キャリア教育の現場から

学生の社会的・職業的自立に向けて必要となる能力等を育成するキャリア教育について、教育現場からお届けします。

【大学と企業が情報交換(3)】身体・発達障害等学生への支援「発達障害グレーゾーン学生の就職支援の難しさ」

  • (2019/08/21)

2019年6月14日に開催された「大学と企業の情報交換会」(主催:日本経済新聞社『U22』 協力:サイシード)では、大学の就職支援・キャリア教育担当者と企業が5つの分科会に分かれ、熱い議論が交わされました。今回は分科会レポートの3回目、テーマ3「身体・発達障害等学生への支援」について紹介します。

発達障害学生の就職支援で求められる産学連携

過去最高の就職率を更新し続ける売り手市場が続く中、障害学生、特に発達障害学生の就職支援に苦労する大学が増えています。障害学生全体の就職率79.5%に対して、発達障害学生は68.3%と10ポイント以上も低いのが実情です(日本学生支援機構調べ)。こうした現状もあって分科会では冒頭から「聴覚・視覚障害に加え、2次的に発達障害を持つ学生が増えており、就活で苦戦している」「発達障害の自覚がないまま就職活動に入り、就活中に障害が発覚する学生が増えている」という大学側からの発言がありました。

(日本学生支援機構「平成30年度(2018年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書」より)

企業の人事制度未対応も課題

発達障害学生への支援に苦慮する大学の声に対し、障害者を受け入れる企業側の現状として挙がったのは次のような声です。
「入社後にグレーゾーンだとわかり辞めてしまった人がいる」
「発達障害とまではいかないが、グレーゾーンの社員はいる」
「身体障害なら技術系の仕事などできる仕事も多いが、発達障害の人が仕事をするのは難しいことが多い」
「障害者手帳を持たないグレーゾーンの学生を受け入れるのは今の会社の制度では難しい。彼らを活かせる制度を作るための社内理解も必要になる」

現行の企業の人事制度では、手帳を持たない発達障害グレーゾーン学生を採用するのは難しいことがわかりました。発達障害で手帳を取得することは、本人の気持ちだけでなく、検査結果や医師の判断、保護者が認めないなど多くの問題があるようです。

大学側の支援体制としては、キャリア支援部署と障害者支援の専門部署が連携して就職サポートをしている所が多いことがわかりました。また、担任制をとっている大学では教員の目が学生に届きやすく、発達障害の可能性のある学生を見つけたら早めに支援部署に誘導していました。その大学では、高校との連携で入学前から障害のある学生を把握し、卒業後の支援もしているといいます。

(日本学生支援機構「平成30年度(2018年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書」より)

キャリアセンターと専門部署が連携して支援しても、就職に結びつかないのが発達障害学生支援の難しいところ。「グレーゾーンの学生が就職相談に来て、さまざまなサポートをしてもなかなか結果が出ない」といった悩みを語ってくれた大学もあります。発達障害に関する勉強会も開催されているので、大学だけでなく企業側も積極的に参加し、お互いに対応策を考えるような場を増やせば相互理解に通じるという提案も出ました。

大学と企業で情報を共有できれば…

企業からは「特例子会社で専門家を入れて定着率を挙げた例がある」「発達障害の特性を理解するには時間がかかる。大学側から障害を持つ学生の特性を教えてもらえれば受け入れる企業の心理的なハードルが下がる」など、課題解決の参考になる意見もあり、大学と企業が一緒になれば解決できる可能性も見えました。

大学では身体障害・発達障害に加え、最近ではLGBTの学生も目立つようになっています。「学生を教育する大学」と「学生を採用する企業」という異なる立場のままではなく、大学と企業が障害を持った学生の定着に取り組むような動きが出ることが望まれます。発達障害学生・発達障害グレーゾーン学生の就職支援について、企業と大学がお互いの課題を共有し、就職から定着へとつながる可能性を見出した分科会でした。

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