採用担当者重視度 21.3%
マンガにあるように、考えることを放棄してしまったような人、意外といるんです。このような人を創造力がないといいます。仕事をしていると、「前回通り」「去年と同じやり方で」といったように、新しい状況に対応することなく、以前やったことと同じことしかしない・できない人がいます。これでは困ります。常に新しいことや新しい方法を考えてもらわないと、人も会社も成長しません。
社会人基礎力では、創造力を「新しい価値を生み出す力」と定義し、行動例を「既存の発想にとらわれず、課題に対して新しい解決法を考える」としています。仲間内の遊びやサークル活動などでは、"思いつき"や"ひらめき"で物事を進めてもいいでしょう。でも、直感に頼ってばかりでは、成功しない可能性もあります。社会人基礎力としては、ある程度客観的な事実を踏まえ、その上で「こんな新しい方法がある!」とか「こんな商品が求められている!」と伝えなければなりません。情報を集めず、分析せずに"ひらめき"を信じてばかりでは、無謀な行動で終わってしまう可能性が高くなってしまいます。ですから、自分が取り組んでいるテーマに関する情報や人脈を増やし、それをベースに「新しい価値を生み出す」ことが必要なのです。
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これからの日本企業でもとめられる力
創造力はこれからの社会ではとても重要になります。「AI(人工知能)やロボットに仕事が奪われる」といった話を聞いたことがあると思いますが、実際にはすでに多くの仕事の現場でAIやロボットが人に代わって仕事をしています。三井住友銀行ではこれまでは人がやっていた伝票の確認や書類の作成といった仕事を、定型業務を自動化する「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)というソフトが処理しています。このようにAIやロボットが人の代わりに仕事をすることが当たり前の時代になりつつあります。そうなった時、人がする仕事とはどんな仕事なのでしょうか。2013年に英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が論文「雇用の未来」で「アメリカは今後20年で総雇用者の47%の仕事が機械化で奪われる可能性がある」と予測しました。そのオズボーン准教授はAIに置き換えられにくいのは「意思決定や判断、創造性に関わる仕事」と言っています。AIに仕事を奪われないためにも創造力も持つことは大事なのです。
アイデアは突然舞い降りては来ない
では創造力は簡単に身に付くかというと、そうではありません。皆さんが知っているようなヒット商品を開発している人は、何もしなくても突然アイデアが舞い降りてきているわけではないのです。中には、そんなこともあるのかもしれませんが、多くの場合は、日々の積み重ねから生まれています。ほぼ1人で家電メーカーUPQ(アップ・キュー)を立ち上げた中澤優子社長が、カシオ計算機で携帯電話の商品企画を担当していた頃にインタビューしたことがあります。その時、新しい機能を生み出すことについて次のように話していました。
「新宿や渋谷などの繁華街に出ては、女子高生、大学生、大人まで男女構わずに話を聞いた。ケータイに絞らず、いま流行しているもの、興味のあること、日常の様子、いろいろ聞きまくった」
「電車の中でも、歩きながらでも、何かひらめくと、思いつくままにノートに書き出す。ノートは入社当時からずっと常に手にしており、アイデアやイラスト、思いついた言葉などを何でも書き込んでいる。もう家には数十冊のノートが貯まっている」
このように、とことん考え抜いた結果、新しいアイデアが湧いてくるのです。何の目的意識も持たないまま漫然と過ごしていては何もひらめかないし、新しい価値を生み出すことはないでしょう。創造力は、新しいものを生み出そうという努力なくして発揮されないと思ってください。
どうすれば創造力は身に付くのか
先に説明した通り、ただ待っていてもアイデアは浮かびません。興味のあること、取り組んでいることに関連する情報を貪欲に取りに行く必要があります。関連する、もしくは役に立つであろうと思われる多種多様な情報を集め、取捨選択したり、組み合わせたりすることによって、これまでになかったアイデアが浮かんでくるのです。仕事であれば、自分の仕事に関連する情報を集めるのは当然ですが、他には社外の人とネットワークを持つことも大事。また、学生であれば同じ大学の学生とだけでなく、他大学の学生と積極的に交流を持ってもいいでしょう。他人との会話の中に、実はたくさんのアイデアの種が隠れているからです。ただし、すぐに仕事で新しい価値を生み出すことは簡単ではありません。最初は「自分の仕事を簡略化するには?」とか「人を喜ばせられるか?」など、楽しみながら考えられる個人レベルのことから始めるといいでしょう。それが自然にできるようになったら、次は新商品や新サービスなど、創造するレベルを上げるようにしてください。
何か一つテーマを決め、そのことについて一定期間集中的に考えてみるのもいいでしょう。そして、考えた結果を必ずアウトプットすること。会議を招集して企画書を出すといったレベルにまで至らなくてもいいです。誰かに話してみるだけでも十分です。それによって、アドバイスや意見をもらえれば、よりレベルアップした価値へとつながります。仮にダメ出しされても、落ち込むことはありません。あれこれと頭を悩ませ、知恵を絞りつづけることが大事なのです。
仕事やサークル・部活などをしていると、ついつい前例を踏襲しようとすることもあるでしょう。その理由は、何も変えないことはとても楽だからです。新しいことを始めようとすると大変なことばかり。でも、より良い商品やサービス、仕事の進め方を考えた結果、何かが生まれたらこれまでとは違った充実感を感じるはずです。創造力を身に付け、勇気を持って力を発揮してみましょう。
(日経HR 渡辺茂晃)
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日経キャリア教育「キャリエデュ」では、「社会人基礎力診断」を開発・提供しています。「社会人基礎力」とは、以下の3能力と12能力要素からなる、仕事や職場で活躍するうえで必要な力のことです。
<3能力>
前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力
<12能力要素>
主体性、働きかけ力、実行力、課題発見力、計画力、創造力、発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力
就職活動に臨むうえでも、学生たちのこれらの能力は欠かせません。まずは学生たちに足りない力を把握するため、社会人基礎力診断で学生たちの能力測定から始めてみましょう。