傾聴力 相手が話しやすい環境を作ることから始めよう

社会人基礎力道場渡辺茂晃

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人と話をしているとき、相手が聴いているように見えても、本当に聴いているかどうかは外見だけからは分かりません。マンガのように、適当に相づちを打っているとか、上の空で聴いていることだってあります。他人の話を理解することだけでは足りないのが社会人基礎力の傾聴力です。

社会人基礎力では、傾聴力を「相手の意見を丁寧に聴く力」と定義し、行動例には「相手の話しやすい環境をつくり、適切なタイミングで質問するなど相手の意見を引き出す」とあります。つまり、社会人基礎力としては聴いているだけでなく、「質問する」「話しやすい環境をつくる」という聴く以外の行動も含んでいるのです。そして、その質問は単に分からないことを尋ねるだけでなく、相手の言いたいことを引き出すことまで求めています。

社会人基礎力の3能力12能力要素についてはこちら

聞き上手は相づちを使うのが上手な人

傾聴力という言葉は聞いたことがなくても、「聞き上手」という言葉を聞いたことはあるでしょう。単に人の話を聴くのではなく、相手に話をさせるのがうまい人のことを指します。そういう人は、相手の話に相づちを打ったり、質問をしたり、自分の考えを話したりしながら、相手が話しやすい状況を作り出しているのです。じっと耳を澄ますのではなく、相手に対して行動や言葉で話を聴いていることを伝える姿勢が大切といえるでしょう。

注意したいのは、他の人の話を聴いているという姿勢を意識しすぎるあまり、過剰に相づちを打ったり、大きなリアクションをとったりすること。1対1で話している時に大げさな態度をとられると、話している方は「まじめに聞いているの?」と思うことがあります。相づちやリアクションはほどほどにしてください。

また、相づちも「ええ」「へえ」「はい」ばかりでは、話している側は「本当に聴いているの?」「理解しているの?」などと思ってしまいます。できるだけ、自分が感じたことをさまざまな言葉で表すようにしましょう。話を聴いて驚いたときには、「へー、そうなんですか!」「本当ですか!」「知らなかった!」「そんなことがあるんですね!」「なるほど」など。同感だと思えば「私もそう思い(感じ)ます」「そうですよね」「おっしゃるとおり」といった具合です。多彩な相づちの打ち方をマスターするだけで、聞き上手にグンと近づきます。さらに、質問したり、感想や意見を話したりすることができれば、自然と会話が弾むでしょう。ここまでできれば、聞き上手であり、傾聴力があるといえます。

傾聴力を鍛えるには

では、傾聴力を鍛えるにはどうすればいいのでしょうか。参考になるのは、テレビの対談番組やニュース番組でキャスターがゲストにインタビューしている様子です。キャスターとゲスト、あるいは対談者同士が、どのような姿勢で、どんな表情で、どこを見て、どのタイミングでどんな相づちを打っているのかなどを観察してみてください。人の話を聴き、意見を引き出すのが仕事である、プロの技を学び、マネてみることから始めるといいでしょう。あとは、実地訓練あるのみ。できるだけ初対面の人と話すとか、友人同士でも相手が喜んで話せる環境をつくることです。恋人同士でも夫婦でも、相手から「ねえ、聞いているの?」などと言われることのないようにしてくださいね。

次に、効果的な質問をするにはどうすればいいのでしょうか? 自分の意見や感想を伝えるためには日々の情報収集も大事ですが、何に対しても自分なりの意見を持つことです。相手の話を先へと促すには、的確な質問や感想を述べる必要があります。それには、幅広い知識と物事に対する自分の考えを持っていなければなりません。相手の意見と自分の考えの違いや、新しい気づきによって疑問や感想が湧いてきます。つまり、質問するには、日頃から情報を集め、分析し、吸収し、そこから自分の考えをまとめる作業をしておかなければならないのです。他人の話を聴いて新たな情報を吸収し、それを次の誰かとの話に役立てる。こんな循環ができるといいでしょう。

傾聴力の自己点検法

最後に、自分の傾聴力はどの程度あるのかを測る方法を紹介します。私は人前で話をすることがありますが、そんな時に誰を見て話しているか分かりますか? それは、私のほうを見て、ときおりうなずいているような人です。人前で話すときには緊張してしまうので、その緊張をやわらげてくれるような、話しやすい人を見ながら話しています。皆さんもこれまで、講演などを聞いている際にスピーカーと目が合った経験がありませんか? もしあれば、きっと話しやすい表情や姿勢をしているのだと思ってください。そして今後は、講演の最後に質問をしてみてください。話している人はきっと「真剣に話を聞いてくれていたんだ」と思って、喜ぶはずです。

プロフィール

渡辺茂晃 渡辺茂晃(株式会社日経HR) 1991年日経事業出版社入社、高齢者向け雑誌編集を経て、96年日本経済新聞社産業部、98年就職雑誌編集、2001年日経就職ガイド編集長、05年日経就職ナビ編集長、09年大学評価・学位授与機構「大学の「学習成果」を軸とした教育・評価・エビデンスの発信を可能とする体制についての研究」研究員、10年経済産業省「社会人基礎力育成グランプリ」運営、12年10月文部科学省「産業界のニーズに対応した教育改善」事業支援、14年桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科非常勤(~19年4月)、日本経済新聞人材教育事業局「日経カレッジカフェ」副編集長、15年中小企業庁「地域人材コーディネーター養成事業」主任研究員、16年経済産業省「健康経営優良法人認定制度」広報担当、内閣府「女性リーダー育成プログラム」主任研究員、18年4月から現職。著書『実況中継 これまでの面接VSこれからのコンピテンシー面接』『マンガで完全再現! 面接対策』『人気企業内定者に聞いた 面接の質問「でた順」50』など。