2023年卒内定者調査 インターンシップ 4人中3人が選考で「優遇された」

漂流する就活

2023年卒内定者調査インターンシップ
就職活動におけるインターンシップの重要性が高まっています。2025年卒業予定者向けでは、5日以上かつ職場での就業体験が半分以上の日数のインターンシップであれば、採用に生かすことが可能になります。今後のインターンシップの在り方を考える上でも、現状のインターンシップを理解することは重要です。2023年卒内定者調査から21年から22年にかけて実施されたインターンシップについて詳細を見てみましょう。

【調査概要】 ・調査対象 「キャリタス就活2023会員」(2023年卒の大学4年生、修士2年生) ・調査時期 2022年8月22~9月4日 ・回答者数 215人 ・企業情報数 509社


95%の学生が参加 インターンシップ=就活に

新型コロナウイルスの感染拡大によって、インターンシップはオンライン開催が主流になりました。23年卒業予定の内定者(22年7月までに内定を得た学生)に実施したアンケート結果を見ると、94.9%の学生がインターンシップに参加しています。もはや、インターンシップなしに現在の就職活動を語ることはできない状況になっています。学生の参加開始時期は8月、9月からが最も多く、就活解禁となる3月直前まで参加していることがわかります。

インターンシップ参加時期

10社以上参加者が半数以上

次に、参加社数を見てみましょう。最も多いのは「11~15社」(22.1%)で、10社以上参加している人は半数以上の55.9%に達します。21年夏は新型コロナの第5波が到来しており、感染リスクを抑えるためにインターンシップはほぼオンライン開催でした。対面実施は15.7%で、オンラインが73.5%、オンラインと対面の組み合わせが10.8%という結果でした。オンラインの場合、移動による参加の制約がなく参加しやすいことが、参加社数増につながったのでしょう。

インターンシップ参加社数

最も多いプログラムは、2日間、グループワーク

参加したプログラムの日数は2日が最多で25.0%。産官学の取り決めで1日以内のプログラムはインターンシップと呼ばないこととなったために、2日間プログラムが増えました。それでも「半日」(17.6%)、「1日」(17.2%)は多く、2日以内の短期プログラムで6割を占めています。

インターンシップ参加プログラムの日数

プログラムの内容は「グループワーク」(77.5%)を中心に「講義」(49.5%)、「座談会」(65.7%)、「仕事疑似体験」(38.7%)などが組み合わさっています。インターンシップの本来の意味である「職場での就業体験」はわずか4.9%です。新型コロナの影響で就業体験型が減っていると思われますが、実際にはコロナ前からこの程度の数値しかありませんでした。

25年卒以降のインターンシップの採用選考化では「5日以上」とされていますが、プログラム内容については就業体験は「期間の半分以上の日数」となっているものの、「オンラインでも可」となっているため、どの程度の就業体験になるのかは不明です。

インターンシッププログラム内容

参加のための選考 エントリーシートは7割以上

短期、オンラインによって、いつでも、どこでも、だれでも、インターンシップに参加できるようになっています。ただし、参加のための選考試験は課され、エントリーシートの提出が71.1%、Webテスト・筆記試験が42.2%、面接(グループワーク含む)も42.2%になります。まさに、本番さながらの選考試験が実施されています。

参加者希望が増えているために、オンラインとはいえ受け入れ人数には限りがあるため、企業側としても選考による絞り込みをせざるを得ない状況でしょう。そのため、選考試験のないインターンシップは2割強にとどまります。

インターンシップ参加の選考

インターンシップの質問は「参加理由」が76%

インターンシップの参加受付は早ければ6月から始まりますので、3年生4月以降には、エントリーシート対策は実施しても早すぎることはありません。エントリーシートでは、最も多い質問が「インターンシップに参加する理由」(75.9%)で、「学生生活で力を入れたこと」(73.1%)、「自己PR・強み」(58.6%)が上位3つ。これらの回答は選考の始まる7月後半までには書けるようにしたいものです。

インターンシップエントリーシートの質問

ワーク中心でも「社内や社員の雰囲気がわかった」

参加した学生からは、「社内や社員の雰囲気がわかった」、「業界・企業・仕事理解が深まった」「他大学生と交流できた」「就活意欲がわいた」といった声が聞かれ、参加する意味は多くあります。

ただし、注意したいのは、グループワークなどのプログラムは外部の専門業者が運営している企業もあり、必ずしも参加企業の社員ではないということです。また、インターンシップの限ったことではありませんが、座談会などに参加する社員は、企業が選んだ理想的な優秀な社員です。すべての社員が座談会に参加した社員のよう人物であったり、仕事ができたりするわけではない点を、学生に伝えておいたほうがいいでしょう。

インターンシップに参加して良かった点

参加で「優遇があった」は77%に

インターンシップ参加が本選考に与える影響についても見てみましょう。インターンシップに参加して「何らかの優遇があった」と回答した人は76.7%と4人中3人にもなりました。このことが学生のインターンシップ参加に拍車をかけているとも言えるでしょう。

優遇の中身は「早期選考の案内」が62.0%で最多で、次いで「選考の一部免除」(32.0%)、「参加者限定の説明会、セミナー」(24.4%)が続きました。そして、参加者の多くは就活解禁の3月前に参加した企業の選考を受けていました。

インターンシップ参加による優遇

以上が2023年卒のインターンシップです。「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が決めた新しいインターンシップが始まる最初の年となる23年度は、どのようなインターンシップが実施されるのでしょうか。
(編集部 渡辺茂晃)
写真素材/PIXTA