大学を広げ、12月にはメーカーやIT系が理工系学生の選考を本格化させています。この動きを見ると、かつての3年10月や12月に始めていた時期と同じかそれよりも早動きとも見えます。
5月中旬が最終面接のピーク
年が明けて1月中旬から2月に入ると1次面接の小さな山ができ、3月上旬にはESと筆記・WEBテストのピーク、3月中旬に3次・最終面接の1回目の山、3月下旬に1回目の内定の山が来ます。以後、4月中旬に1次面接ピーク、4月下旬に2次面接のピーク、5月中旬に3次・最終面接のピーク、6月上旬に内定のピークが来ます。このように、国が指針として示している「3月採用広報開始、6月選考活動開始」というスケジュールよりもはるかに早い時期に採用選考が実施されることが分かります。国は現在、人工知能(AI)やデータ分析などの専門人材に限って採用スケジュールの見直しを検討しています。国内企業が今後の成長が見込まれるIT(情報技術)分野での人材獲得競争で、国内企業が外資系企業に負けているからといった理由があるからです。26年卒業予定者から日程の前倒しなどの運用が始まる見込みです。
先にも説明しましたが、外資系企業やIT系企業は一部の大学の学生を対象に、9月には採用活動を始めています。もし、現行スケジュール以上の早期化を進めるとなれば、3年生の夏休み前には採用活動が始まることになります。反対に、現在のスケジュール程度への早期化であれば、現在のスケジュールの後追いになるだけでしょう。過去に何度も見た光景が再び始まりそうです。
(編集部 渡辺茂晃)
写真素材/PIXTA